2011年9月29日木曜日

The Sea and Cake


The Real Glimmers Of Autumns

Sep 28, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Patrick Stolley
Translated by Teshi




週末の過ごし方も以前とはかなり変わってしまった。いや、今も同じ人たちとつるんでるんだけどね。時々何が起こって週末はどこに行ってしまったかわからなくなることがある。僕達は過ぎた時代の事を話題にしたり、若かった頃の事を話したりする。他にも、昔は顔が良かったなあとか、妻や彼女の事、自信、勇気、お金、正気とか、もう色々!年をとると何でも延々と話したくなるんだ。瞑想的な憂鬱が「過去は良かったなあ」と思う瞬間に僕らをワープさせる。実際に昔の時代がベターとは限らなくても。


だからといって僕らは絶対に説得されないけど。物事は大抵前の方がベターだったと自分達の中々信頼できる「曖昧さ」で思い出せるからさ。僕らはあの時はもっとましな人間だったし、もっと一緒にいて楽しい存在だった。今より怒りっぽくなかったしね。もっと魅力的で、溢れるエナジーに比べたら心配事も殆ど無かったよ。僕らを憂鬱にさせる事も少なかった。


The Sea and Cakeの作品を聴いていて素晴らしいのはこういう回想を通して現れる多くの難しい局面を乗り越えさせてくれることだ。男らしさや肉体の力強さの衰弱に対しての感情を認識する道を貸し切って乗り越えさせてくれる。それが全てどこから来るのかよくわからないし、それが実際に僕らが耳にしているものなのかも確かじゃない。だけど、きっとそうなんだという「勘」が働いている。僕らは目の前にある水の中を突き進んで、反射した自分たちの姿を長い間見つめるチャンスを与えられた。穴が開くまで、より長く見つめて....自分の姿が認識できない形になりただのどっかの男の姿になるまでじーっと見つめる。この男は僕らが恐れない様なヒトの姿をしている。この男は(あるいは殻、多少は腹にもなんか詰まってるかも)僕らがいずれ成り果てる姿と期待している形なのだ。でもかなり多くの場合、僕らはこいつが意外と早くやってきて驚く事になる。一緒にいても別に気にならないけどね。

Sea and CakeのレコードでSam Prekop, Archer Prewitt, John McEntireとEric Claridgeが奏でる楽曲は新しい人生のピースを繋いで身近で見せてくる。ピースはまじまじと鋭い目でさらに中身を深く知るために凝視される。「どこから来たのか。意図は何なのか。」と。楽しい時代の秋※を感じさせ、時々地に足が着いたような新しい人生の賃貸を感じさせる。擦り切れた手を幾度となく受け与えられた時に時折払わなくならなくてはならないものだ。空は時々晴れ、雨もやって来る。若者は、子供は何が問題なんだ?と僕らは考え、(自分たちを含め)年寄りは何が問題なんだ?と考える。

その時薄い光が差し込み本物の秋が帰ってくる※。好感の眼差しで僕らはそれを見つめ(懐疑的にも)、この呪文がいつ解けるのか知る事になる。

The Sea and Cake Official Site
Thrill Jockey Records

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※Automn(秋)には後半という意味もあり、「人生の後半(the autumn of life)」と言う風にも使われます。


セットリスト

  1. Welcome to Daytrotter
  2. Up On The North Shore(The Midnight Butterfly収録)
  3. LyricThe Midnight Butterfly収録)
  4. Weekend(Car Alarm収録)
  5. Middlenight(Everybody収録)
  6. The Argument(The Fawn収録)




2011年9月28日水曜日

Asobi Seksu


Heist Of Light And Darkness

Sep 27, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered and mastered by Matt Oliver
Translated by Kentarow








Asobi Seksuの楽曲"Trails"にはまるで「ミッション」という言葉が漂っているというか、自ずからその言葉が歌の意味に含まれている気がする。バンドの新"Fluorescence(螢光)"に収録されたこの曲は音による強大な満ち潮の波で、まるで人目につかない沿岸に打っては散っていくようだ。かつ過ぎ去る前の嵐の様であり、もしここまでの突沸的で喜ばしい音でなければ、ただただ不快な(音の)表情だけが浮かんでくるか、神経に障るだけな楽曲であるだろう。

それは足元から離れたりはしない。足と地面とを這う炎のようである。もしくはガソリンが滴っていく軌道がどんな場所をも超えて遠くへと、この楽曲自身が僕らを連れて行きたがっているようである。そしてまるで楽曲自身が僕らに何かを見せたがっていて、その時にその場所でこの時間が正しかったと感じるのは、火の点いたマッチを落としてしまってその瞬間に炎が燃え渡る様のようでもある。そしてそのガソリンや炎が燃え滾っているところから目を閉ざしたり耳を塞ごうとはしないのは、そこから覆い隠れ、安全な場所へと逃げようとせず立ち止まっているが故の熱さも、その感覚には含まれているわけである。何故逃げないのか、それは僕らが単純に次に何が起こるかみたくて、僕らがいよいよそこから逃げなければならなくなる瞬間まで炎がどれほど燃えたぎるか見たくなってしまうからである。その炎自身にはどうその楽曲を燃やそうかなんて意図は見え隠れしていたりはしない。


我々はシンガー/キーボディストのYuki Chikudate (ユキ・チクダテ)とギタリスト/シンガーのJames Hanna(ジェームス・ハンナ)はより壮大なアイディアを持ち合わせているのではないかと睨んでいる。それはひとつの楽曲にまるでアイディアが全ての光やその光で生み出され演奏されるその全てをコントロールしている様であるからだ。そこには急速性があり、太陽や月、全てのシャンデリア、全てのディスコボールやミラー、それに全てのフラッシュライトや海の表面の輝きであったり、全てのキャンプファイアやキャンドルといったあらゆる光の返還していくほどのスピードである。そして全てをつかんでは底知れない袋に詰め込んでいっている。その光をどこで放とうかなんて意図はまるでなく、ただ放たれているわけである。しかしそれは、誰もが気付いてその知恵を付けてしまわれないように、その光の全てをコントロールしてやりたいといった欲望だけである。チクダテとハンナは光の上手な追求者であり使い手である、それ故に二人はそこまで光を欲しがるのであると僕らは更に睨んでいる。二人はむしろ光の中に闇を生み出す事さえ会得し、チクダテのさえずる様なヴォーカルで、膨らんでいくその音の中にその闇はくるまっていくようであり、それはまるで素敵な宝物のようでもある。あなたはすぐさまに、彼女が暗い深海からふつふつとわく物語の中の月の光や太陽光の結び目や割れたガラスの破片に反射する光の種類がいかなるものか理解出来る事だろう。
Asobi Seksu Debut Daytrotter Session
Asobi Seksu Official Site

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Trails(Florescence収録)
  3. Perfectly Crystal(Florescence収録)
  4. Leave the Drummer Out There(Florescence収録)





今回の訳は@Kennyy_Meltrickさんの【MELTRICK】に掲載されているDaytrotterの翻訳をインポートさせていただきました。→http://meltrick-newsworks.blogspot.com/2011/09/untranslationasobisekusu-daytrotter.html

thanks!

2011年9月27日火曜日

Typhoon


Peddlers Of Senseless Faith

Sep 26, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi








僕らは、TyphoonのリードシンガーKyle Mortonが感覚が無い状態の事を歌う"CPR/Claws Pt.2"の曲の半分はCPRに入ってると考えてる。 まるで「感覚の無さ」が監視されているみたいだ。彼が親しくしている人にこれが起こっていて、気がつくとこの人はもういらなくなった所有物を全て売り払っている。理由は何であれ昔重要だったけれど、今必要でなくなったものを荷物から投げ捨てている。もういらない。どこか人生から外れて、あるいは何かこの人物に起こった事が彼の物の価値を永遠に変えてしまった。彼は全く新しい人物に生まれ変わり、それは少し不自由に聞こえるし、進んでいく道は小さくて測られたものの様だ。まるで構造上音がしない床を歩いて横切るみたい。いつ底が抜けて下に落ちてもいいように慎重に歩く。


オレゴン州のセイレムから来たこのバンドはこのようなセンスレス(感覚の無い)の瞬間を築きあげる。ただ、「センスレス」っていうのは語弊があるな。理論とは全くかけ離れたものだから。それよりも、時が僕らを狂わせたり、特に何の予感もなしに大事件が僕らの身に降りかかったりする事に対する不思議な怒りが関わっている。事件は勝手に起こり、僕達はそれを見つめて、それがどんな跡を残したか確認する。ぐるぐると考えが頭の中のほこりを蹴立てている。



次に何をすればいいか全くわからない。計画を邪魔するために次に何が起こるのかもわからない。でも絶対に何かが起こって、熱い湯をかき混ぜて、ポットを倒しに来るはずだ。何度も何度も...そして(それに対して)僕らは絶対謝られたりしない。反対に僕らは洗濯機を回して、壁についた汚れをきれいにしなければならない。手やひざをついて全部洗う破目になるのだ。何か進歩が起こったかと思うと、こういう落とし穴はいつも僕らに降りかかってくる気がする。突然タイヤが禿げて、気がつけば路上にはびっしりと氷が張っている。道路脇に沿って植えられた松の木にビリヤードのようにぶつかり、跳ね返っている。



MortonやTyphoonはきっとこういう不確かな必然性への備えをすることに興味を示してくれるだろう。
絶対に、確実に起こる事。けど不確かなのはどんな形で現れるかだ。それは正体を現す寸前まで不明な存在のまま。時には用事が済んで僕らから去っていくまで正体が分からない事もある。Mortonはこういう不思議な「不確かさ」に触れるようにこう歌う。


「自分の手で何もする事がなかったら、祈った方がいいよ/僕は神を恐れるような輩じゃないけど、怖いんだ/全然うまく説明できることじゃないんだけど」


彼は子供の頃どれだけスーパーヒーローに憧れたか歌う。けれど、きっとそれはその業種を大変と思わせる、誰もが知る必要があった現実だったのかもしれない。あるいは、彼がコミックで読むスーパーヒーローの殆どは普通の人間で、よく自分の存在意義に悩み「良き闘い」しか挑まないって事に気づかされたのかもしれない。--意志とパワーを絞り上げて、悪党を蹴散らす期間は少しの間しか休憩できないし。そこには全ての意図と目的を挙げても、「勝利」という文字なんてない。仲間達は厄介ごとに数え切れないくらい巻き込まれて、心は弱弱しくなっている。何回も優しい手に世話され、同じくらい元のポジションに戻された。次はもうちょっと気をつけてね、ってか。


彼らは次は違う結果になると信じている。一人では死なない事を願っているけど、どうせそうなることも知っている。彼らは明日はきっともっといい日になると信じている。神の愛によって全て乗り越える事ができると願っている。きっとそうなるだろう。でも、非常に苦労するだろうし、センスレスな信仰を抱いていなければいけない。でもTyphoonのメンバー達はセンスレスな信仰の巡礼者だ。ありがたいことに。
Typhoon Official Site


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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Common Sentiment(未発表)
  3. CPR/Claws Pt.2(Hunger and Thirst収録)
  4. Kitchen Tiles(未発表)
  5. Green(未発表)



2011年9月26日月曜日

Scattered Treees


Everyone Seems To Be Falling Apart

Sep 23, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi








僕らの何人かは置いてかれた。それが真実だ。時は選べないけれどカーテンの裏にいる魔法使いによって選定される。カーテンを覗く事は出来ないし、次に誰が選ばれるかは分からない。誰が思っていたよりも長く残るかも不明だ。高齢の人の皺の中に真実を垣間みる事が出来るし、彼らがどちらに寄っているか君は不思議に思う。彼らの無意識に見せる表情が空っぽで少し困惑して、少し目を細めて青白いこの瞬間、彼らは何を考えているんだろう?


Vanity Fairの新しい号にJoan Didionの写真が載っていて、彼女の娘の早すぎる死について書いた次回の本についてプレビューをしていた。以前彼女は旦那の早すぎる死についての素晴らしい本を書いている。彼女の表情は全く短い間に二つの時ならぬ死を経験した人が見せるだろう表情をしていた。まるで彼女の頬に走る縦の皺が更に深く畳み込まれる様で、年老いた目の中に潜む悲しさは明白だった。心が壊れてしまった人が見せる表情そのものだった。
シカゴのバンドScattered Treesの事を考える時、彼女が新しい作品の中で言っていた事をこのエッセイで言い換えても良い様な気がする。彼女の旦那が死んだ時、娘は−−父親の死に対し、悲しみに打ちひしがれている時母親に「悲しみを乗り越えるの。そうするしかないのよ」と言った。死を乗り越えて、まだ終わっていない自分の人生と一体にならなければいけないと。そして娘が死んだ時、Didionは娘の考え方に間違いがあった事に気づく。残された人々にとって、さらなる悲しみを乗り越えなければならない人々にとって、時間は何も物事を安らかにしてくれない。年寄りが彼らの友達が天国に行く所をみてどんどん老衰して死んで行く所を嫌でも想像してしまう。生き続けても、避けられぬ痛みはそこに留まり続け、心の中を蝕む。

Scattered TreesのリードシンガーNate Eieslandにとって、彼の父親の死が彼に作曲を続けさせ、バンドのアルバム"Sympathy"の制作に繋がった。この作品は彼の大変な悲しみの中から生まれたものだ。彼の愛する父親への美しいレクイエムとなっている。このアルバムは喪失と、死人に対する間違った考えと死を目前に迎える現実の深みを掘り下げている。まだ死を認める訳にはいかないけれど、それを乗り越えなさいと言われる。痛みは去って行くから、と。でもいつでも大抵の人々はその膨大さを無視する。

時に死は夢として、何か目覚めるもの、何か横たわっている時に目撃するものとして描かれる。Eieslandはみんなが壊れて行く様に見える事について歌い、それは二つ捉える事が出来る。1)会葬者の団体を観察する 2)みんないつか体がギブアップをし別れを告げる日に近づくという考え。 "Sympathy"に収録された楽曲には教会のベルがシンボルとして描かれ、痛んだ心がゆらめていている。それにも関わらず、繊細さと落ち着いた振る舞いがあり、何もこの痛みを消し去る事は出来ないと言う印象を得る。何も今の気分を晴らす事は出来ない。

色んな嘘が語られてきた。みんな「空虚と化した感情は乗り越える事は出来る」と嘘をつかれていたのだ。それは間違っている。飾り立てる事ができるだけだ。
Scattered Trees Official Site

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セットリスト

  1. Welcome to Daytrotter
  2. A Conversation (About Death on New Year's Eve) (Sympathy収録)
  3. Love And Leave(Sympathy収録)
  4. Four Days Straight(Sympathy収録)
  5. Where You Came From(Sympathy収録)

Scattered Trees / Sympathy from Scattered Trees on Vimeo.

Ume


A Whispery Way With The Commonly Found Dark Sparkles

Sep 24, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Matt Oliver
Mastered by Sam Patlove
Translated by Teshi



オースティンのバンドUmeのフロントウーマンLauren Larsonは僕らの魂や僕らが疑いの目で深く関わらないように注意している別の魂の漆黒の部分も光り輝くモノになれると信じさせる。その部分も素晴らしい装飾品として見る事が出来るし、隠しておく必要は無い。でもギラギラ照りつける太陽の下で、あるいは夜色のキャッパーの中でしっかりと立てかけられ、鑑賞される。

ギターのムーディーな背景とエモーショナルなバッグの裏から、恋愛関係で皆が経験するような災難−−二人の円満な関係を当初は願っていた人たちに台無しにされる事−−の一部始終、あるいは一部が現れる。こういう時に理由を並べても切りが無いし、どんな原因であろうと−−例え似たようなシチュエーションがあっても、毎回違う展開が生まれる。しかしUmeは原因をこそこそと自ら打ち明けるモノと、僕たちが「あいつら(原因)が俺たちにこっそり近づいてきた。そんな事バラすなんてアホみたいって分かってるのに」と断言するモノにあえて近づき個人的な関係を持とうとする。

バンドの最新作"Phantoms"に収録される多くの楽曲には第六感が目覚ましく働いている。曲の冒頭から僕らは「今から何かトラブルが起こって、物事は一度引き金を引いたらすぐに消滅する」というアイディアが与えられる。Larsonは

「この抱擁はまるでクイックサンド(流砂)ね」

と歌い、まるで呪いの手が抱擁者の肩に置かれたようだ。僕らは「ハッピーエンド」のチャンスはめっきり無いと警告され、流砂の様なハグしかない恋愛関係だと分かっていたらどんな種類のハッピーエンドでもそれを望む人はほとんどいない。

 Larsonは優しく囁く様な声で、Umeの楽曲をまるでプライベートで共有される様な、誰も周りにいない状態で聴いている様な、そして他の人に教えてはいけない様な気分にさせる。 耳に聞こえる物語は警戒的なストーリーを語っている。君が(上記と)似た様な抱擁を与える似た様な人と関係を持ってしまった時に、何を気をつけるべきか教えてくれる。この二つの要素がくっついて、人生に沿うモノとして見た時、マイナーでちっぽけなステップだけれどこれは人を説得させる力を持っている。そして僕らはなんでこれが僕らここに導いたのか知る事が出来るのだ。

Larsonはこういう人たちにほとんど不幸せな苦境や結末を与え、誰でもこの状況に立たされる可能性があると思わせる。まるで溺れたように感じ、まるで内蔵がひっくり返ったように苦しんで、全てからすぐに逃れるべきだと感じる。この共通の感覚が僕らを一つに結束させ、僕らがみんな感じる様な暗いしゃっくりも明るい所で共有されればちっぽけな閃光を放つのだ。
Ume Myspace Page

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セットリスト

  1. Welcome to Daytrotter
  2. Burst(Phantoms収録)
  3. Run Wild
  4. The Task(Phantoms収録)
  5. The Push



2011年9月24日土曜日

Diamond Doves


The Perfect Words Of Harmonious Bliss

Sep 22, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi









普段それは疑うことが出来ないものだ。普段、僕ら自身や彼らのことを疑うこともしない。時々、僕らは頑張り過ぎて自分たちを疲労させる。正確な言葉を紡ぎ出そうと、気持ちを正確に直そうとあがいている。魂を探すためのアートを作り上げるために、一緒に過ごしたいと思う人に捧げるために。それは大変な作業だ。本当に嫌になる。口をもごもご、走り書き。消しゴムで消して、ボールに丸めてノートの1ページをゴミ箱に放り投げる。ゴミ箱は壁と机の端の十字部分に置かれていて、僕はそこにずっとずっと座り続けている。「なんでうまい言葉が出てこないんだ!」とどんどんイライラは増して行く。

あぁクソ!なんでうまいこといかないんだよ!実際口にした時に、胸や血管の中から出た言葉がなんでクールに聞こえないんだ!?何が問題なんだよ?

最高の言葉が思い浮かぶのは大体シャワーの中や、頭がそれでいっぱいになっていない時、リラックスして即興で考えられる時だ。声がタイルに反射して聞こえる歌詞は良い感じだけれど、それを書き留めて置く意思は無い。シートで真空に貼られた木張りの道が通る州の公園を沿って走っている時にラインが思いつく。木のくずや怯えたガータースネイクとウッドチャックを通り過ぎながら。こういう瞬間に思いつくラインは大体すぐに頭の中から消えてしまって、紙に書いてジャーに保存する暇など無い。この言葉達はむき出し過ぎて、しっかり扱おうと思わないのだ。むき出しで露わで、僕らのことを語りすぎている。だから今まで以上に弱々しくなってしまうのだ。

以前はElvis Perkin In Dearlandでもよく知られていたブルックリンのバンド、Diamond Dovesは普段の状態のときに、上のような瞬間に出会った。彼らの未発表の音源の上にはでたらめなサインはどこにもちらついていない。つまり僕らは純粋な茎を手に入れたという事だ。そこには彼らのありのままの正直な思想と感情があり、「バンドとして曲を書き、自分たちと美しいマルチパートのハーモニーで歌い上げる彼らの愛する人達を満足させる」ための曲がある。ほかの誰のためでもないんだろう、本当に。

よくバンドが「自分たちに正直でいたいし、例えみんなが期待してないジャンルであっても、僕らがその曲を書きたかったらそうするだけさ。」という発言を引用される所を目にする。 でも実際の所あまり実現しないよね。まるでDiamond Dovesが、ほとんど正確に−−でも引き出しがすごく広く、ビートルズのようなストロークで誰もが共感出来るような何か(でもリバプールの四人組が考えるにはマイナーすぎる事)−−曲を書きながら類いを見ない黄金のようなものに夢中になってしまったようだ。

彼らの曲の大半は人生で現れた素敵な女性のことを歌っている。最高の言葉で執筆された誠実な歌詞と視点で描かれたハニー、シュガー、ベイビー、ダーリンと呼ばれる物達だ。あらゆるきらびやかな方法で壊れた心や一生一緒にいる事とか、他の誰とも死を共にしないとか、裏切らないとかを表現する。こうやって彼らが完全なフォームと輝かしい姿で現れるとき、彼らは特別な存在に思えてくる。間違ったことは何も言わないし、楽曲は広い心で情熱的なキスを与える。彼らが言っていることははっきりと意味が分かるし、お互いに続いて行く限り、一生を共にし、愛し続けるって分かっている。


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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Back in The Dance Hall(未発表)
  3. Hey Lady(未発表)
  4. Endlessly (未発表)
  5. Club Night(未発表)

2011年9月23日金曜日

Cerebral Ballzy


Tires Get Slashed, Piss Flies And Girls Are Bedded

Sep 21, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Matt Oliver
Translated by Teshi







The Cerebral Ballzyは火を起こすようなバンドだ。ガソリンを火の中に放り込んで猛烈な勢いで燃え上がった炎が、ピストンのように上下し、二重螺旋になって夜を正午のように明るく照らし出す所を見つめている。ニューヨークのブルックリンに活動の拠点を置くこのパンクバンドのメンバーはなるべく近くに近づいて(炎の中ではなかったら)、自分の顔や髪の毛を自由に燃やさせる。周りの人が「それは間違ってるし、なんて浅はかな行動だ」と言ってくるのが聞こえたら成功だ。

バンドのデビューフルアルバムに収録されたやんちゃで短い楽曲は顎にパンチされるのと同じだ。そこにはけんか腰で、ハイになった若い男たちの言葉が詰め込まれていて、彼らは自らの意識下の本能のせいで理性を失っている。これを実行することで、僕らは「ナンパ」と「気絶」のコントロールを失ったオード(讃歌)の、速射のように矢継ぎ早に次々と現れるアイディアを味わうことができる。つまり、照明を全てぶち壊して、目の前に現れ邪魔をする壁とふざけた野郎をノックダウンするって事だ。リードシンガーのHonor Titusは唾と小便をそこら中に飛ばす。Cerabral Ballzyのライブパフォーマンスでケツやチ◯コが飛び出すかもしれないと君は思う。きっと生きては帰られないだろう。いや、もし帰ってこられても、体は痣だらけ。縫わなきゃならない傷が出来るかも。多分アドレナリンのせいで自分が血だらけになってることも気づかないかも。でもそれってさ、最高の現実逃避の形じゃない?

まるでボクサーや武闘家が始めるけんかのようだ。ベルがついに鳴って口の中に血の味を感じるまでは、全ては安静で平凡な状態だ。ベルの合図で頭の中のもやもやが消え去り、突然体は警戒モードになり喧嘩の準備が整う。TitusとCerebral Ballzyは僕らの心の中のベルを鳴らし、塩の匂いを吹かして僕らの喧嘩と重い足取りの理由を増幅させる。彼らは後ろでかがみ込み、誰か違う人が前から僕らを押して、僕らは転けて強く地面を打つ。「起きろ」というアラームなのだ。この、乱暴で災難に影響された音楽は君に黒あざをもたらし、自分の彼女は連れて行かれるだろう。コンビニ強盗に入り、君の車の内部と外部をスプレーで落書きするだろう。そして座席とタイヤを引裂く。それでも君は「自業自得なんだろうな」と感じてしまう。君はただの「やなやつ」であいつらは「超やなやつ」ってことだ※。

Cerebral Ballzy Official Website

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※原文はYou're an ass and they're just badasses. "Badass"にはイカすという意味も含まれます。

セットリスト

  1. Welcome to Daytrotter
  2. Junky For Her(Cerebral Ballzy収録)
  3. Drug Myself Dumb(Cerebral Ballzy収録)
  4. All I've Ever Wanted(未発表)
  5. Return Of The Slice(未発表)
  6. Don't Look My Way(Cerebral Ballzy収録)







CEREBRAL BALLZY (初回限定盤)

2011年9月21日水曜日

Bon Iver


Broken Man Makes Lovely

Jul 21, 2008

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Sound engineering by Patrick Stolley
Translated by Teshi




枕の冷たい部分に関しては十分に意見が交わされた。だからもうやめてくれないか。つまり使ってない側ってことだろ。それ以上もそれ以下もない。「可能性を秘めた枕」。頭を向ける所に裸で横たわってるだけだろ?ベッドの空っぽの暖かみについても十分言われてきた。ベッドの片側は前までは占領されていたけど、そこにあったものは最近違うベッドに乗り移った。より心地よいベッドに乗り換えた訳じゃないよ。ただ違うやつに行っちゃったんだ。違うシーツ、違う毛布、違う枕を――もう分かってると思うけど――違う人とシェアしてる。僕らが手を滑らせる事ができるあの楕円型の暖かみ、あのスペースについても色んな事が言われてきた。その温かさで火傷するなんて、いやらしくて見てられないよ。それでも見なきゃいけないなんて…。他の何にも変えられない。目覚まし時計に朝起こされて、約束事や仕事に向かうときのベッドに残る暖かさとは違うものだ。永遠に消えてしまった熱。そこにあったのに、蒸気のように消えてしまった。あの肉体の香り、休息する手足と首がいまだに嫌な臭いを放出している。まるで裏切りと愛のように。愛の方が強いか…。いや、裏切りだ。

木に囲まれたウィスコンシンのバンドBon Iverの背後に立つ、かつて傷つけられた男Justin Vernonは現在心に血を流した人々の一番の代表者の一人になって、自分達の心を回復させようと方法を探している。枕の冷たい部分や暖かさ、マットレスの空いた部分についてはたくさん題材があるけれど、絶望の重苦しさと奔放に願い事をする重苦しさ両方をくっつけたものはあまりない。願いって意味では全て同じだけれど、それは時に何か自分を再び満足させるものになりえる。まるで「良くある憂鬱」と「ハッピーな憂鬱」のバリエーション(変動)のようだ。クソ不運な事が起き(最愛の人が去っていく)、それでも時間が経てばそのイメージも頭の中から洗い流されてしまう。もし君が汚くて臭いシャツやパンツをクローゼットに長い間入れておいたら、いずれは臭くなくなるものだ。



Vernonは(ある意味)同じ方法で心の琴線に触れる、胸が裂けるような楽曲を書き”For Emma, Forever Ago”を作り上げ、録音した。このレコードはこの五年間(あるいはそれ以上)で現れたどんなレコードよりも自然な美しさとフォームを備えている。君の息を呑ませ、涙腺を緩ませるような作品だ。僕らは座って傷ついた男について考えていた。完璧にバラバラに壊れてしまった男の事だ。彼には何の慰めも効かないし、ぼろぼろになって破壊の山を築いてしまった。

僕らはとにかく彼にレンズを合わせ続ける。彼を囲む光が低い所で引き下がって、怖がって触れようとしない。肩を叩いて「大丈夫?何か欲しい?何かしてあげられることはある?」と聞けない。彼らは後ろに下がって、彼に心と精神の闇を吹き返させてあげる。時々それもブラックコーヒーと同じくらい、心を落ち着かせるものなのだ。突然何週間か何ヶ月かの沈黙のあと、いきなり動きがみえた。ゆっくりと慎重に…手足を動かし、涙を拭い、誰か自分の壊れる瞬間を見ていないか恥ずかしそうに目を動かしながら。誰か見てた?まあそういう事もあるし。誰も見てなかった?あっそう。

再構築は驚くほどすぐに始まり、この傷ついた男は新たな力を呼び起こした。Vernonはブラウスにからかわれ、以前「ベイビー」と呼んでいた人の瞳や脚を思い出す度に力が失われていくのを感じていた。もう彼のものではない。笑顔を投げかける事も出来ないし、夢中になることもできない。この決断に辿り着くには労力を必要するし、For Emmaはそれを経験した人達の作品の中でもベストの作品だ。

Vernonと彼のライブバンド、Mike NoyceとSean Careyは口を空けて、これを乗り越えるために必要とした冬を吐き出し、Vernonが住んでいたコテージの煙突から出る煙を再現する度に毎回儀式を行う。僕らが普段逃れたくなるような冬を霜立たせて、僕らにそこにいるように命令する。その時は、再び彼と一緒にあの時のように悲しくて愛らしい冬を送る。それが愛らしいものだと僕らも信じるようになる。彼のおかげだ。すごく感謝してる。
Bon Iver Official Website

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Flume(Emma, Forever Ago収録)
  3. Lump Sum(Emma, Forever Ago収録)
  4. Re:Stacks(Emma, Forever Ago収録)
  5. Creature Fear(Emma, Forever Ago収録)




EMA



All Those Shaping Scars

Sep 20, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi






サウス・ダコタは悪の巣窟だ。豊かな「悪」の歴史があり、危険なアウトローや風に吹かれて飛んで行く性格の奴らが町にやってきて、問題を起こしては去って行った。存在を証明するため、面倒事と足跡だけを残して。僕たちはコヨーテの州(サウスダコタのニックネーム)の悪人のリストにErika M. Anderson, あるいはEMAをリストに加えようと思う。彼女の得意技は慎重に取り残された面倒事を回顧していくことだけれどね。疲れ切って衰えている時に心の中の悪魔に魂を征服され、そのまま身体を乗っ取られてしまった人たちの物語を。

どうも彼女のダークで素晴らしい歌詞の大部分は自伝的であるようだ。しかし、高校でのゴスのリストカッターの物語は彼女が一度目にしたものだが、自分自身の経験ではないようだ。まるで彼女がマシュー・ブレイディ(フォトジャーナリズムの生みの親)の役目を果たし、シンプルで永続的なメソッドを使って「失われた人々」の痛々しい物語を記録しているようだ。彼女はそういう人々の「痛みの色」を映し出すが、その痛みを決して改ざんしたりしない。痛みはそこに留まり続ける。たとえ何か改善や変更の余地があったとしても、「肉体的や精神的な痛み自身が認められたり、存在し続けたりする必要は無い」などと提案する事なんてないのだ。

彼女の物語は人を萎縮させる出来事を生み出す人生や(もしそれを乗り越えられればだけど)、「終わりの始まり」だと指摘された人生、あるいは問題が連鎖しタフになった時の人生の一ページを描いている。それぞれの瞬間が人生の方向を変更し、その人の人格を形作る事になる。決して去ることの無い不安感、そしてそれぞれの問題が心にささくれを作り、決して自分で治すことはできない。





EMAのデビューアルバムは「私達みんなある程度傷つきながら生きて、人生の内何度か、あるいは何年かはあれこれの出来事に堕落させられるんだ」という考えを甘受している。どうする事も出来ないし、時には僕らに救いさえ与えてくれない。彼女はある所で

「神様だけが間違いを正す事ができる」

と言うが、これは宗教的なラインではない。どちらかと言うと、「そのうち慣れる。ここで我慢して、物事の自然な流れを遮ろうと考えてもほとんどどうする事も出来ない」という意味だ。大抵の場合、何しても違いなんて見られないけど。世界には様々な灰色の陰があるし、直さなければいけない机の傷も色々ある。それぞれ全てが遠まわしに同じ事を言っているのだ。これは君が指で触れて元の痛みを感じようとする「傷跡」だ。Andersonは元の傷に対しはっきりとした記憶を持っているようで、すでに次に受ける傷を予期している。彼女は歌う。

「失敗はどんな味?/私には汚れの味がするわ/どうかお願いだからあっちを向いてくれる?」

君は絶対に目を背けたり、嘆きや叫びを無視したりしない。君は彼女の音楽に耳を向ける。多分それが助けになるから。それか、ただ聞いていたいだけなのかもしれない。
EMA Official Site

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Marked(Past Life Martyred Saints収録)
  3. Butterfly Knife(Past Life Martyred Saints収録)
  4. California(Past Life Martyred Saints収録)
  5. Fuckin Around (Past Life Martyred Saints収録)


EMA - California (Official Video) from Souterrain Transmissions on Vimeo.

2011年9月20日火曜日

Beach House


Swinging Through The Foggy Ghost Matter

Feb 1, 2010

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Sound engineering by Mike Gentry
Translated by Teshi







Beach Houseは自己紹介の時からかなり多く負担しているんじゃないかって思っている。最初にVictoria Legrandが「魔法のようなDaytrotter」で全てを自由にして良いと提案していたからだ。それで僕らはアイデアを得た。彼女の「魔法」というコンセプトを取り入れるのに今以上に完璧なタイミングは無いような気がしたのだ。そのアイデアをそのまま、LegrandとAlex Scallyが率いるボルティモアのマジカルなグループに突き返そう。

この、世界を飛び回る二人のミュージシャンはすぐに並外れたアクトと肩を並べる存在になり、うまく説明出来ないけど、聖人のような何か神聖な音を鳴らしている。何かトリックがあるに違いない。こんなプレシャスで大事な音を作り上げるには、長く記憶に留まる音楽を実際に作り上げるには、煙と鏡が何かしら使われているはずだ。魔法を起こすにはそれが必要なのだ。簡単な事じゃない。彼らの楽曲はパリッとしたスーツや代々受け継がれる美しいウェディングドレスのように広げられ、完璧に整えられたベッドの端に準備される。部屋の中にはとびきり温かくて、目を眩ませるような太陽の光で部屋中が溢れかえっているようだ。


彼らの楽曲はこういう完璧な服飾のアイテムのように、触る事も近寄る事も恐れ多い。皺一つ無く静かでおっとりしていて、君に完璧さを求めない。僕らはそれが美しすぎて萎縮してしまっている。LegrandとScallyが作る音楽はまるで人間が殆ど手にかけたことが無いようなものだ  (だからあり得ないくらい魅力的で、そのせいでちょっと気味が悪いサウンドなのかもしれない)。まるで魂の叫びと好奇心が、物事がクリアな「無限」の中から直接生まれているようだ。この無限の中、君は魔法の中に横たわる孤独な心を感じるはずだ。この魔法は特別な雪がだったり、最愛の人からのキスじゃないと解けない。



Legrandがあいまいな記憶と頭がクラクラするような、へまや失敗を決して直そうとしなかったと言う恐れを吐き出し、僕らは彼女と一緒に延々と(無限の中に)流されているようだ。この恐れもどんどん年を取り、愛する人たちから離れていってしまった。まるでかけがえの無い抱擁――彼女の物語に現れる登場人物を支える抱擁――は常に待機房の中に拘留されていたり、透明な蜃気楼の中だけで存在しているみたいだ。幽霊の物質の霧のような集まりが、愛を求めた手によって振り回されている。

”Take Care”でLegrandは二人のスイマーと同じ湖に蛇がいるイメージを描き出す。リアルなイメージだが、次第に偽り(あるいは死)が現れて、生命力が診断される。彼女は歌う。

「あなたの面倒をみてあげる/もしあなたがそれを望むなら、一年か二年で/湖で泳いで/蛇に出くわすって?/最初はリアルだったのに、フェイクになったわ/心臓の鼓動を感じて/熱を感じるの/鼓動が速いわ、手遅れかも/でも面倒見てあげるわ/あなたがそれを望むなら」

彼女はこういうごまかしを良く使う。見掛け倒しの抱擁があり、愛は消えていき、目がかすむような眠気を誘いだす。これを乗り越えるのは大変だし、力で降伏させるのも難しい。彼女が悲しみにくれた哀歌の中に差し出す数々の揺らめくイメージが、「ごまかし」と生ぬるい影の正体。彼女をまだ傷つけている。孤独な記憶の中に沈み込んでいる反抗的な子供と、過激な熱が良く口にされる。この反抗的な態度は時間が経つにしたがってゆっくりと静まっていく。まるで魂の一部がゆっくり焼け死ぬ中で、消え去っていくようだ。Beach Houseはこの死について知りすぎている。
Beach House Official Site
Sub Pop Records

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Walk In The Park(Teen Dream収録)
  3. Zebra(Teen Dream収録)
  4. Take Care Of You (Teen Dream収録)
  5. Used To Be(Teen Dream収録)



Low


The Parts Of The Night That Are Your Undoing

Sep 19, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Will Kreinke
Translated by Teshi





昨晩、ニューヨークを拠点にするサイケデリックメタルバンドLiturgyと僕らが時々録音に使う古い校舎でセッションをレコーディングしていた時、スタジオの扉の下から虫が入ってきた。まるでガタガタ壁を震わせながらそこへ逃げてきたみたいだった。その時、蝶番とドアノブ、天井のタイルと床板がチリンチリンと聞いたこともない音を立てていた。なんとなく、出産時に女性が出すような新しい音だった。この異常状態は築120年の校舎も今まで経験した事がない音によって引き起こされたものだ。そして虫たちを――いつもは床の下で暗闇と静寂に包まれ安全な――今隠れている場所は危険なんじゃないかと、考え直させたのだ。

まず驚く事に、コモリグモが――豚のように巨大な虫がドアの下から滑りこんできた。多分摩擦で黒い毛が少し禿げてしまっている。混乱状態で壁際をふらふらと這いながら、違うドアから廊下へ逃げていった。次にチャバネゴキブリが、太ったコオロギに続いて現れ、慎重にコソコソ歩いていた。まるでちょうどプールから出た所で、外の気温が思っていたより寒かった時のようだった。あのコオロギがどこへ行ったか詳しくは知らないが、スタジオに帰ってこなかったのは確かだ。


この小さい虫たちの大量のエキソダス(集団脱出)は今僕が聞いているLowのセッションを思い出させた。多分この日彼らがここで演奏していたら全く反対の事が起こっていただろうな。古い木材とくたびれた壁はその愛らしさに赤面して燃え始めただろう。まるで全身マッサージを受けている時のように、満足げな溜息を漏らしていたことだろう。コモリグモもチャバネゴキブリもコオロギも逃げずに、可愛らしい音を遮る障害物から離れて、その景色を一目見ようと首を伸ばしていた事だろう。

このように、Alan Sparhawkとその妻Mimi Parker、ベーシストのSteve Garringtonは極小のムーブメントを歓迎する。とても小さくてシャイな人たちを歓迎するのは、彼らが心臓がドキドキして臆病な心について歌っているからだ。彼らはコソコソと夜の間にガヤガヤと音を立て僕らを目覚めさせる。まるで家屋が話しているように。まるでネズミたちの脚が音にあわせて頭上の屋根裏部屋で足をパタパタさせているように。まるで、君がいま住んでいる家に以前住んでいた住人たちを代表して古い幽霊達が出てくるように。彼らは音楽を盗み聞きするために戻ってきたのだ。そこ以外に行く場所もないし。

SparhawkとParkerは並外れて素晴らしいろうそくの灯りのようなハーモニーで、彼らが歌う「困惑の気持ち」や「奇妙なアンバランス」にあらゆるムードを与える。それがガタガタした床と狡猾な瞳に変わる。魔女が現れてSparhawkがルイビル・スラッガー製※の野球バットで彼女たちを追い払う。コウモリが軒の中を飛び回り、月の灯りに照らされた夜の中を横切っていく。この夜のひと時、一日の一部分、君は何時間も起きていられる。そしてこっそり彼らの音楽に耳をすませるのだ。この鋭い敏捷性を経て、君は自分が回復している事に気づく。
Low Official Site
Low First Daytrotter Session
Sub Pop

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※ルイビル・スラッガー(Louisville Slugger)はアメリカにある野球のバットの生産会社です。


セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Witches(C'mon収録)
  3. Nightingale(C'mon収録)
  4. Try To Sleep(C'mon収録)
  5. You See Everything(C'mon収録)




2011年9月19日月曜日

Desolation Wilderness


Take In The Twilight Beauties And The Sunday Drives

Sep 18, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi









もうこれ以上は出来そうにない。日曜のドライブなんかもう正当化できないよ。天気が良い日に車に乗って、窓を全部全開にして、ゆっくりとドライブするなんて。年寄りの言う事に聞こえるかもしれないけど、時々見せびらかすのも楽しかったなあ。車に乗って裏道を入り、ガソリンを消費しながら様々な違った音色の鳥の鳴き声を聞き、そよ風が幽霊の指のように髪の毛を梳いていくのが懐かしいよ。この方法で圧力を減らして、頭の中を空っぽにする。広大なアウトドアほど完璧なイコライザーなんてないからね。それが「何の厄介ごとから抜け出そうか、いやそれよりも自分の居場所はどこなのだろう」と君に再び考えさせる。それはちっぽけな場所だ。大してスペシャルじゃない。でも、ミミズや蜂、どんな小さい生き物でも地球に重要な影響を与えているんだ、と考えたときに、「もしかしたら僕も生きる理由があるのかも。」と突然君は考え始める。

活動を休止してしまった太平洋北西部のバンドDesolation Wildernessのリードシンガーはこういう考えに夢中になり、バンド最後の作品となった”New Universe”を書き上げた。このアルバムは当たり前のものとして思われている曲がりくねった坂や海辺に広がる道路へ僕らを連れて行ってくれる。人々はこういう道を気にせずすぐに通り過ぎてしまい、念頭に置いたり、楽しんだり、味わわれる事は本当に稀だ。何故かというと、普通僕たちは何兆ものほかの事に気を取られて、自分達の周りにあるものを感謝する事が出来ないからだ。そこで僕らを悩ませるゴミみたいな厄介ごとを忘れてしまえばいいのにね。

厄介ごとは全部こういう場所へ捨ててしまえば良い。額と頬っぺたに出来た風焼けを誇りに、家に帰るなんて可能性は全部消し去ってしまうのが一番だ。Zwartは葬式のマーチを歓迎会のように奏でようとする時、とびきり力を発する。どれだけ物事が悪い方向に向かおうと、どれほど多忙でも、黄金の太陽と黄昏時の美しさを味わう事はできる。僕たちもうちょっとそれを楽しむべきじゃない?特に真新しい提案でもないけどさ。


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セットリスト

  1. Welcome to Daytrotter
  2. No Tomorrow(New Universe収録)
  3. Palace(未発表)
  4. Resless Heart(New Universe収録)
  5. Satellite Song(New Universe収録)



Stepdads


The Classic Teddy Bear Falsetto And The Women It Attracts

Sep 17, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Patrick Stolley
Translated by Teshi

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Stepdadの奇妙な名前のリードシンガーUltramarkが一生のうちに何千回も「大きくて古めかしいテディベア」と呼ばれているのは確実だろう。毎回そう呼ばれるのだ。彼の体格と髪の毛みれば分かるよ。でかい体型だし、熊のようなファルセットはクラシックだし。

“My Leather my Fur My Nails”という曲で彼は自分の毛皮と爪について歌い、女性をハンターのように描いていて、彼女はこの半男/半獣と「愉快なシーバー家」や「ファミリー・タイズ」のテーマ曲を打ち抜こうとしている。この悩める女性は注文が多く、常に何かを必要としている。そこにはペットを可愛がるような不思議な感覚、あるいは何も彼女を満足できないという所に立たされた鎖に繋がれた男のような感覚がある。彼女は何もかもコントロールせずにいられない。そして動物はただ毛皮と革と爪に使われるだけなのだ。これは支配的な力に服従するテディベアの物語だ。ただこの支配者は現実では他の人より権力も力も弱い。大きくて古めかしいテディベアは限られた状況でしか使いようがない。動物園の檻の中に連れて行かれる。



Ultramarkと彼のミシガン州、Grand RapidsのバンドメートRyan McCarthy, Alex FivesとJeremy
Malvinが書く音楽は人間が長年に渡り身につけたサヴァイバルのスキルと、人を挑発する態度の間を行き来している。彼女は目に入れても痛くない存在で、彼は彼女にそのままそうやって伝える。こうやって彼女を安っぽいシロップのような言葉で喜ばせてやろうと思ったのだ。彼はこう歌う。

「永遠に太陽をブロックしてやるよ。そうすればキャンドルの光で君が文字を読めるだろう」

そして彼はこのラッキーな女性にこう続ける。

「僕が『君がいなくて寂しいよ』って言わずに済むまで君を抱き続ける。」


何となく男が何か許しを乞うときにする動作のようでもある。恋人を取り戻そうとしているのだ。彼女はこの男を許すためには何かはっきりとした示しや努力を見せてもらわないと承知しない。まるで彼女が縄を持っていて、いつでも束縛を解いて、彼を逃がす事が出来るみたいだ。だから男は愛を取り戻すことに屈しないし、それが彼をとてもロマンティックな人間のように感じさせる(まあ情けなくもあるけど)。どういう風にこれを捉えても、急激に落下するような、例外的な愛はいつもちょっと情けないものなのだ。解決策は見つからないまま、Stepdadは僕らの目の前に問題を持ってくる。雑で気まずいけど、でもね、ちゃんとやることはやってくれるんだ。ああいう注文が多い女たちはいつも大きくて古めかしいテディベアに安らぎを求める。彼女たちは毎回それに嵌ってしまう。
Stepdad Official Website

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. My Leather My Fur My Nails(未発表)
  3. Jungles(未発表)
  4. Cutie Boots(未発表)


2011年9月18日日曜日

Blue GIant


Within The Grasp Of The Original Sprawl

Sep 16, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Patrick Stolley
Translated by Teshi








みんなが何やってるか見える。あいつらが、ごめん僕もだけど、何百年もの間何をやってきたかわかってるんだ。僕らはとにかく色んな場所に拡散して、水の近くに文化を築いてきた(ここが一番都合いいからね)。だからといって決してそこだけに留まったりしない。僕ら人間はとにかく作り続けないといけない気がしてきた。だから力強い川を沿って、新たな辺境の地へ進み続けてきた。

今の時代、僕らはとにかく駐車場を広げ、建物を建て続け、公園や広場や雑草だらけの坂はショップや国内の観光場所に変わった。どうしようもないよ。全部人間の創造物の様に仕上げないといけないんだ。他の誰の仕業でもなく、「人間」の。こういうアホらしい事に--間違った事に突き動かされて--ただ夢中になれるなんて、ちょっと残念だよね。僕らはほとんど止まることなく、その必要性について全然考えようとしない。



オレゴン州はポートランドのバンドBlue GiantのオリジナルメンバーKevin&Anita Robinsonはこのような抑制の効かない「広がり」へ効果的な解毒剤を僕達に与えてくれる。ロビンソン兄弟はまるでどこかに住んでいるようだ。うん、ポートランドに住んでいるって事は分かってる。多分街のどこか、毒が入り込んでいない隠れた所に暮らしているに違いない。他と太陽の輝きも違うだろう。どれだけ外にいても、その日差しは君にガンの危険性を与えない。黄色っぽい空気の中を泳ぎ、一日中飲み続ける事ができる。

そこは全てがさび付いて、さび付かない場所だ。君はとにかく気にしない。どうやってさび付いていくのか、その過程を知るのも問題ないからだ。そこは君が裸足で子供を育てに行くような場所だ。そこは、君が深く、スリリングな呼吸をする場所だ。空気の中には海や、魂、今年の収穫分の干草の一部が詰まっている。まるで食物のような味がして、君は一つ一つ感謝しながら味わう

Blue Giantはバンドとして、広がった大地と二車線を沿った所にある様々な場所を楽しんでいるだ。こういう場所は都市のスプロールには全く届かない場所だけれど、昔々そこにあった場所からは簡単に手が届く場所だ。雑草の布団に寝転がって、簡素なピクニックランチの後昼寝が出来るような場所だ。空も大地も彼らが(都市のそれよりも)好む風景だ。彼らはただそこへ向かい、最良の友達、へヴィーなジャムとカントリーのサイケデリアを助手席に乗せて、窓を開ける。そよ風が耳と舌をゆらしながら、一緒に拡散した土地へ逃げて行くのだ。
Blue Giant Official Site



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セットリスト

  1. Welcome to Daytrotter
  2. Clean The Clock(Blue Giant収録)
  3. Lonely GirlBlue Giant収録)
  4. Blue SunshineBlue Giant収録)
  5. Target HeartBlue Giant収録)







2011年9月16日金曜日

Michael Chapman


These People Sweat Their Sweat Against The Odds

Sep 15, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi


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Michael Chapmanは暑さでくたくたになってしまうような夏の日にスタジオを訪れた。君がたまに「そうならなきゃいいのに」と願った時、そういう風にいつも物事が進まないと呪われた気分だ。70歳の英国人は暑くてジメジメした日に到着し、スタジオのエアコンは永遠に点検状態だった。それはただの悲しくて古臭い機械。無駄にヒューヒュー音を立てて、気温は変わることなく、あり得ないレベルまで上がり続けた。息苦しくて心地悪い空間だったけど、Chapmanのような素晴らしく洗練されたソングライターがここに向かっているというのに、これのせいでセッションのキャンセルはしたくなかった。彼は殆どアメリカでツアーをしないし、この日はシカゴから出てたっぷりの食事をとり、飛行機に乗って東海岸に向けて出発するスケジュールだった。そこで幾つかのショーをこなした後、奥さんの待つ家に帰るのだ。

彼がアメリカに来たのはLight In The Attic Recordsから発売された名作”Fully Qualified Survivor”のリイシュー盤のツアーをするためだった。その日は美しいクラッシックアルバムの埃をはたいて、蘇らせる事を生業としているThe Numero Groupの人もついてきていた。彼はテキサスかオクラホマから来た、牛飼いのような、牛の搾乳や干し草の俵作りを照りつけるような太陽の中やり終えた人のような格好をしていた。くたびれたブーツとジーンズを穿いて、胸がはだけたボタンシャツと野球帽を身に着けていた。もし誰が来るか知らなかったら、ハイウェイ80の近くにある世界一大きい
トラック・ストップ(道の駅のようなもの)から来た人じゃないか勘違いしてしまう所だった。



”Kodak Ghosts”という曲で彼が激しい呼吸をしているのを聞くことが出来る。彼が最後のフィンガーピッキングを奏でる時、彼の体から熱が逃げて行くのだ。これは全ての男が必ず経験する粗暴な闘いについて歌った、多くの忘れられない楽曲の内の一つだ。彼は勇ましい風と、それより屈強な人々について歌い上げる。彼らはお互いを殴りあい、引き裂き、あるいはただ見つめ合っている。Chapmanの痛切で噛み付くような、敗れた夢と毎日の不幸を歌った楽曲に現れる登場人物は不運を笑い飛ばす事ができる。彼らがそれに我慢できるのは、他にどうすることも出来ないからだ。彼は”Memphis Winter”という曲で、額と前腕の汗をふき取りながら再び20世紀にこう歌う。

「イエスが救ってくれるって言うけど、でもここじゃそれは無駄みたいだ/腹減った人がいるし/恐怖におののく人もいる。」

イエスの救済を歌った直後に、彼は説得を始める――もしそれが矛盾に対する、自然に出た含み笑いでなければ。でも彼の楽曲のどんなキャラクターの口からクスクスと笑い声がしてもおかしくない。正直で、意味深なのだ。この笑い声は――完璧に目覚めた顔と半分死んだ目で――まだ血は残っているというサインを送るためのものかもしれない。予想に反し(常に予想に反している)、血は循環し始める。それは他の大勢の登場人物も同じだ。
Michael Chapman Official Site

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Just Another Story
  3. Slow Coach
  4. Kodak Ghosts(Fully Qualified Survivor収録)
  5. Memphis Winter(Journeyman On The Tweed収録)



2011年9月15日木曜日

Wildlife


A Gasp, A Howl, A Slapping And A Triumph

Sep 14, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi






人生って言うのはたっぷりマッサージをしてあげたり、優しく扱ったりしてあげるような大事な物ではない。時々必要に思うけど、適格な動作とか、向上は実は必要ない。気を障らせないように神経を尖らせてこそこそ近づく必要もない。代わりに良いニュースを呼び寄せようと人生の良い面に留まり続けようとしたりする必要もない。ラッキーだったら良い事はどんどんやってくるかもしれないけど。それは形も手触りも無く、誰かがそれの裏をかこうとしているかも、なんて子供の手袋サイズの弱腰の好奇心を必要としている。そいつはただそこにあって、時には聞く耳すら持とうともしない。こいつは僕らが期待するほどシャープじゃないし、そこから何かたくさん手に入れてやろうと思っても、ぜんぜん動じない。こいつで色々想像することが出来るけど、ただ唾を投げかけてくるだけだ。この賭けを最大限に活かすためには、何も考えずに体で感じるようにすればいい。頭を空っぽにすれば、何か面白い事が起きるはずだ。

2005年から活動しているカナダのバンドWildlifeは48の州に向けライブをするために南に降りてきた所だ。彼らは人生と愛のやりとりの苦しみの、熱く動揺した思想を僕らにもたらす。壁にパンチをして、月や太陽に向かって吼える情熱的なイメージのディスプレイだ。大体彼らは大きく笑っている。良心は悪には敵わないはずだから。彼らは若さが引き起こす自暴自棄な態度で「外には僕らにとって良い心がたくさんあるはずだ。それを主張するべきだ。」と僕らに信じさせようとする。

Wildlifeの音楽にはこのような大きい信念があって、そこには数え切れないほどの落ち着かない心の鼓動があるようだ。君に「ベストを尽くして全てを吐き出すんだ。地獄を見せてやれ。どうなるかはお楽しみさ」と信じさせる。彼らの音楽の全ての面にエネルギーが満ち溢れていて、生々しくてカタルシスを呼び起こすものだ。リードシンガーのDean Povinskyは歌い、吼え、浮き上がった血管を流れる血液から供給されるエネルギーより生産され、膨らんだ肺から繰り出される言葉が空気を切り裂いている。彼らの夢と忍耐は同量に存在する。それが望ましいことだし、そうあるべきなのだ。今、全てが解決する瞬間、或いは一瞬で海の中に衝突する寸前のどちらかだ。たとえこんな(どちらに転がるか微妙な状態)でも、何となく「勝利」した気分になるだろう。例えそういう風にはあまり見えなくても。
Wildlife Bandcamp Page

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Sea Dreamer(未発表)
  3. You're In The Dark(未発表)
  4. Drunken Heart(未発表)
  5. Standing In The Water(未発表)

2011年9月14日水曜日

Grace Potter And The Nocturnals


When The Little Things Rush

Sep 13, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi









この日僕らが迎え入れたGrace Potterは確実にバーモント州住居者の燃えるような精神を丸ごとパッケージしていた。でも燃えるような精神だけではない。いつものように、Potterが演奏の最中自らをセクシーで精力的になれる環境に持ち込んでいたからだ。彼女のその部分は「オフィス」で仕事する女性には見られない全ての要素を補完している。とんでもなく短いスカートを履いて、トルネードのように動き回り、体中の力を振り絞って歌い、男も女も関係なく誰もが彼女にいやらしい視線を投げかける。ああ、男どもが彼女の肌と脚を見たら狂乱状態に陥るだろう。でも奴らは彼女が動き回ると、嬉しくてたまらない。多分観客の女達にも同じ事が起こるだろうが、そこには嫉妬の感情が生まれている。顔を真っ赤にして落ち着きを無くしている男を見ていると、肋骨にエルボーを入れてやって、現実に目覚めさせてやるのだ。


でもPotterは現実に間違いない。このセッションが行われた日、外は雨が降っている鬱陶しい天候だった。彼女と卓越したバックバンドは集中して演奏し、最新作から3曲を披露した。アルバムの楽曲で、彼女は安定した家庭を安定した恋人と育む安らぎを必要とする女性を表現している。そしてみんな同じ事を切望しているのだと。注目を集めるための度を越して忙しいクレイジーなスケジュールの中でも、自分を喜ばすちっぽけな事全てを感謝できるようになりたい。仲間と遊びたいし、バーモント州の秋をフルに感じたい。メープルが広野に甘い蜜を流し込み、風に乗ってその匂いが漂ってくるあの秋を。彼女はそういう素晴らしい事や自分が心から羨む雰囲気を楽しみながら体を休ませたいだけなのだ。時間がゆっくり流れて欲しいと思っている。確かに彼女はちょっとだけ時間がゆっくり進んで欲しいと思っているけど、実際それを口に出したり考えたりしたら黙り込んでしまうに違いない。だってそうしたら全てが変わってしまうから。






















でも別れのキスはオッケーだ。彼女をまた別の場所に、新しくて面白そうな所に導いてくれるから。どこか普通じゃなくて、無計画で、他の誰も機会を得られなかった場所。ああ、確かにさよならのキスは悲しい瞬間だよ。でも普通それを感じるのは片方だけだ。Potterにはそういう別れのキスで悲しくなる事が殆ど無いんじゃないか、と君は感じる。事実彼女はこんなキスの事を歌にしている。別れの決断を、何か気まぐれで、公園のピクニックランチの最中まともなワインと適当な会話の後に繰り出すような物のように聞こえさせるのだ。それが普通だと言う風に。


ステージに上がる火の玉は彼女がパフォーマンスしている姿だ。輝きと髪の毛を振り上げているのが彼女。彼女は忙しさの中を生きているが、実際身の回りに起こっていることが信じられていないの。君はまだ彼女は昔と同じで、うまくやっていこうと頑張っている女の子だと感じている。彼女はどれだけビッグになろうとも、それを当然のものとして判断したりはしないだろう。
Grace Potter & The Nocturnals Debut Daytrotter Session
Grace Potter & The Nocturnals Official Site


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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Colors
  3. Goodbye Kiss
  4. Fooling Myself



2011年9月13日火曜日

G-Side


Getting Big To Feed The Fam

Sep 12, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi







ラッパーたちは自分達の成功と近況を定量化することで知られている。彼らはみんなに言葉を使って今の地位からの近況報告をするのだ。タンスの靴下入れにどれだけ金が入ってるかとか、車を何台持ってるかとか、葉っぱをどれだけヤッてるとか、何人の女の子をナンパしたとか、自分達は賢い言葉の言い回しが出来て、他のラッパーをアホに見せられる事とか。また、不成功で何とか生活をやりくりしながら、物憂げに「将来は自分も自慢できると良いのに」と語りたがると言うかなり健全なこだわりもある。それが彼らから成功を願う気持ちを奪ったりはしないだろうが、現実何ヶ月も未払いの公共料金の請求書が残っている。 

アラバマ州のハントヴィルから来たヒップホップグループ、G-Sideは自分らの滞納のせいで電気や水が一日の内ランダムに差し止められる可能性について歌う。また、彼らは「貧困から逃れるためなら出来ること何でもやる」という風にも聞こえる。どうもくだらない事ばかり喋る女達に対して見返してやろうと思っているみたいだ。彼女たちは彼らの事を夢ばっかり見ていると言って、稼ぎ手として見ていないのだから。彼らはどうやったらレーベルとの取引無しに自分達をリアルなラッパーと呼ぶ事が出来るのだろう、と考える。どうもあの女たちはインディー・ラップとかインディーなんちゃらなんて聞いたことも無いみたいだし。こいつらはドルが歌いだす所が見たいんだ。それはG-Sideも同じ気持ちだが、彼らは経済状況について強い意識を抱いている。最新作”The One…Cohesive”の中で、Outkastと一度比べられた事について歌っている。それほど適切な例えは無いよ、何故かって僕らはリアルにアウトキャスト(落ちこぼれ)として見られてるからな!と。くだらない女達と野郎どもには長い間嫌われ、(成功を)疑われてきた。だから自分達の一番荒々しい主張を(まだ近くに置いているけれど)抑えて、生きるルールと方針として定める事にしたのだ。自分達は働く男だし、狂ったクソみたいな世界の中でやらなきゃいけない事をこなしている。

彼らはまるで長い小説を読むタイプのように聞こえるが、君が願っているようなストリート風の詞も聞かせてくれる。全ての要素が合わさり、沈み込んだ魂と打ち破られた夢の舞台を作り上げる。だが全ての夢は忘れ去られた訳ではない。そこには忍耐強さが正しく飛沫をあげているのだ。他のラッパーとG-Sideの違う所は、彼らはお金を手に入れる事だけを考えているのでは無くて、最低しっかり家に電気が通って、テーブルに食事が出る生活を送る必要性を歌っているような気がする。もっと音楽と作家の職人芸にフォーカスを置いているのだ。彼らはこうラップする。

「俺の悲しみに乗っかれよ。だってお前が仲間だと思ってるやつらは仲間じゃないんだぜ」

まるでインディーロックソングで取り上げるメランコリアのようじゃないか。南部のヒップホップには聞こえない。感動的でパーソナル。もっとリアルで、見せびらかすだけのラップじゃない。二人にハグをあげて、たとえ確信が出来なくても「全部大丈夫だから」と言ってやりたくなる。彼らはこう説明する。

「俺は海を乗り越えてでっかいことしてるんだ/金が物を言うらしいな/だから俺が喋るときは叫ぶようにしてるんだ/ニガー、嫉妬かい?俺は家族を養いたいだけだぜ/アホな女達は俺を馬鹿だって言う。何の手立ても無いまま乗り込もうとしてるからな」

これは自慢なんかじゃない、使命だ。そして僕らは彼らを応援したくなるに違いない。
G-Side Official Site

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セットリスト
  1. Welcome To Daytrotter
  2. Y U Mad?(The One... Cohesive収録)
  3. Came Up(The One... Cohesive収録)
  4. How Far(The One... Cohesive収録)
  5. Net Geo(The One... Cohesive収録)



2011年9月12日月曜日

Folklore


Listening To The Crash Into The Sun

Sep 11, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi






僕らが時々忘れてしまうような「落ち着かない感覚」がある気がする。それは僕らの中に備わっていて、何か長い間忘れてしまっていた事なんだけど、いざ再び現れた時、僕らに強く衝撃を与える。方向が分からなくなって、長い間ずっとノルマとして定めていた事も忘れてしまう。そして僕らはこの世にある自分たちの所有物を売ったり手放したりしようと決断する。無駄な物を削ぎ落として、殆どゼロの状態に立ち返るのだ。僕らは仕事を辞め、子供たちを彼らの生活の中心である学校から引っ張り上げて、そこで出来た何十年越しの友達から自らを引き離してアラバマとか、どこか気まぐれな場所に引っ越す。とくに理由もなく。

 それはまるで心の中の「落ち着かない感覚」が全ての重要な決断を決めてしまった様で、全ての持ち物をレンタルカーに詰め始めてしまった—これだけは、とキープしたものだ。「落ち着かない感覚」が一日の有り方を、あるいはこの先何年かの有り方を決めてしまう。何故かと言うと、こいつは僕らが心に長年溜め込みすぎたヘドロにもううんざりしているからだ。そこで僕らは本当の友達は誰なんだろう?と考え始め、実際に「真の友達」を見つめなおし考える。例えどれだけ親切にしてもらっても、僕に彼らが必要なんだろうか?いて欲しいのだろうか?そして最終的な決断へ向かう所まで考え始める。ゆっくりと散らかった方法で、荷物は最小限に、可能な限り心配事もなくゴールへ向かって行く。次の日からは早く寝て、早く起きることにしようと考え始める。多分効果があるだろう。多分僕らが離れた仲間たちは自分達にとって良い人達じゃなかったかもしれない。彼らから遠ざかる事を後押しされて、そのチャンスを得た時、24時間の内で、彼らからはそんなに学ぶ事は無いなと考える。














Elf Powerのメンバーと拠点をフィラデルフィアに移したミュージシャンJimmy Hughesから成るFolkloreが“Home Church Road”という新しいレコードを製作した。そこでは、あらゆるものが普段の振る舞いと変わってしまった瞬間や、自分が昔決めた(それか鹿とか鳥とかアリさん達が決めた事かも)人生のルールが蘇って君に冷たい一撃を与える瞬間を讃えている。彼らは君がつるんでいる人間はシットヘッド(う○こ野郎)で、君は間違ったものを目標にしていると、忘れずに指図するだろう。全部間違えてやってるんだ。でも悲しいのは、もう長い間ずっとこの方法でやってきたってことだ。

Hughesは作詞家として、頭と精神の一番主張すべき所を刺激する。それらのパーツは周りから言われた方法で機能させているから、常に静かで落ち着いている。今以上に周りともうちょっとフィットすべきだと言われている。”The Party”という曲はアルバムの中で特に素晴らしく、現在の暗闇の中社会がどこに位置するかをテーマにしている。そこでは間違った崇拝者が現れて、一秒単位でまた新たな偶像が生まれている。何かに参加しようとする社会。絶対に深くは関わりたくないという希望をもちながら、闇雲に君が想像できる全てのもの(人間、場所、信仰と自己)に繋がろうとしている。Hughesは歌う。

「今、年寄りは何で若者が狂っちまったのか想像できない/そして奴らの子供たちは自分達の赤ん坊をどうすればいいかわかってない/奴らの子供たちはそれで落胆するだろう/何故かってそれは長年信じられてきた嘘だからだよ/世界が変わってないって信じさせるためのさ」

常に僕らは自分達のモヤモヤした感情や、他人の素晴らしい素質に対応したりする。ただ、ちょっとだけだけど。ちょっとだけ?それは変えなくちゃいけない。
Folklore Official Website
Folklore Debut Daytrotter Session


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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. The Party(Home Church Road収録)
  3. The Birds(Home Church Road収録)
  4. Irrelevant Roads(Home Church Road収録)
  5. The Beginning(未発表)

The Chapin Sisters


Wildfires Burning On The Arms

Sep 9, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Patrick Stolley
Trasnlated by Teshi





野生の炎を見た時の普通の反応は、「ありえない!」だろう。何で野生の炎は起こって、あんなに制御不能になるんだろう?何で誰も止められないんだろう?何で鎮圧出来ないんだろう?何で炭と酸素を飲み続けてどんどん燃え上がり、道路を横切り、多くの家屋と動物たちを避難させることが出来るんだろう?火は留まる事を知らず、火種になるものを全て飲み込み、飛行機やヘリコプターを配した消防隊も、湖と同じ量の水を用意しても、この炎には敵わず絶望している。火は疲れ果てるまで怒り燃え続ける。止めるかどうかは野生の炎自身が決めるのであって、誰かに鎮められるからではない。多分着火も彼らの意思で始まるんだろう。きっと頭が空っぽのアホがマッチとタバコで着ける訳じゃなくて、消え残ったキャンプファイアのせいでもないだろう。AbigailとLily Chapinの二人も野生の炎のようだ。

ロスアンジェルスから来たこの姉妹が作る音楽はこういう炎が生まれる場所で生まれている。小さな火花が地面に当たり、最適な場所に飛び降りたと気づく。ゆっくり力を増しながら声を見つけ出すのだ。彼らはいつも小さい所から始まり、腕と足を伸ばしながら火種を蜘蛛のように通り抜けながら広がって行く。ブレスレットのお守りのようなヒッピーフォークと共に、”Two”(このセッションで披露されている)と最新作”Lake Bottom”の楽曲でThe Chapin Sistersは否定する事ができない、パチパチと煙が立ち上げる瞬間を作り上げる。彼らが背中に荷物を背負って塵っぽい道を重々しく進むとき、煙たい熱が少し放出されている。

物語の登場人物は、寒い所から雨や風から逃れて安全な所へ行こうと努力している。それか自ら燃え上がろうとしているのかもしれない。”I Can Feel”という歌は酷い嵐や悪い知らせが来ると直感で知り、いつ地下に隠れるべきか分かっている年老いた男と女の事を仄めかしている。遠くで雷が落ちて空気が灰色に変わった時に、首にかかる髪の毛が逆立つのを感じている。誰でも嵐が予感できるはずだ。彼らの声はお互い、垂直に平行に動き出す。まるで白くて復讐に燃えた稲妻を装備した黒い空のようだ。The Capin Sistersは自分が傷つきやすい窮地へ僕らを連れて行く。そこは全てが明かりに照らされていて、フルに燃え盛るだろう。あらゆるものが燃え、光が逆立ち、消えて行く。最終的にぽつぽつとオレンジ色に変わっていき、黒ずんだ灰の反対側とまったく同じ色
をしている。
The Chapin Sisters Official Site


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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Digging The Hole(Two収録)
  3. I Can Feel(Two収録)
  4. Paradise(Two収録)
  5. Roses In Winter(Two収録)


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