2011年9月21日水曜日

Bon Iver


Broken Man Makes Lovely

Jul 21, 2008

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Sound engineering by Patrick Stolley
Translated by Teshi




枕の冷たい部分に関しては十分に意見が交わされた。だからもうやめてくれないか。つまり使ってない側ってことだろ。それ以上もそれ以下もない。「可能性を秘めた枕」。頭を向ける所に裸で横たわってるだけだろ?ベッドの空っぽの暖かみについても十分言われてきた。ベッドの片側は前までは占領されていたけど、そこにあったものは最近違うベッドに乗り移った。より心地よいベッドに乗り換えた訳じゃないよ。ただ違うやつに行っちゃったんだ。違うシーツ、違う毛布、違う枕を――もう分かってると思うけど――違う人とシェアしてる。僕らが手を滑らせる事ができるあの楕円型の暖かみ、あのスペースについても色んな事が言われてきた。その温かさで火傷するなんて、いやらしくて見てられないよ。それでも見なきゃいけないなんて…。他の何にも変えられない。目覚まし時計に朝起こされて、約束事や仕事に向かうときのベッドに残る暖かさとは違うものだ。永遠に消えてしまった熱。そこにあったのに、蒸気のように消えてしまった。あの肉体の香り、休息する手足と首がいまだに嫌な臭いを放出している。まるで裏切りと愛のように。愛の方が強いか…。いや、裏切りだ。

木に囲まれたウィスコンシンのバンドBon Iverの背後に立つ、かつて傷つけられた男Justin Vernonは現在心に血を流した人々の一番の代表者の一人になって、自分達の心を回復させようと方法を探している。枕の冷たい部分や暖かさ、マットレスの空いた部分についてはたくさん題材があるけれど、絶望の重苦しさと奔放に願い事をする重苦しさ両方をくっつけたものはあまりない。願いって意味では全て同じだけれど、それは時に何か自分を再び満足させるものになりえる。まるで「良くある憂鬱」と「ハッピーな憂鬱」のバリエーション(変動)のようだ。クソ不運な事が起き(最愛の人が去っていく)、それでも時間が経てばそのイメージも頭の中から洗い流されてしまう。もし君が汚くて臭いシャツやパンツをクローゼットに長い間入れておいたら、いずれは臭くなくなるものだ。



Vernonは(ある意味)同じ方法で心の琴線に触れる、胸が裂けるような楽曲を書き”For Emma, Forever Ago”を作り上げ、録音した。このレコードはこの五年間(あるいはそれ以上)で現れたどんなレコードよりも自然な美しさとフォームを備えている。君の息を呑ませ、涙腺を緩ませるような作品だ。僕らは座って傷ついた男について考えていた。完璧にバラバラに壊れてしまった男の事だ。彼には何の慰めも効かないし、ぼろぼろになって破壊の山を築いてしまった。

僕らはとにかく彼にレンズを合わせ続ける。彼を囲む光が低い所で引き下がって、怖がって触れようとしない。肩を叩いて「大丈夫?何か欲しい?何かしてあげられることはある?」と聞けない。彼らは後ろに下がって、彼に心と精神の闇を吹き返させてあげる。時々それもブラックコーヒーと同じくらい、心を落ち着かせるものなのだ。突然何週間か何ヶ月かの沈黙のあと、いきなり動きがみえた。ゆっくりと慎重に…手足を動かし、涙を拭い、誰か自分の壊れる瞬間を見ていないか恥ずかしそうに目を動かしながら。誰か見てた?まあそういう事もあるし。誰も見てなかった?あっそう。

再構築は驚くほどすぐに始まり、この傷ついた男は新たな力を呼び起こした。Vernonはブラウスにからかわれ、以前「ベイビー」と呼んでいた人の瞳や脚を思い出す度に力が失われていくのを感じていた。もう彼のものではない。笑顔を投げかける事も出来ないし、夢中になることもできない。この決断に辿り着くには労力を必要するし、For Emmaはそれを経験した人達の作品の中でもベストの作品だ。

Vernonと彼のライブバンド、Mike NoyceとSean Careyは口を空けて、これを乗り越えるために必要とした冬を吐き出し、Vernonが住んでいたコテージの煙突から出る煙を再現する度に毎回儀式を行う。僕らが普段逃れたくなるような冬を霜立たせて、僕らにそこにいるように命令する。その時は、再び彼と一緒にあの時のように悲しくて愛らしい冬を送る。それが愛らしいものだと僕らも信じるようになる。彼のおかげだ。すごく感謝してる。
Bon Iver Official Website

試聴・ダウンロード

セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Flume(Emma, Forever Ago収録)
  3. Lump Sum(Emma, Forever Ago収録)
  4. Re:Stacks(Emma, Forever Ago収録)
  5. Creature Fear(Emma, Forever Ago収録)




0 件のコメント:

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...