2012年1月28日土曜日

AM & Shawn Lee


We Just Sip The All Of The Weather

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi

Download




























ある決まったバンドや作家達が、僕に天気についてどれほどブツブツ文句を言ったり、深く考えさせたりするのは怖いものがある。確かに、これはただの個人的な欠点だったり、何か僕が非常に恥ずかしく思うべきものなどではない。かなりの確立で起こっていることだ。あの曲やこの音の聞こえ方は、木だったり、開け放たれたスペースだったり、立ち退きを命じられた夜の時間のハイウェイをでかいソーダとつまみのビーフジャーキーを持ち込んでドライブしたり、がやがやと忙しい街や、僕らが常に引き篭もっていたい場所から外に出たときの風や太陽が身体に当たる感じ、それらを思い起こさせる。もしかしたらこういう「衝動」は自ら生まれるものなのかもしれない。何故って、それが好きか嫌いか関係なく、僕らは天気に囲まれているのだから。天気があっちこっちで飛ばしてくるわけじゃない。でも、ここら辺ではあまり影響はないみたいだし、あそこでは絶対に何も起こらない。イエスかノーか。素晴らしいソングライティングもそのように生まれる。とにかく身体に完璧に作用する。全身マッサージか、あるいは全身を動揺させるものか。どっちも悪くないよ。君が今いるムードによって変わるんだ。

今日はAM & Shawn Leeをリピートで何回も何回も聴いている。真のリピーターがたどりつく天国。午後の天気が全てを包み込むように、瞬く間に大雪へと悪化するような、そんな日。厚い雪は、無慈悲にもどんどん積もっていく。積雪は始まり、まるで絶対に落ち着くことがないみたいにどんどん降る。雪は本気で癇癪をぶつけて来て、みんなはその中を滑りながら、事故で死なない様に気をつけながら、今日の天気を呪っている。どうすることもできないし、とにかく君自身も、その他全てのことも雪に支配されてしまえばいいさ。

AM & Shawn Leeの音楽は、僕らをこういう素晴らしく没頭出来る物の中へ連れて行く。僕らはそこで何かを夢中になって探して、それが一体何なのか細部まで理解しようとする。彼らのアルバム"Celestial Electric"はまるで雪嵐の中へ乗り出そうとしているみたい。何十もの雪のかけらが辿る道を一度に追いかけて、視線が何方向にも広がって行くのに気付く...でもそれも良い気分だ。それは雪の中に飛び出ていき、僕らを包み込ませる。そこで、冷たくて、でも温かくなったほっぺたがどのように感じるか、雪のかけらたちがどれほど必死で働いて、仕事をほとんど終えて、あまり寒けが身に染みないようにさせているかを感じている。AMとLeeはこのような複雑で、グルーブに満ち、全てがオーガニックで狂ったように天才的な、音楽的コラボレーションの関係を完璧なものとした。この男達は、一つの音楽に対し人々が反応するにはどのボタンを押したら良いか完璧に理解している。それは蜂の大群、弾丸、熱線、熱い足、柔らかい外観に裸足、上半身裸、高いドリンク、日焼け、風焼け、そして愉快な感覚。それがすべて一緒になって、一気飲み出来る飲み物に変わる。僕らはそれに唇をつけて、代わりにすすりながら、その全ての質をゆっくり味わうことにする。

AM & Shawn Lee Official Site
試聴・ダウンロード(有料)

セットリスト

Welcome to Daytrotter
Somebody Like You
Dark Into Light
City Boy
Winter Sun

2012年1月24日火曜日

Star Slinger


Welcome To Your Own Kick Butt Time, The Creeping Of The Illusions

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi





























Star Slingerは僕らを結構長い間続いている話し合いの中へ連れて行く。僕らは、自分達のアンテナがその時起こっている全ての話し合い出ているシグナルを察知することの出来る部屋へと足を踏み入れる。そのシグナルがどれだけソフトなものかハードなものか関係なく。彼が音を繋ぎ合わせ、サンプルや違うムードを忍び込ませながら演奏している間は、僕らはより知覚を刺激されることになる。UKのマンチェスターで活動するヒップ・ホップ・プロデューサー、Darren Williamsは一陣の娯楽を紡ぎ合わせる。それは、僕らがついに我を失って、老衰し、それでも気楽に子供のようになる時と同じ気持ちを感じさせるものだ。よくあることだけど、若いときは、絶好調な身体や機敏さをほとんどフル活用できない。自意識過剰にも形だけは真似して、自分の部屋にこもって、ひっそりと酷いダンスの振り付けを踊って楽しんでいることなんか分からない。それでも、絶対に誰にもそのことは知られちゃいけないし、見られてはいけない。それって、盛りの時なのにひどい時間の無駄。でも時は遅し、僕らは大人の市民として存在し、その生き方をするに違いない。それだったら早い所我を失った方が絶対に良い。我を取り戻す方法を朝が来るまでに取り戻す場所を知っている限り。そうすりゃ僕らが心底嫌っている来週の仕事にも間に合うでしょ。

ここでWilliamsが演奏したセットは焼けるようにホットで、そこが様々な幻想が忍び込むポイントとなる。君にシアトルスーパーソニックスのショーン・ケンプ(バスケ選手)のナンバーが入ったジャージをまた引っ張り出したい気分にさせる。そう、興奮しがちな高校生の時のお古。君にバスケット・コートに行きたいと思わせる。かつて高いと思っていたジャンプ力も無くなったって分かってるけどさ。(いやみったらしいコーチは一回も僕のジャンプ力に気付いてくれなかったな。そうしたらもっとゲームに参加できてたのに。)彼の演奏は、君に小熊を売る場所を探すことの合法性を検討することも嫌と思わせない。君は小熊を大人サイズになるまで世話して、そいつを深く沈みこむ枕代わりに頭をよせて、再放送の"Deadwood"のエピソードを観る。彼の演奏は君に間違った記憶を呼び起こし、君は実際よりもかつてはたくさん首になったと信じてしまう。君はクラスの同年代のホットな女の子達に話しかけ、彼女達も君のことはまあまあ良いと思っている。その時は二人の関係ってのはうまくいかないわけで...折りよくも彼女はすでによくある束縛的で、丹念な高校時代の恋愛関係を送ってるみたいだから。

Star Slingerは君がただ全てを楽にして、彼の作り出すコラージュの恩恵により、突然自分自身や、自分が成長した姿(たとえそれが何ともなくても)を最高と思わせる熱狂の場へ巻き込んで行く。君は腰をあげて動かし始める。君は幻想を愛し、何年も手に入れようと思っていた最高の時間を楽しむのだ。
Star Slinger Official Site


試聴・ダウンロード(有料)

セットリスト
Welcome to Daytrotter
The Daytrotter Set

2012年1月23日月曜日

The Stepkids


White Lights, White Heats

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered and mastered by Matt Oliver, Translated by Teshi
























君も絶対、なかなか興奮が冷め止まなくて、君の体の中のもの全てにタイムス・スクエアやラス・ベガス・ブールヴァードの(大騒ぎの)血がまだ流れているような夜に詳しいはずだ。枕に頭を乗せて、目を閉じると、誰か/何かが君にプレッシャーをかけているような感覚を覚える。そして君は長い間寝そべって、目を閉じたふりをした瞼の奥では完璧に目覚めている。眠りたい、眠らなきゃ、でも、それが出来れば幸せものさ。一時的な不眠症の役を演じなきゃいけないのかな。君はただ時を紛らわせて、意識はどこかに辿り着ければと考えている。朦朧とした感覚がキックインして、サンドマン(眠りの精)がもう少し先にいる。でも気付いてみれば時はすでに午前四時をまわり、もう寝入ることなんて出来ない。コネチカットのバンド、The Stepkidsは、こういう夜が僕らの頭の中にこっそり入ってきて、神経を震わせてイライラさせるときによく頭の中に聞こえてくるサウンドだ。それは僕らを支配する感情の波を弛むことなく旋回し、転がり込む青白い光、白熱のよう。休息をとるのも嫌じゃないけど、頭に聞こえてくるサウンドも、The Stepkidsのひねくれていて、フォーキーなサイケデリアの傑作セルフ・タイトル・デビューアルバムを聞くのも悪くない。この作品は長い間頭の中で燃え続ける。

ベーシストのDan Edinberg、ギタリストのJeff Gitelman(彼はかつてアリシア・キーズのツアー・ギタリストだったが、Stepkidsでの活動だけに集中するために辞めた)、そしてドラマーのTim Walshはヒプノティックな楽曲のアレンジ、数々の折り重なった展開とセクシーな挑発のパルスを吐き出す。彼らが僕に眠れない夜を思い起こさせる理由は、彼らは時々脳内忍者(Brain Ninja)について歌っているけど、どうも女性の髪の毛がベッドの上でどう広がるかとか、彼女に凄く近づいた時に、どんなに良い香りで、塩っぽいか、これを歌っているみたいだからだ。君がまだ眠られないのは、頭の中に純情に不純な考えが浮かんでいるからで、骨までそれが響いているときに誰が寝られるっていうんだ?彼らはオールド・スクールのフィラデルフィアのソウルを放出し、それはまるでPhiladelphia International Vaults(ソウルの老舗レーベル)から登場したよう。フリーラブを提唱する60年代のマリワナ中毒の、可愛らしいヒッピー娘たちと同棲しようとする考えを持ちながら。歌は頭の中にロックされ、緑と紫の輝きを放ち強いグルーブを生み出す。それが僕らを夜の中に、パーツに、全ての中に飲み込む音のシャワーを生み出しているのだ。
The Stepkids Official Site

試聴・ダウンロード(有料)

セットリスト

Welcome to Daytrotter
Suburban Dream
Brain Ninja
Shadows on Behalf
La La



2012年1月16日月曜日

Laura Marling (Part II)

















Part I

彼女はそういう戦場のどこにもいないし、彼女と、彼女の最新作の最も素晴らしい質を高めているのは闘いの蔓延を確認することなのかもしれない。彼女を消費させる狂気と孤独に対する我慢。彼女がワインを呑みながら作業している時、彼女がグラスにワインを注いで、まるで蝋燭の光のように部屋、テーブル、そして家具を優しく柔らかく包みこむ声が低く調子が保たれる時、その我慢が彼女をいつもよりちょっと顕著になる。柔らかくて黄色い光が歌声と共に空気を包み込んでいくのを見ることが出来るだろう。言葉自身に命を吹かせているのだ。彼女の歌っているものが欲しい。彼女が最初に書いた時に感じた、その時と全く同じ気持ちを感じたい。そう、彼女が初めてその言葉を口の中で転がして、最高で、飛び切り悲しい音を作り出したときのものを。

20代の若い女性も早熟になれるのかな。彼女はまるで長い人生を生きてこないとわからないような全ての感情を知っているみたいなんだから。彼女がそれぞれの思慮、そして深淵の悲しみとの厚い関連性に到達したプロセスは不道徳なものに違いない。僕らが知る必要の無い何かに決まっている。彼女はきっと腕と膝の肌を剥いで、その下に最初の層が現われる。血を綺麗にふき取ったら、その次に2番目の肌の層が現われる。それはしわしわで、肝臓が見えていて、皮膚の下で進行する「老化」をまじまじと証明している。僕らは耳を澄ます。角が立った祖母にそうするように。あの賢明な年寄りの鳥は、10,000回もディナーを準備して、8人も子供を養い、彼女が知らないこと、また痛々しいほどに親密に知っていることを僕らに話してくれる。Marlingは歌う

「私と時間、はるか昔に飛んでいく/私は子供で、いつだってそれが何でか知っていた」

まるで彼女は永遠に年寄りみたいに。まるでいつだって年寄りじゃなかったみたいに。

ダウンロード(有料)

プレイリスト

Welcome to Daytrotter
Don't Ask Me Why
Sophia
Flicker and Fail
Night After Night




Laura Marling (Part I)


That Known So Intimately It Hurts, It Howls

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Shawn Biggs, Translated by Teshi

Download























Laura Marlingは君に細心の注意を要求する。彼女はトムスシューズ、そして灰色のスキニージーンズを身につけた脚を、くるぶしの近くで交差させ、目の前に設置されたマイクスタンドに立つ。普通の人のようにカジュアルで、安心しているように見える。彼女は、彼女の歌を聴くために目の前に集まったお客さんをからかって、「この指に嵌めてる指輪は結婚指輪なんかじゃないんだから」とか、「カリフォルニアのSalinasなんて言ったこと無いわ」とか説明している。彼女は君に一言一言ちゃんと聞いてちょうだい、なんてせがむ必要はない。彼女の声色とかアクセントについてくるように何て言わない。君は彼女と旅に出る。どうもくだびれていて、驚くほど掻き乱しているみたいだけれど、苦いというよりは甘く、残酷にも検証された、人生についての物語を引き連れて。この物語に現われる人々は、感情に押しつぶされてしまった。多分彼女のことなのだろう。いや、もしそうだとしても、彼女ほどに美しく、そして完璧に感情に飲み込まれたものはいないだろう。

このイギリスの歌手--もともとはハンプシャーのEversley出身--は料理本を読み、きっと君は彼女が巨大な鍋の近くで料理していると創造するだろう。質素でコンパクトなキッチン。鍋から出る湯気とオーブンの温度が、この部屋をアロマが効いたサロナに変身させて、Marlingはお気に入りの木製のスプーンで出来上がった料理を味見している。彼女はスープを唇に運び、味見して一秒間静止する。「あと何が必要なのかしら」彼女はオレガノをもう少し加えて、その後に秘密の調味料を加えていく。"Don't Ask Me Why"という2011年の名作"Creature I Don't Know"に収録された曲でMarlingはこう差し出す。

「道を見失って凹んでいる私たち/どんな気持ちか分かるわ/間違っているってことも分かる、でもこれが現実」

彼女が見慣れた場所から生まれるこの歌詞。どこか鈍感で、おっぴろげで、答えに不足している場所。どこか多くの数の人々が夜に横たわる場所。彼女はなにか美しさを探している。何か痛みを少しでも癒すような美しさ。しかし彼女は自分が手探りしている感情が、そして彼女のことを手探りしている感情が何か決まったもので無いことを分かっている。
続く

Part II
Laura Marling Official Site

2012年1月11日水曜日

Milk & Eggs


The Soft Pains And The Hard Pains

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi

Download































Milk & Eggsのメンバー、Jordan Sellergrenがアイオワ・シティのインターステート80(州間ハイウェイ)を東にドライブしてここまで来てくれた日、彼女はCedar Rapidsから出発した。彼女はそこで大学の学科のテストを受け終わったところだった。僕達にとって、そして今お聴きの君達にとって---特に"Birdhouses"みたいな歌を聴いているとき---みんな多分同じ事を考えているはずだ。僕らは自分達が何を考えているか分かっているし、君が何を考えてるかも想像がつく。でも、そんなに厚かましくなりたくない。とにかく僕らが考えていることを言うから、もしピンくるかどうか教えてよ。

そう、僕らはね、Sellergrenがテストを受けていて、大学の教室にいて、こういう彼女がしなきゃいけないって感じていることは、彼女にとって時間の無駄だっていうこと、それを考えてた。中退しちゃえばいいのに、ってね。彼女が非常に賢いっていうのはわかってる。彼女みたいに曲を書ける人はそうに違いないよ。でも大学とか、何らかの分野の研究を経て、結局よくある仕事につくっていうのは彼女にとって不十分なんじゃないかな。あの才能があればもっと輝けるはず。彼女の考え方を使って、僕らの頭の中をもうちょっとしっかり整理してみようか。わがままなことだけど、彼女にその仕事をしてもらわないと。彼女が発する言葉とギターの音色が必要だから。彼女に物事を説明してもらったり、一晩かけて食べ終わるような盛大なディナーの後に感じるような満足感を与える方法で、その説明を額縁に保存してもらわないと。ただ、その食事は量の問題じゃなくて、一緒にいる仲間、会話、その質が全てで、素晴らしいワインが全てを呑み流してしまうんだ。彼女にはロマンティックに、時々血管や、毛穴に広がっていく柔らかな痛みと激しい痛みについて書いてもらわなければ。

彼女にはとにかくこれをしてもらいたいから、その時に彼女の考えていることや感情以外には何も研究や勉強をしてほしくない。こういうところから生まれるフォークソングは、そのもどかしさがとても美しい。"Birdhouses"という曲は、愛の営みと、愛の面倒な性質、それを悪用する人々、良いところだけ頂戴して後はポイ捨てする人、不平等に扱う人について歌っているみたいだ。そこには一人の女性が鳥小屋を建てている。きっと、多分きっと心や棲み処のための建築だ。そして男達(あるいは決まった一人の男)がいる。彼らには決してその細心の注意を払って作られた贈り物は与えられない。彼女は歌う

「この鳥小屋はね/私が作って、何の意味もなく売るの/でも普通の男には売らないのよ/絶対に、どうでも良い男には売らないの」

こんな痛切な歌詞はそんなに聴けるものじゃない。絶対に絶対に彼女には今の生活を投げ捨てて、困難で金無しのソングライターの人生を選んで欲しい。そんな苦しい生活も(彼女だったら)長続きしないだろうからさ。

Milk & Eggs Official Site
試聴・ダウンロード(有料)

セットリスト

Welcome to Daytrotter
Birdhouses
Don't Know How
Five In The Mornin'
Cowboy
Buddy Brown


2012年1月7日土曜日

Wild Nothing


Lips Won't Last Forever

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Patrick Stolley, Translated by Teshi






























大抵の所、僕らはみんな徹底的に不安だらけだ。不安は筋肉の筋から筋まで張り巡らされてる。それが僕らの肉をタフにするのだ。それがふくらはぎの丸い部分にこぶを作るのだ。それが午前4時の暗闇に目を覚まさせるのだ。テレビはオンで、今まで願っても見なかったような、絶え間ないぐちゃぐちゃした場当たり的な考えが頭の中に滾る。何事にも確信がもてないし、これで無茶苦茶狂わないほうがおかしいよ。すべて推測と不確なものなんだから。僕らはただ首の周りから血を噴出して走り回ってるチキン。首をぶらんと垂らしながらね。全てがただの目標の無い衝突で、それが僕らをとても興味深くて汗でべたべたな雫の中にかき集めた。そしてヴァージニア州はBlacksburgのエクスペリメンタル・ポップ・プロジェクト、Wild Nothingの重要人物、Jack Tatumがやってくる。

まあ、君が立てた仮説もまだまだ理にかなってると気付いたみたいだけど、それが全く手がつかなくなる可能性が巻きついている。しかもその殆どは、君がどれだけ蝶番からギーギー鳴るドアを開けて、部屋から廊下に出るかに関係している。そして、他の頭無しと心が傷ついた奴らと冒険に出るために、外の天気を確認するのだ。Wild Nothingのデビューアルバム"Gemini"に収録された曲の殆どは、夢見る人の移り変わる接線となって現われる。でも、そこには常に一貫した調子があって、間違いなどどこにも起こらない。登場するキャラクターは何が彼らの心を痛め、何が大丈夫なのかを知っている。何が上手くいくのか、何が爆発するのか...彼らはなるべく完璧に砕けてしまわないように、なるべくそれをひけらかさないようにする。"Live In Dreams"という曲は何かTatumのものの見方の本質を表しているかのようだ。

玄関先のタバコの吸殻のうえに座って
「君は僕のように死んだみたいに気が抜けちゃってるの?」って君に聞けるけど
好きなように僕の事を呼んだら良い、でももう一回呼んでくれ
僕があんまり喋らないのはほんとだよ
だって二人の唇は永遠に長続きはしないんだから
まさにそれが理由で
僕は夢の中で生きて、ここでは死んじゃったほうがいいんだ
だって二人の唇は永遠に長続きはしないんだから
まさにそれが理由で
僕は夢の中で生きて、ここでは死んじゃったほうがいいんだ

ここにはただ夢の中で生きるだけでなく、エーテルの中でも生きたいという気持ちがある。どこか抵抗が最も少ないところで生きたいという願いだ。もし家の中にノイズがあれば--あの夜のアンプにかかったバンっという音---いや、音の出場所なんか調べることはない。勝手にどっか行っちゃうから。多分猫がおきて、夜行性の本能にハイパーになってるだけなんだ。どうってことはないよ。掛け布団と、好きな音楽と本があれば大丈夫。Wild Nothingの音楽は、僕らが寝巻きで、道を照らすゆらゆらしたキャンドルを片手に進む、馬鹿馬鹿しく長い道のようだ。キャンドルの灯りは闇を引き裂くけれど、僕らはまだそれに向かって静かに、我慢強く進み続ける。

Wild Nothing Official Site
試聴・ダウンロード(有料)

セットリスト

  1. Welcome to Daytrotter
  2. Live In Dreams
  3. Our Composition
  4. Bored Games
  5. Velocity Girl



2012年1月5日木曜日

Moby


The Soul And Salt Of The Earth

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Jon Ashley, Translated by Teshi

Download






























いろんな種類のMobyがいる。この男は、絶対に長い間同じスタイルの音楽家としてじっとしていられないし、それが太陽の下と月の下に、様々なカタログを築き上げたのだ。一ヶ月前ノースキャロライナ州のAshevilleで、僕らが第二回目のMoogfestの初日、一番最初の夕方にEcho Mountainというスタジオでセッションを録音した時、Mobyが変身しようと決めたもの...それは南部のタバコ農園で骨を折って働く家族の魂、町、そして一人の男だった。いや、手で墓を掘っているのかもしれない。それか袋一杯のじゃがいもとキャベツをこの先3日間の食事として保てるようにしているのかもしれない。彼は僕らをそんなに遠く離れていない昔のアメリカの歴史の、深い井戸のなかへ連れて行った。たいていの人々にとって今まで経験したことがあるのと同じくらい確実にタフなものを、彼は新旧のスピリットを通しておこなった。彼は自身のエレクトロニカの楽曲をスピリチュアルなものに変身させ、それでも以前の曲の形もスピリチュアルなものとして見ることが出来たし、そうしているべきだった。あの困難から生まれる強大なセンセーションと、もうすぐ勝利を得るという楽曲の大きな意味を捉えられなかったことに、バカみたいな気分になる。

"Natural Blues"はいつだってソウルの、真にスピリチュアルで、捻りが効いた曲だったじゃないか。歌詞は

「もう神様ってば、僕のトラブルは酷いもんさ/もう神様ってば、僕のトラブルはさ/神様以外に僕の困難なんて知らないのさ/神様しか僕のトラブルなんてわかんないのさ/丘を下って/ある日ね/ソウルは幸せになった/そして一日中そこにいたんだ」

これは自分が大丈夫じゃないと気付いた誰かの腹の中から、口の中から直に吐き出されている言葉だ。でもそいつはまだ晴れた日の価値をちゃんと感謝できるような人だ。それとちょっとした笑い事と、美味しいご飯と良い友達があれば暗い日々にも陽が差す。お腹が一杯になった腹の底から生まれる笑い声を聞けば、今この瞬間は大丈夫。昼下がりに、かなりランダムに選ばれたこの楽曲集は非常に優れた才能がフィーチャーされた。歌手のInyang Basseyとヴァイオリン奏者のClaudia ChopekがMobyとそのバンドメンバーは、その日の夜に4ブロック先の会場で開かれるパフォーマンスのために集った。まるで1960年代の人権運動と1970年代の戦争反対運動と、もっと早い時期のものから生まれたように、全てを聞こえさせるAda R. Habershon/A.P. Carter/Nitty Gritty Dirty BandとJohnny Cashのカバーと、オリジナルの楽曲には一貫性がある。それらはすべてどこかコミュニティの歌の様で、歌詞と音楽性の断片はまるで何十年もかけて足され続け、抑圧された愛憎、反発と叫び声の確かな感情にフィットするように、打ち伸ばされ形作られている。よく、Moby一人の決断に任されるとき、この男がハートとソウルの欲望をどのように考えるのか理解するのは面白いことだし、よく分からないものだ。彼は愛の音を不毛に聴こえさせる傾向があるし、稀に単一の言葉が彼の言葉の後ろを支えているが、それでも、このセッションではそれがフルに花開いている。活き活きして、様々な鼓動がある。MobyはまるでRobert Johnsonの神聖な十字路に辿り着き、ウェストバージニアにあるガソリンスタンドを訪れたみたいに聞こえる。そこでキャデラックの後ろでHank Williamsが死んでいることに気付かされるのだ。まるで彼の身体の中で幾つもの炎が巻き起こり、彼を燻っているように聞こえる。彼は「全部悪い方向に向かうときに良心を見つめる」し、悪いこと全ての中にちょっとした良心がある時は、悪いものを見つめている。
Moby Official Site
試聴・ダウンロード(有料)

セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Will The Circle Be Unbroken
  3. Natural Blues
  4. Porcelain
  5. Ring Of Fire
  6. Slipping Away
  7. Now I Let It Go

2012年1月3日火曜日

Marketa Irglova


Held Tight, Just Less Tightly And So Differently It Hurts Worse

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Shawn Biggs, Translated by Teshi

































最悪なこと、それはゆっくりと衰えていく愛。じきに道路をならすスチームローラーのように圧力的になってしまう親密な関係。それはまるで君が高い建物、そうなかなか栄えている高層ビルを見つめているみたいに、遠い距離から疑いはじめる。それはどこかに傾いているわけではないし、バラバラになってもいない。それは高く聳え立っている。けれどすぐに倒壊するだろう。それは取り壊しがマークされていて、その日も決まっている。ビルの真下のエリアは安全のために立ち退き、カウントダウンが始まる。君はビルの支柱の足元に爆薬が仕掛けられるのを見て、爆発のかすかな連発が聞こえてくる。灰が飛び交い、コンクリートが宙を舞う。まずはビルの最上部がゆっくりと崩れていく。まるで途中でポーズするように。数秒後には、かつて誇りに思われた建物が直に倒壊する。一度に12階も、ただただ崩壊を飲み込んでいく。こういう取り壊しを見ていると、それらがなんて秩序立っていて、整頓されているか驚きだよ。

TNTがちょうど良い数仕掛けられたこういう建物は、正確に、予想通りに崩れていくんだ。どうやって始まるか分かっているし、次に何が起こるか、途中で何が起こるかも、どういう風に全て片付くのかも分かっている。屑と砂粒、そしてたっぷりのノスタルジアが溢れている。ただのビルなのに。人々にも同じことが起こる...まあゴミ収集車の中に山の様に積まれて、砕かれ、新たな石として復活し、また次のプロジェクトに使われる、なんてことはないけど。ビルは壊すことができるし、それでもう見つめる建物がなくなったわけだから、空っぽの風景やもっと違った風景に目を凝らすことができる。でもそれが人の場合だったら、「あいつらがまた帰ってきたり、思っても見なかった時に、またどこかでばったり会うかもしれない」なんていう文句ったらしい考えが常に思い浮かんでしまう。あいつらはどこにもいかないし、君も同じようにどこにもいかない。ただもう同じキッチンと家具をシェアしていないだけ。君の口はまだ去っていったあいつらの口を覚えているし、そういうことは中々忘れられないもんだ。彼らは和解できない、けれど人々はよくビルと同じように崩れていく。終わりの始まりは何か静かなもので、でもそこには、ゆっくりとした倒壊があり、感情の捌け口があり、頭はくらくらする。

The Swell Seasonのバンドメンバー、そして映画「Once」のスターであるMarketa Irglovaはそれほど納得することはない。そして、倒壊のあとがもっとも懲罰的だということも。それが人々をかなり深く痛みつける部分なのだ。彼女のデビューソロアルバム"Anar"を構成するピアノ・バラードは、煙と塵が空気中に完璧になじみ、感情が不気味なほど落ち着いたときに(特に倒壊が起こった後は)、ハートがどこにあるか感動的に指し示している。身体がゴツンと地上にぶつかった痛みをまだ感じているし、鳴り響く空しさが耳を聞こえなくしている。アルバムに収録の、一番残酷で、しかし変革の可能性を感じさせる"For Old Time's Sake"という曲でIrglovaはこう歌う、

「強く抱いて、でも今夜だけ/でも前みたいにギュッとしないで/もうそんなに親しい関係じゃないんだから/少なくともそんな関係じゃない/私達は日に日に離れていった/どうなるか知るためにただ待っていた/またカジュアルに愛し合えたら/私はいつもあなたの良い友達だった/いつもあなたのそばにいてあげたの」

切り刻み、噛み付き、それは一人の女性が闇の中で手探りに、彼女が必要な答えを探しているのだ。結論も終結も、多分絶対に来ないだろうから。それはただ前とは全く違った方法で時が過ぎて行くということ。そうこれからは。

Marketa Irglova Official Website
The Swell Season Debut Daytrotter Session

試聴・ダウンロード(有料)

セットリスト

  1. Welcome to Daytrotter
  2. For Old Time's Sake
  3. Go Back
  4. Only In Your Head
  5. Time



2012年1月2日月曜日

Nat Baldwin


Nights When The House Talks To Us

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi































今宵は家がかなり静かだ。赤ワインはグラスにちょうど良いくらい入っている。満タン過ぎず、少なすぎもしない。今朝、枯葉が芝生の濡れた毛布の上で群がっていて、片付けねばならなかったので、僕らはいくらかゴミ袋を取り出して葉っぱを一箇所に集めた。それを氷の様に冷たくて水が滴る塊にしてから、最後の休息場所へ送るのだ。まあ、少なくても厄介ごとが一つ減ったってことだ。大事なのはそこだけ。サンクスギビングの前の今日、夜がどんどん深くなるにつれて、気温は急速に下がり、それは必要以上に寒さを強調するような夜だった。充分な量の(寒さの)要因のコンビネーションと共に、口から去っていく温かい空気は、不安定な寒さを捕まえて、広大な厚さの白い雲に変わっていった。単に白い息が弱々しく、軽々と広がっていくのではない。それはまるで僕らが300ページもの言葉や文章が詰まった長編小説を吐き出しているみたいなのだ。それは濃厚で、まるで羽を構えて地上から飛び立とうと努力している巨大なカラスが、僕らの口の中から出て行くみたいだ。こんな夜に君は「家がいつ僕に話しかけてくるんだろう」と思う。君の前にここに住んでいた人はどんな人達だったのか語り始めるんだろうか。いや、多分「前の人たちは一回も料理したことがないし、君みたいに寝たこともないんだよ(だって、あの人たちはベッドを違う方向に向けていたけど、君達は同じ方向に向き合わせているだろ)。芝生は君達よりも綺麗に整えてたし、彼らだったら朝食用ヌックの絵の具の剥げたところもすぐに直しちゃうだろう。君は家の声が一回も実は聞こえてこないのに驚き、ついに家がどれほど君に失望しているか教えられる。いや、多分こいつはなんでも受け入れるのが好きなだけなのかもしれない。木はもう年をとりすぎて何も気にしなくなった。なるようになるのさ、ってね。

こんな夜に僕はもしNat Baldwinがかなり似ているような物事を考えたり、感じたりしているのかなって不思議になる。外で誰かの咳が聞こえるのかもしれないし、ベースメントで変な物音がするのかもしれない。それか狸が窓の傍にある松の木で追いかけっこをして、屋根に飛び降り、松の木の反対側に乗り移っているのかもしれない。シンプルに、僕らに乗り移させる音なのかもしれない。僕らに「君はうまくやってるよ」と言い聞かせたり、「いや全然ダメだね」と言い聞かせる音。大抵はこんな考えを理由付けて、どこか真ん中にたどり着くことが出来る。その場所で僕らはNat Baldwinが最新アルバム"People Changes"でも言及するような「激しく酔いもさめるようなトーン」を聴くことになるのだ。彼は自分と失う感覚と自分を発見する感覚を同時に君に感じさせてくれるようなアーティストだ。その過程の最後でどんな風に感じるのか知っている人間なのだ。彼のダブルベースは深く掘り下がり、僕らは努力すれば成功の可能性があると感じさせる、運命的な感情を放出する。まるで僕らを追い詰める物事に有利な一手を与えることが出来るみたいに。

彼は自分のために作り出したスペースを楽しむような人間だ。ランニング・シューズを放り投げて、全てから逃げ出そうとして、何事からも逃げ出せなくなっている。嫌でも思い浮かぶ考えに僕らはいつも悩まされて、それを止めるミュートボタンはどこにも無い。それが誰かを執筆に走らせる。今人生はどうなのか説明しながら、決まりきった「最近どうなの?」という質問に

「兄弟と遊んで、NBAの試合に夢中になって、喫煙を止めたり始めたり、二回も同じ間違いをおかして、ビールを飲んで、ベーコンを食べt、Lewis Nordanの"The Sharp-Shooter Blues"を呼んで、"Weights"のPVのアイディアを考えて、大学の舞踏会を楽しみにしていて、Cecil Taylorを聴いて、暖炉の傍に座って、オートミールを食べすぎて、毎週土曜日のJumpin' Jayで開催される牡蠣1ドルデイを懐かしく思って、毎日そのことを考えていて、おばあちゃんの80歳の誕生日を計画しているし、デクスターっていう名前の年老いた犬と遊んで、カウンターの後ろの女の事を妄想していて、きっと彼女達の事をもっと良く知ったら妄想とずれてがっかりするだろうなって恐いけど、ツアーも計画しているし、音楽が最近また楽しいし、バイクに乗りながら、走れてればいいのにって考えてて、Runner's Worldっていう雑誌を読んで、昼寝をもっととりたいし、そのあとチリももっと食べたいし、Kurt Vileを聴いたりしてる。君もうまくやってるといいけど。」

把握できる以上にとりとめがなく、徹底的。僕らってかなりおかしいのかなってまだ思っちゃうけど、それがポイントじゃない??

Nat Baldwin Official Site
試聴・ダウンロード(有料)
PitchforkのPeople Changesディスク・レビュー(対訳)


セットリスト

1Welcome to Daytrotter
2Lifted
3The Same Thing
4Let My Spirit Rise
5In The Hollows

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...