2011年9月20日火曜日

Low


The Parts Of The Night That Are Your Undoing

Sep 19, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Will Kreinke
Translated by Teshi





昨晩、ニューヨークを拠点にするサイケデリックメタルバンドLiturgyと僕らが時々録音に使う古い校舎でセッションをレコーディングしていた時、スタジオの扉の下から虫が入ってきた。まるでガタガタ壁を震わせながらそこへ逃げてきたみたいだった。その時、蝶番とドアノブ、天井のタイルと床板がチリンチリンと聞いたこともない音を立てていた。なんとなく、出産時に女性が出すような新しい音だった。この異常状態は築120年の校舎も今まで経験した事がない音によって引き起こされたものだ。そして虫たちを――いつもは床の下で暗闇と静寂に包まれ安全な――今隠れている場所は危険なんじゃないかと、考え直させたのだ。

まず驚く事に、コモリグモが――豚のように巨大な虫がドアの下から滑りこんできた。多分摩擦で黒い毛が少し禿げてしまっている。混乱状態で壁際をふらふらと這いながら、違うドアから廊下へ逃げていった。次にチャバネゴキブリが、太ったコオロギに続いて現れ、慎重にコソコソ歩いていた。まるでちょうどプールから出た所で、外の気温が思っていたより寒かった時のようだった。あのコオロギがどこへ行ったか詳しくは知らないが、スタジオに帰ってこなかったのは確かだ。


この小さい虫たちの大量のエキソダス(集団脱出)は今僕が聞いているLowのセッションを思い出させた。多分この日彼らがここで演奏していたら全く反対の事が起こっていただろうな。古い木材とくたびれた壁はその愛らしさに赤面して燃え始めただろう。まるで全身マッサージを受けている時のように、満足げな溜息を漏らしていたことだろう。コモリグモもチャバネゴキブリもコオロギも逃げずに、可愛らしい音を遮る障害物から離れて、その景色を一目見ようと首を伸ばしていた事だろう。

このように、Alan Sparhawkとその妻Mimi Parker、ベーシストのSteve Garringtonは極小のムーブメントを歓迎する。とても小さくてシャイな人たちを歓迎するのは、彼らが心臓がドキドキして臆病な心について歌っているからだ。彼らはコソコソと夜の間にガヤガヤと音を立て僕らを目覚めさせる。まるで家屋が話しているように。まるでネズミたちの脚が音にあわせて頭上の屋根裏部屋で足をパタパタさせているように。まるで、君がいま住んでいる家に以前住んでいた住人たちを代表して古い幽霊達が出てくるように。彼らは音楽を盗み聞きするために戻ってきたのだ。そこ以外に行く場所もないし。

SparhawkとParkerは並外れて素晴らしいろうそくの灯りのようなハーモニーで、彼らが歌う「困惑の気持ち」や「奇妙なアンバランス」にあらゆるムードを与える。それがガタガタした床と狡猾な瞳に変わる。魔女が現れてSparhawkがルイビル・スラッガー製※の野球バットで彼女たちを追い払う。コウモリが軒の中を飛び回り、月の灯りに照らされた夜の中を横切っていく。この夜のひと時、一日の一部分、君は何時間も起きていられる。そしてこっそり彼らの音楽に耳をすませるのだ。この鋭い敏捷性を経て、君は自分が回復している事に気づく。
Low Official Site
Low First Daytrotter Session
Sub Pop

試聴・ダウンロード

※ルイビル・スラッガー(Louisville Slugger)はアメリカにある野球のバットの生産会社です。


セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Witches(C'mon収録)
  3. Nightingale(C'mon収録)
  4. Try To Sleep(C'mon収録)
  5. You See Everything(C'mon収録)




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