2011年12月18日日曜日

The Jon Spencer Blues Explosion


Skuzzy, Dirty, Perfect Irrelevant Relevance

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Matt Oliver, Mastered by Sam Patlove, Translated by Teshi




























Black Keysを嫌いになる理由なんてある?僕らは色んな良い理由で、彼らにクレイジーになっているんだ。彼ダーティーだし、オハイオ出身にしては結構セクシーだし、超やんちゃでクール。でも彼らのことはそこで置いといて、彼らの前に現れた、昔からのいやらしくてダーティーでエロいバンドのことを紹介しようじゃないか。Black Keysよりも、Jon SpencerとBlues Explosionを愛さない理由なんて見つからない。このミュージシャンたちは偽りの無い「金欠バンド」の音を匂わせ、ウィスキーとビールを活力にして、一般的な社会からは希望も無く疎外されている。そんなの何も気にならないよ。だから何だって言うの。

Spencerは何十年間も曲と毎日を燃やし、溶かし続け、決して完結しない歌を書いてきた。それらは歌のスケッチで、何度も変わることがある。演奏するたびに新たな火種と爆発を生み出すことが予測されているからだ。君を部屋の後ろで壁に磔にし、君に傷跡をつけ、髪の毛を全て燃やしてしまうだろう。でも君はそれを期待している。近くにある生ビールが入ったプラスチックのコップを手にして、(燃える)自分の頭に全てぶちまけるのだ。君は天上を見上げて、換気扇を探しだす。君は換気扇に近づくための椅子を見つけ出して、羽根に向かってジャンプ。回って頭がくらくらして、グリズリーベアか誰か、夜の九時以前は何が起こってるか知らない様な人の背中に飛び乗るまで羽根に捕まり続ける。でもそんな人いらないだろう?

Jon Spencerはヒーローの存在を信じなかったり、従来型のヒーローをほとんど必要としない人々全員のヒーローなのだ。そう、君の才能が開花して、よい父親になり幸せになる所を見たい人々の。彼は君にもっとコミックブックに触れて欲しい、何日間もシャワーを浴びることを忘れていて欲しいと思っている。頭に思い浮かんだ最初のことを口に出すんだ。それが意味を成そうと成さなかろうと。でも出来たら、彼らはクソクレイジーな連中だって願っていようじゃないか。ワニがビーフジャーキーを食べている所を話題にしたり、僕らが狼狽して、ばかばかしくなれる方法を探し出したりして、お説教をかましてやろうじゃないか。

Spencerはマニアックだ。彼はまるで、今にもボトルやビリヤードのキューを取り出し、頭の上にぶつけて、それが映画みたいに綺麗に勝ち割れるみたいに聴こえる。そしてそれは良い感じの夜なのだ。いや、最高の夜だね。そんなことが起こってから、彼らは夜のフットノートになる。何故かと言うと、その大混雑に巻き込まれた人々はナイトキャップを忘れないからだ。一つ先のブロックにある違うバーで、腕を友達の肩に回しながらクィっと一杯。違いなんて関係ない。Blues Explosionの楽曲は君に心をセカセカさせて、強制的で、ほとんど活発にむらがない。彼らの音はもっと若い人たちの肺から絞り出される様な音に聴こえる。まだ疲れきっていなかったり、年をとって精神や身体が衰え、生き方が変わることを断固拒否する様な男たちの様に。まだまだ酒場でたむろするためだけの時間が必要。自分の尻尾を追いかけて、酒をがぶ飲みして、友達と涙を浮かべたりする時間がね。ダーティーなファンが絶対に終わらないことを願っている。

The Jon Spencer Blues Explosion Official Site

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セットリスト

Welcome to Daytrotter
Get Your Pants On
Shirt Jac
My War
No Reservations
Texas Blues

2011年12月15日木曜日

Matt Bauer


Sparseness In The Gloaming

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi

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このエッセイを書き始める3日前にMatt Bauerが自身のウェブサイトに写真を載せていて、それは彼の作る音楽を一言たりとも説明できるようなものではなかった。それは写真の中の写真だった。掲げられている写真は何十年も前の白黒のポートレイト写真だった。そこには過ぎ去った日々の感傷と感動がフルに詰め込まれていた。写真の中の息を呑むほど美しい若い女性は彼の母親で、家宝として受け継がれていくような大切な写真だ。そういうものは最も純粋な時間の一部を凍結している。一度撮られてから何年後も後に見返して、「そこにいる人はその時は何も考えてなかったんだから」なんていうコメントがされるのだ。それが暗示するのは、その人物が撮影日にレンズの奥を見つめていた時ほど、物事は当初考えていたよりも上手くいかなかったってことだ。ひとつなぎに並んだ馬の集団よりも力強く、何千もの抱擁よりも温かい微笑みを見せていた時ほど。

彼の母親は太陽に目を向けていて、そのせいで彼女の目は少し閉じてしまっている。でも見てわかるように、彼女の顔は幸せそうだ。まさにその瞬間、彼女は幸せで幸せで仕方なかった。人生は最高で、その幸せを揺るすような理由も疑いもどこにも見つからなかった。Bauerはその写真を手に持っていて、角っこに彼の親指が覗かせている。おなじページに、机の上に乗っている死んだ青いカケスと彼の裸足のつま先が載った写真を見ることができる。彼が自身のサイトに選んで載せた写真は、言葉が出来る以上に思い出の欠片を説明しているように思える。その思い出たちが実際にスクリーンの中から息をして、つやの消えたボロボロの紙を吹き飛ばしているのだ。彼の母親は伝えたいことがたくさんある。言葉など必要ない。僕らは彼女があの写真撮影の日から幸せな人生を過ごしたのか、気になっている。彼女の望んだように行ったのだろうか?彼女が才能に溢れた息子を授かったのは僕らも知っているし、多くの人にとってそれ以上に気にかけるものはないのだ。

多分それが彼女をその先も美しく、幸せにしたのだろう。Bauerは作家としてそういう「消滅することを許さない」瞬間に焦点を置いている。そういう瞬間は続いてゆき、君を自分が認めたくなくなるほど長い間心配させることになる。君はそんな物語をもっと聴きたい。もっと他の話も...彼らのまばらな、黄昏の中でのダンスも魅力的だからだ。彼はそんな人々や、場所、夜の中に消えて行く物事について歌う。彼の興味あることはほとんど夜の帳の中で巻き起こっているように感じる。闇の中で僕らは一人じゃないと感じているけれど、核心はもてない。僕らはそこに何がいるか知りたい。もっと。何が見えない闇の中を切り裂いて、僕らの肌を擦っているのか知りたい。どうもそれは僕らの一部みたいだ。だから僕らは懇願する。彼も同じように懇願する。

Matt Bauer Official Site

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セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Morning Stars
  3. Tics 1979
  4. Poplar Trees
  5. Blacklight Horses
  6. Waiting For Your Shadow

TICS 1979 by Matt Bauer from matt bauer on Vimeo.

2011年12月12日月曜日

Ocote Soul Sounds


Feeling The Effects Of The Impulses

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered and mastered by Matt Oliver, Translated by Teshi


























ボンドガールを手に入れる方法って言ったら--中でも良い感じのヤツで、超セクシーな日焼け跡が完璧な場所に残っていて、スキー帽被っても、何を装着しても、何してもナチュラルなタイプ--Ocote Soul Soundsを再生することだ。Antibalasの創立者で、OcoteのリーダーMartin Pernaの誘惑レベルを最高潮にしてやれば、君も同じように誰かを誘惑するレベルが絶頂に達するはずだ。"Aqua Sentz", "Pathways"、そして"Pirata"という曲をかければ、君はまるで自分がトロピカルアイランドにテレポーテーションしたような気分になる。目の前の最も豪華な食べ物と飲み物は全部君のもの。食べてもいいよ。だから君はガツガツ食べる。目の前に突然現れたベッドシーツには縫い目がしっかりついていて、文句なしの代物。だから君はそれにくるまることにする。君の周りの女性達はみんなエキゾチックで挑発的な目とスラッとした脚をしている。みんなまるで君のことをターゲットにしているみたいに、君をじっと見つめている。多分君のベッドシーツが自慢してる綺麗な縫い目のことを耳にしたのかもしれないな。君と一緒に寝転がるのも嫌じゃないみたいだし。それで君の手腕を自分で確かめたいんだろうね。

Ocote Soul Soundsをほんのちょっとだけ聴けば、「遅くなる前に外に"DO NOT DISTURB(入室禁止)”のサインをかけとかなきゃ」と考えるはずだ。サックスソロのメロディーは絶頂の時に聞こえてくる様なソロだし。そのサウンドはゼーゼー言いながら悶えている。ちょっと君みたいにね。そう、彼らの曲は肉欲が胸打つ歌なのだ。衝動の効果を感じながら、自分の体が欲望に任せて動けるようにに解放させてあげる。それがなんであろうと、好きなだけずっと。そう、彼らの曲は体に挑発的なダンスを踊らせる部位からの情熱的なコールなのだ。身体に身体が出来る事をさせてあげる。でもばっちりのそのタイミングが来るまではじっと待つ。彼らの曲は抑制が解放され、もはや自制心が無くなったときの、欲望のあるままの姿なのだ。君はとにかくラムで出来たパンチを飲んで今が何時かも忘れる事にする--いまどこにいるんだろ--ここは君が望んだ時にだけ太陽が沈む場所だよ。

Octe Soul Sounds Official Site

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セットリスト



  1. Welcome to Daytrotter
  2. Pirata
  3. Pathways
  4. Agua Santa
  5. Primavera



Liturgy


Here For The End Blast

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Patrick Stolley, Translated by Teshi

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太陽はおそらく地球から93,000,000マイルほど離れていて、僕らも太陽とはそれくらい遠い距離でいたいと思っている。太陽は常に軌道やなんやらに乗って回っているけれど、重要なのは充分な距離を保つってことなんだ。93,000,000マイルは完璧な距離に思えてきた。92,000,000マイルの遠さでも、まあ結構な距離だけど、丸々1,000,000分は近づいているってことだから、僕らの安心レベルにはかなりの衝撃を与えるわけだ。いや、それは僕が勝手にそう考えているだけかもしれない。それが起こるって可能性にビクビクしちゃってさ。どっちにしろ言いたいのは、人類のために太陽を今ある場所に留めておこうぜ、って事。Liturgyの最新作"Aesthethica"を聴き始めると、何かが心の安心レベルを脅かしている気分になる。今までに一度もそんな風に脅かされた事が無かったみたいに。何分か前に太陽は、自らの存在場所に腰を据えていて、僕らの体は充分暑くなった。それか、成長に最適な気温を保っていたのだ。氷を溶かすような暑さでもなく、凍死するほどの寒さでもない。突然、最初のGreg Foxのドラムがカタカタと突き進み、熱気を出すブラックメタルギターのサウンドの波で洗い流された時、僕らは太陽が僕らに突進してくる所を目撃し、体は固まってしまった。どんどん太陽はその巨大な姿を現し始め、熱は増すばかり。僕らはみんなやられてしまう。それは太陽がゴムの先から、僕らの前から去って行ってしまうのを目撃するのと同じくらい恐ろしい景色だろう。ついに太陽の弾力せいも終わりを迎えたのだ。次に帰ってくるときは、加速した力を持っていて、僕らはただただアヒルの様に座っているしかなかない。

Liturgyは僕らに切迫した感覚を憶えさせる。たとえ全ての生き物を抹消するものが差し迫ってきていても、このブルックリンのバンドは僕らの心の中のパンデモニウムのようなものを呼び起こしたりせずに、僕らは「長い長い終末が短いスパンでやってくる」事を前から知っていたような気分を期待することになる。このバンドと彼らの音楽は懲罰なのだ。でもそんなにひどくは無い。Hunter Hunt-Hendrixはバンドの『ボーカリスト』と呼ばれているけれど、それ以外に演奏中彼がやっている事を説明できないからなのだ。彼のサウンドはいきなりつねられた時に飛び出る音。(驚きで)3、4秒間は口から出てこないような、そういう音だ。それは犬が尻尾の先っちょを踏まれた時の音だ。驚きのキャンっていう声。それは純粋なボルテージ。少しずつ流れ出るわけではなく、重圧や消防ホースから勢い良く飛び出るものなのだ。

ギタリストのBernard GannとベーシストのTyler Dusenburyによって完成されるこのバンドは君に、一番近いお隣の州にロードとリップに出ようと思わせる。そこで自分の街では違法なカラフルな爆発物をたくさん購入し、どでかいグランドフィナーレにむけて打ち上げるのだ。君はそれを全て高速に進む太陽に向けて直に発射したくなる。多分導火線を地面に置いておくだけで、僕らに降りかかる迫り来る太陽の熱気で自ら爆発するだろう。ロケットがでたらめに飛び回って、人々の指や耳、顔まで吹き飛ばすんだろう。僕らはそこにいてその景色を見ていたいのだ。うん、多分もうその準備は出来てるから。

Thrill Jockey Records

試聴・ダウンロード(月々$2のメンバー登録が必要です)

セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Glory Bronze
  3. Sun of Light
  4. Generation
  5. High Gold




2011年12月9日金曜日

Big Troubles


All Our Own, At Our Discretion

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi































Big Troublesのアルバム"Romantic Comedy"で語られる恋愛関係は、僕らが過去に置いて来たような物語集だ。僕らはその物語を自分達が今現在経験している恋愛と照らし合わせて考えることなんかできない。結構年もとったし、「簡単に捨てられる」って思われるような存在にもなってしまったし。もう違った領域の物語にも思えてきた。僕らがもうとっくに忘れてしまっていて、すぐにでも消し去りたいって思ってたことだから。いや、そういう過去の恋愛がまだ僕らを腹立たせて、失望、そして悲しみを感じさせるってわけじゃないんだ。それでも僕らの最も拙い、あっという間に効果が切れるクスリとなるのだ。僕らはそういう感情が作用していく所を、特に目立たないダイナーやレストランで見かける。誰も知らないような街で、あるいは誰もが訪れるような街で。隣には世間的には美しいって言われてるけど、すぐに忘れられそうな顔のアイツがいる。

僕らの恋愛は終わって、彼女は立ち上がって出て行った。マイルドに傷つきながら。でも彼女はそんなに感傷には浸らない。その間に僕は彼女が残したフライドポテトを、ケチャップをすこし皿に載せてからつまむことにした。とりあえず残り物は出さない様にする。僕の心はほとんど乱れなかった。ほんのちょっぴりだけだ。他の奴らは(多分このニュージャージー出身のバンドメンバーは)素っ気となくお会計を済まして、「とっとと家へ帰るぞ」と口笛を吹くだろう。そしてマリファナをやりながら、何百回も見た映画をまた繰り返し再生するのだ。きっとちょっと不機嫌で、考え込むだろうけど、朝には全てクリアになって、「まあ仕方なかったんだ」と理解するのだろう。「長い人生のたったの一ページなんだし、大丈夫だろう」って。きっとこれから新しいことがどんどん起こって、また落書きするための白いページが現われるはずだ。また新たな愛を埋め込むためのページが。人が人に接する時の時に不合理な態度に対する評価なのかもしれない。情け無い嫉妬心と変に固執的になる傾向。それがどんな希望的な恋愛の中にも沈み込むのだから。

Big Troublesの二人のシンガー、Alex CraigとIan Drennanはこういうとても霞がかかったような愛の歌を頭に思い浮かべる。それと対処するには生まれたままの傍観者にならなきゃだめだな、って思わせるような愛。たとえ彼らがこのセッションでGo-Betweenersのカバー"Cachelor Kisses"を披露していても、「きっと男は独りで生きて行くしかないんだよ。キスとセックスを掴み取り、目の前に降りてきたその場しのぎの交際をしたりさ。」と言っているようだ。月の灯りがしっかり照らしていればいいのだ。もしその方法で良いんだったら、多分そうしたほうが安全で、心の痛みもあまりないかも。CraigとDrennanはそういう(多分女の子たちの事だと思う)手に鉤をつけた奴らのことを歌い、事態は速いスピードでとんでもなくグッチャグチャになっていく。

「ペテン師とつるんだら、傷つくさ」

と彼らは注意するけど、そんなこと言われたら試してみたくなるじゃないか。ロマンスにつきものの喜劇っぽいビートを感じたくなるじゃないか。センチメンタルなことよりもさ。「アーケイドの灯りがぶら下がって」いて、そこに勝者はほとんどいない。引き分け試合だけだ。そして僕らは自分達が男なのか、おはじきなのか不思議に思い始める。とりあえず次の障害物に突き当たるまで坂を転がり続けて、底に辿り着くまでレースするのだ。
Big Troubles Official Site

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セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Bachelor Kisses
  3. Somebody's Baby
  4. Misery
  5. Motorcycle





2011年12月8日木曜日

Mayer Hawthorne


Could Be A Doctor In The House

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Jon Ashley, Translated by Teshi

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ねえ、顔色が悪いけど大丈夫?まるでゴミ溜めに落とされたみたいに浮かない顔してるじゃないか。何か僕らにできることはない?遠慮なく何でも言ってくれよ。できれば助けになりたいんだ。え?どうすることもできないって?そんなはずないだろ?言わせてもらうけどさ、それが間違いだって証明できるんだ。僕らは今この手の中に、誰も見たこと無い量の膨大な太陽の光よりも強大でパワフルなモノを手に入れたんだから。こいつは君にばっちり効果があるよ。保障する。そんな騙されたような顔しないでよ。いいからやってごらん。ほら、もうさっきよりも顔色良くなった。気分はどうなの?ああ、そりゃ良かった!彼の名前はMayer Hawthorneって言うんだ。とにかく彼を離さないでいてくれよ。いや、違うよ、彼は医者じゃないよ。でも医者じゃないって考えるほうが難しいよね。彼は効果てきめんで、しかも信用できる奴なんだ。君が手放したりしなければ、彼はずっと君に素敵な気分を味あわせてくれるよ。彼の素晴らしさっていったら、底なしなんだ。君は彼に依存しちゃうけど、望んだ結果を手に入れられるのだから、それも気にしないようになる。何時も彼の最新作"How Do You Do?"を聴かなきゃいけなくなる。まさかまた落ち込んでしまった時に備えて、ね。

ミシガン州のデトロイトで生まれ育ったモータウンを愛してやまないソウルシンガー(最近Detroit Lion(アメフトチーム)主催、サンクスギビング記念試合のハーフタイムショーをニッケルバックに代わって執り行って、それがRolline Stonesのウェブサイトで放映された※)はBerry GordyとSmokey Robinsonが町を仕切っていた時に築かれた、モーターシティの音楽的伝統を完璧に受け継いでいた。彼は自身がレトロ寄りなことを隠そうとせず、そのため全ての楽曲がクラシックのように聞こえる。どこかで昔のヒット曲を抜き出してきて、埃を払って、また新しくパフォーマンスするのだ。スイートなタイミングで鳴り響くホーンと厚く張られたハーモニーは、これ以上望むことは出来ないほど完璧な仕上がりだ。彼はクソキャッチーなフックを書き、恋愛の出会いと別れを僕らに提供する。今までもこれからも、曲の中で様々なタイプの女性を描き、彼女達に恋焦がれている。でも毎回違う方法で挑戦し、違った結果が伴っているのだけれど。

"The Walk"は、豊かな髪と柔らかい唇をした女性について歌っている。でも彼女はHawthorneを騙しているんだ。リッチな髪の毛と柔らかい唇の女達っていつもこんな感じじゃない?彼女は出会った時には思っても見なかった姿を見せはじめた。彼は歌う

「君と会った瞬間に素敵だなって思ったんだ/ほんとに綺麗/でも君のクソムカつく態度が僕の考えを変えてしまったよ/そうさ、ビッチめ/ほらベイビー、その長い足をコツコツさせてさ、僕の人生からいなくなってしまえよ」

この火の中に冷たい水を注ぐような新たな事実が発覚した後でさえ、この曲はまるでなにか祝杯をあげているように聞こえるのだ。これは君に「もやもやが覚めて、また楽しんでいこうじゃないか」と思わせる曲だ。楽しみ、って長く忘れていたことだろう? "How Do You Do"は最初から最後までこのテンションが続き、顔にはえくぼが浮かび、口の中はキャンディの甘さで一杯になる。

※このDetroit LionsのハーフタイムショーはもともとNickelbackが予定されていたけれど、カナダ人に任せていいもんか、と大クレームが発生し、彼に取って代わったそうです。

Mayer Hawthorne Official Website

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セットリスト



  1. A Long Time
  2. Dreaming
  3. No Strings
  4. The Walk



2011年12月6日火曜日

Joan As Police Woman


Encouraging The Shadows And Clouds Of Smoke

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi





























それはまるでJoan As Police WomanのJoan Wasserが彼女の身に降りかかった事態や、彼女が引き起こした事態と反目しあっているようだ。彼女の最新作"The Deep Field"を聴くと、彼女が一つの方向にかなり傾いているようで、今までと違って争いに身を転じてはいないようだ。だからといって何か彼女にとって楽になったわけではないけど。彼女はまだ宇宙レベルでストレスを感じていて、まだ誰も彼女に効く治療薬を見つけてはいない。君はただ口をつむって、探し集めた迷信と欠点を見つめ直すことしかできない。そして、「それはヴードューや、細かく入り組んだクロスハッチパターンの中に運命付けられたもの」だという結論に辿り着く。しかし全ては物事が転がった方向に大きな原因がある。Wasserは目の前に現れた事態、あるいは同時に予期せず起こった事態に多きを重んじる。しかしそんなことを言ったら、彼女は「それ以上のものよ」と口論を始めることだろう。

そこに偶然の出来事などないが、慎重に組み立てられた魔術のような物質が登場する。彼女は人間と夜から生まれる魔術を信じているのだ。彼女は言葉にせずとも、人から人に飛び回る火花や静電気の事を考えている。彼女はそれを見上げて、空を引き裂く眩い光の音に耳を澄ませる。彼女はそのような偶然起こる状況の中にあらゆる意味を見出し、ほとんどの場合、その「意味」っていうのは雲が掛かっていて他の解釈にとられることがある。それでも、そういうアンビバレンスな物は同じように興味深いものなのだ。それは呪われたり人のひんしゅくを買うようなものではないけれど、そのままの露な姿で現れる--何にも携わってないようで、全てに関係しているように見える。一秒ごとに次に乗り移り、すぐに消えてしまうようなアイディアのように煙の中ににさっと去っていく。

彼女は自身の影がもつ蒸気と有害物質に惹かれている。彼女はまるでそれらが彼女の体の奥底に潜んでいて、彼女に語りかけてくるかのように感じている。時にひそひそ声で、時にあたかも死人を起こそうとしているような口調で。彼女はそこに中々簡単に見ることが出来ない荒々しい騒動が巻き起こっていると暗示してみせた。僕らはその騒動に気付いているべきだし、きっとその騒動が僕らにも影響するって事を予期しておかなければならない。可能な限りあらゆる道を辿ってやってくる。いつでもどこでも彼らが好きな時にやってくる。もし彼らがそんな脱出路を通ってくるようであれば、血管も爆発したくなるもんだ。彼女は自身の中に自分だけのリヴァイアサンをがいると信じている。そして、彼女はきっと自身の魂をそのような伝説の存在、あるいはとても聖書的な海の怪物に受け渡してしまったんじゃないか、と僕らは考え始める。問題かどうかは置いておいて、それって地獄みたいなものだよね。それか守り神の一つなのかな。世間には物を触っただけで金に変える人々もいるくらいだから。彼女もそれを考えてる。彼女はそういう魔法をあらゆる場所で探して、何事にも触れようとするのだ。だから彼女は躾がなってないのかもしれない。でも今ここで彼女は魔法を作り出している。まるでその魔法は彼女が親密を保ち続け、また永遠に造詣が深い場所に直接繋がっているようだ。彼女は自身の影がどんどん大きくなるように仕向け、それがどうなるか想像し続ける。他の奴らも彼女みたいに影を扱ったらいいのに。
Joan as Police Woman Official Website

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セットリスト



  1. Welcome to Daytrotter
  2. Flash
  3. The Magic
  4. Chemmie
  5. Nervous



2011年12月4日日曜日

Tallahassee


All The Smoke That Lingers Is Tarnished Gold

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi
































ある朝、みんなでフレンチトーストを作ったんだけど、上手くいった。フレンチトーストで大失敗することなんてあんまりないけど、不注意になってしまうこともあるし。火を強くしすぎて、ホットプレートにある一切れの事を忘れてしまったりする。そうするとひどい勢いで焦げてしまう。それは良く起こることで、僕らは自分達の愚かさを呪うことになる。今朝は、そんな懸念もなく上手くいった。焼き加減もほぼ完璧。両サイド金色に輝いていて、そんなにフニャフニャじゃなくて、硬すぎでもない。ちょうど良いバター加減と、最後にシナモンでフィニッシュ。それでもキッチンも家の中も何かが焦げたような臭いがしてる。朝から晩まで、ドアを開けるたびにその臭いがしていた。まるで誰かが料理を大失敗したみたいに。

僕らが我慢しなくてはならなかったあのひどい臭いは他の煙の臭いを僕に思い起こさせた。特にボストンはマサチューセッツのバンドTallahasseが持ってくるような臭い。彼らがそれに気付いているか知らないけれど、元New England Patriotsの前衛※Brian Barthelmesがフロントを仕切るこの四人組は、僕らにある特定の物事が焦げる時の臭いを考えさせる。そのほとんどは予期せず起こるものだ。彼らはその臭いを引き起こそうとは殆ど思っていなかった。それでもBarthelmesが「事態はヒマラヤスギと煙のような臭いがする」と、素晴らしくミニマルな悲しみと喪失の歌("Jealous Hands")を歌うとき、僕らはあらゆる感覚が詰め込まれた、青とグレイの熨し上がるリボンのような排気の中に嫌でも入り込んでしまう。その煙は薪や蝋燭の煙だけではなく、それ以上のものから生まれている。僕らは煙がゆっくりと歓喜の中からうねり出てくるのを想像する。そう、それがほどけて行く時、みんながそれに巻き込まれる時に、僕らは終末の瞬間を感じ始めて、噴きあがる煙を止めるものはほとんど何も無いのだと気付く。



それはきっとBarthelmesが歌っていた燃えるスギの臭いなんだろう。誰も嫌うことが出来ない香り。その香りの中に喜びを感じてしまうからなんだろう。 それはオーバーヒートしたエンジンから出る、面倒くさそうな炎なんかではない。それは僕らが切望する香りなのだ。体の中に吸い込んで、何日も鼻の奥に残る香りを楽しむ。まるで心地の良い染みのように。煙は大体炎が消えてから生まれるものだ。炎が尽きた時に生まれるもので、煙は目の前から消えるまで、限定された時間でしか動き回ることが出来ない。たとえ目に見えなくなっても、僕らに何が起こったか思い起こさせるためにちょっとの間そこに留まるんだけど。

(ギタリストのScott Thompson、ベーシストShawn CarneyとドラマーのMatt Raskpfによって完成する)Tallahasseの殆どの楽曲が伝えようとしているのは、時間の限定性だ。彼らはそれについて特に具体的で、僕らに「誰にとっても時間は友達じゃないんだ」と思い出させてくれる。もしそう思ってるんだったら、僕らってかなり間抜けだよね。これ以上に望むことが出来ない最高の友達がいて、そういう期間限定の友達なんか欲しくなかったら、時間の存在も友達だよ。でも時は僕らを裏切り、ボコボコにして去っていく。僕らを切った後、煙だけ残して去っていく。その煙は服の繊維の中に潜み続けてずっと香り続ける。まるで僕らは煙以外に何も羽織っていないかのように。人は目の前から去っていくものだし、僕らもそれは同じ。僕らはほとんど弱まることの無い煙の跡を残し、ついに永遠に消散していく。時にそれはいつの間にかなくなるし、全然なくならないこともある。

※New England PatriotsはNFL(ナショナルフットボールリーグ)のチームの一つ。彼はアメフトの選手だったということです。

Tallahasse Official Site

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プレイリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Winter Trees
  3. Wooden Heart
  4. Time
  5. Jealous Hands


2011年12月2日金曜日

Other Lives


Nothing Like The Hard To Believe Better Days

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Naoko

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ここ最近私たちが吸収している風潮は誰にも貧困など想わせない。そんな素振や気持ちを装う必要はない。目の前にある、何ものっていないお皿がそのものだし、月末や、隔週の金曜日がそうだ。この国が大勢の人にとってうまく動いていた時代がかつてあった。若い物書きが世界大恐慌へのマジカルな思いを馳せ、彼等のキャラクターが、「日々小銭を稼ぐために骨の折れる労働を強いられながらも食い繋ぎ持ち家の権利の失効と戦うこと」を描くことが許されていた時代。そんなに遠くまで飛んでいかずとも全てが困難な場所はそこにある。本当に嫌な時代のその真ん中にいる。疲弊を知るためにキャラクターを創造しなくてもよい、しかし、私たちはそんな余裕もないのに、自ら発売同時にiPhoneを購入し、ケーブルテレビや高価なジーンズ無しではいられない。ここに、そしてオクラホマのスティルウォーターに、Other Livesというバンドのアルバムがある。今年の他の全ての素晴らしいレコードに真っ向勝負できる。芸術的な表現と深みと適時性と、極めて重要な、不朽さがある。"Tamer Animals"は、アルバムの中でも大きな怪物で、社会に置いてかれた不運続きの者達にとっては賛歌に感じるだろう。楽曲はあまり多くを求めない者の視点から来ているようだ。家族が食べていけるだけでいい、住む場所があって、そして雨を凌げる、手足を骨折しても治せて、素敵なクリスマスを過ごせる、そのための少しの余裕。がしかし、そういうことは全部次第に厳しくなってきている。

Jesse Tabishのストーリーの中の人は、運がよければ残り物やクズを頂ける、そしてもう祈ることも諦めている(様に見える)、なぜなら信仰とは、汚い言葉になってしまったからだ。何たるかの確信もないモノのためにここにうめき彷徨うために取り残された。多くのの曲、特にこの二回目のセッションで残してくれた3曲は、ひと気のない緩やかな丘にほっぽり出され、眠る場所もなく、対策を立てる補給所もなく、文字通り望み少ない、そんな風を感じさせる。増大する問題と、沸いてくる不安、そのプレッシャーを逃してくれるような開口バルブはない。ただ組まれてゆく、そこに動き続ける自由はある気がするが、それは人々を抑えるものも支えるものも何もないからだ。Tabishは"spouting hymns"を歌う。呪いか叱咤によって空に投げ出され、そこで見たことのない誰かに挑戦しているようだ、また何か信じられることを与えてくれ、と。一般論では、西に向かい続ければ太陽が当たり土も生活ももっと実のあるものだ。良い事も、良い日々も其処に確かにある、もう少し歩き続ければ、その先にワインや甘いハニーがあり、野菜を植えるガーデンがある。子供が走り回れる裏庭があり、そこで飼ったことのない犬を追いかけている。Tabishが歌う、

"Is there any way to get this weight off my skin/Find another one/Is there anyone get this writing off the wall/Find a new one,"(この重みを肌から剥ぎ取る術はないのか/もうひとつを探せ/この文字を壁から取り去る人はいないのか/新しいのを探せ)

この言葉は、突き抜けることの出来ないレンガの壁ほど硬いこと、逃れられないことに面している、そんな人の言葉だ。
Other Lives Debut Daytrotter Session
Other Lives Official Site
Wirewax

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セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Dust Bowl III
  3. Old Statues
  4. For 12




2011年12月1日木曜日

Dewi Sant


The Guy Who Buys Flowers

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi



























Dewi Santはみんなが話題にする人物の様に見える。彼の優しさと良心が彼の評価を先立たせて(それか後押し)しているのだ。彼が捧げる愛とロマンスの行いはしっかり人々の印象に残り、彼が天国の扉に立つ時に彼の行動はしっかり報われる。あたかも旅立ちの前にみんなの前で礼をするチャンスを彼に与えるように。そう、彼にスタンディングオベーションが捧げられるように。きっと誰もが思うことだけど。彼を振った女性達一人一人が、きっと彼と二人で築いたものを台無しにした自分達を懲らしめたいと思ってることだろう。

僕らは彼の良いところをたくさん挙げているけど、彼の書いた曲を聴いたら、「この人は絶対に人の心を砕くことが出来ないだろう」と感じるはずだ。僕らは彼が恋に破れて去っていくのを見て、悲しくなる。まるで自分達の問題の様に彼に同情する。彼の実生活の恋愛を知らずとして、僕らは彼が悪者の立場に立つなんて絶対に想像できないのだ。彼はこんな目にあうべきではなかった...にも関わらずそれは起きてしまったのだ。

彼は特に理由もなく花を良く買う人物。彼は君のためにドアをあけて、席に座る前に椅子を引いてくれる人物。彼は慈悲を求める人物。(君から)もっとソフトで、慈悲深い視線を求めている。彼は愛する人のためであれば何があってもいつでも会いに来てくれる。絶対にだ。彼は星の光の事を考えて、ただその光が美しい顔を横切って流れていくことだけを浮かべている。その光が手を取り合って真夜中に散歩する僕らをどうやって導いてくれるのだろう。"Dance Me To The End Of Love"という曲でSantはこう歌う

「燃えるようなバイオリンの響きと一緒に、君の美しさに合わせて僕を踊らせてくれないか/ダンスをしながら恐怖を乗り越えさせてくれよ/僕が安全に包まれるまで/オリーブの木の枝の様に僕を持ち上げてくれないか/家路を導く鳩になってくれ」

そして彼はこの曲のタイトルを口にする。でも君しっかり聞いていないと"Love"という言葉が"Thou"(古英語の"You")に聞こえてしまう(Dance me to the end of you)。でも、その文脈でも間違いでは無いように感じる。そうするともっとフォーマルな、シェイクスピアの色調の古英語のアピールが出てきて、それは「愛って何なの?」という謎を知る必要を反映するものになるだろう。それは相手がどうやって愛情を表現するか見つけ出すってこと。誰も見たり耳を澄ませたりしていない時、その愛情表現がどんなものなのか知るって事だ。そして同じ量の愛を受け止められる誰かを決めることだ。ミネソタ出身のSantと、彼のワルツ調のフォークソングには意気地の無さはどこにも無いし、彼はそれを変える気もない。


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セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Forks
  3. Untitled
  4. Lullaby

2011年11月29日火曜日

The Duke Spirit


The Topplings Won't Be Televised

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi
































きっとごちゃごちゃになる。そしてこれはThe Duke SpiritのリードシンガーのLiela Mossが見たかった光景とは本当に違うものだろう。でも君はこう思う。壮大な崩壊を目撃するのも彼女にとってなかなか楽しいこと何じゃないかって。彼女はきっと予期された崩壊を見て喜びを感じるのだろう。何か大きくて、でもあまり利用されていないような古いボロボロのビルの倒壊。彼女は危険地帯ギリギリの所まで近づいて、自前の折りたたみチェアと飲料を持ち込む。多分爆発の音を防ぐための耳栓も持ってきている。そして子供がサーカスに目を奪われるようにじっとビルが崩れていくのを見る。方策に従った爆発のスイッチが引かれ、かつては何にも屈することが無かった建物を、慎重に薙ぎ倒して行く。彼女はそこに座るか立つかして、手は汗ばんで、ビルがただの塵と屑に朽ち果てるのを待っている。

彼女は全てが縮小し、塵が少し落ち着いたときに歓声をあげる。立ち上がり、ついにマイクに手をとる。そしてDuke Spiritの曲をその時歌い始めるのだ。ギタリストのLuke FordとToby Butler、ドラマーのOliver BettsとベーシストMarc Sallisは彼女の興奮した状態を維持するために何をすればいいかしっかり分かっている。その高揚感とパワーは、建物が人間の力とTNT爆弾には、絶対に適うことができないと目撃したことで蓄えられたものだ。Mossは夜の雄たけびとバンパーがぶつかるうなり声に歓声をあげているようだ。間違った印象を与えないように言っておくけど、Duke Spiritは暴力的なバンドではないよ。でもそこには心の苦痛に対するダークな性癖があって、こういう問題は人をどこか味気の無いヘッドスペースに連れて行く。一度そこに入ったら中々出てこられない。Mossが夢見る衝突と堕落のほとんどは、人間の揺ぎ無い信仰から生まれるようなもの。そう、僕らがじっとして、人々が堕落していくのを見つめている感じ。建物の壁や角が爆発したらそこから何が出てくるんだろう。そして中身が彼らの足に落ちてきたら?上でよく仕事したつもりだったけど地上に戻ってきた。

Mossは歌う

「わたし、あなたとの愛は終わりに向かってるの?」

そしてそれは恐ろしい考えなどではない。ただ興味があるだけだ。彼女はこの発言によってどうなるか知りたくて仕方が無い。でもバックにはムーディーな音を鳴らすバンドがいる。彼女の後ろにいる観客達。彼女の足跡を追って、後ろからついて来る。

The Duke Spirit Official Site

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セットリスト

  1. Welcome to Daytrotter
  2. This Ship Was Built To Last
  3. Dog Roses
  4. The Step and the Walk
  5. Lassoo



2011年11月28日月曜日

Crooked Fingers


The Burns Over Time, Never Over

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Matt Oliver, Mastered by Sam Patlove, Translated by Teshi

































毎日の生活と、それぞれの一日の長さは常に人間の意志や気力よりも強力なものだ。時に僕らにとって上手く作用してくれるように願っているもの--時間の長さ、あるいは不可能なまでに延々と巻きつけられていくように感じる時の流れ--が僕らの手中に納まる代わりに、ただ僕らに反抗する。時が流れを調整し、落ち着かせるのを待っている。渦中の騒動に介入して、そのゴタゴタを落ち着かせてくれるのを待っている。充分な時間が経てば痛みや疼きを落ち着かせてくれると教えてもらった。修復と癒しが可能で、我慢強くその時を待っている人々に近い将来訪れる...らしいが、その根拠はない。それゆえに、それがつねに正しいとは限らないってことだ。

「もうちょっと待ってみれば?」なんて陳腐なことは言ってられない。僕ら全員にとって良いのは--僕らが願うべきなのは--記憶ってのはクソで、きつい仕事を全部やってくれるってことだ。まあ時間も関係しているだろうけど、でも本当は僕らが身に降り注いだ酷い事態を全部覚えていられるキャパシティを持ち得ていないだけだ。そのせいで僕らははっきりしない「均衡」に再び戻ることになるのだ。消え行く記憶の渦よ、ブラックアウトしてくれてありがとう!

Crooked FingersのEric Bachmannは何か起こってしまった事態の煉獄の中で、そして時の流れと、最終的にどんなものがが残されるか確かめるまでの長い間に曲を書く。みんなはただそれが少しの間だけ取り付かれた時、何が起こるか待っている。けれど、その間に痺れが体中を回り、それが強力な絶望感とミックスする。みんなそれは感じている。今すごく苦しい。周りを囲む孤独感は体を衰弱させるし、それ以上にそれを除く解決方法なんて何も無い--全て手の届かないところに行ってしまった--って感覚が彼の仲間達を苦しめる。君はCrooked Fingersの音楽の中を歩き回るまで、そんなに失意に落ちた男と女を見たことがなかった。彼らは狂ってしまったわけではない。ただどこに向かえば良いかわからないだけ。Bachmanは

「簡単に家に戻る方法なんてないのさ」

と言い、何度も何度もそれを証明してみせる。彼は正しいと思う。彼はとてもそれに関して詳しいみたいだし、だから僕らも湿りきった魂が漂う道を辿る事にする。音楽の中には君が過去関係を持った人々で溢れている。チラリとした視線、そして温かい抱擁。かつて愛した人やそこにいる人々は奇妙なことに、彼らがエーテルの中に迷い込む以前、数日前に関係を持った人々だ。Bachmannは空中で漂っている気分になっている。彼はたとえ時が驚くべき技を使って、彼らを消し去ろうとも、彼らがいつ爆発しても間違いないと知っている。彼はこう歌う

「絶対に彼らが君の事を忘れてしまったなんて思うなよ」


そこには時間の概念の理解や、幸せとの関連性に自己満足する人全てに、鞭を打つ要因が関わっている。Bachmannが再び

「君を大丈夫って感じさせるのは簡単なことじゃない」

と言い、その台詞は彼の顔が載った貨幣にプリントされることだろう。それは夕暮れから朝方にかけて続く闘い。全ての部分が間に埋め込まれたり、外に追い出されたりしている。それはただただ続いてゆく。すべての大変なことは静まることなく、それがBachmannのような声を生み出し、男にこんな歌詞を書かせるのだ。

「学べば学ぶほど痛い目にあうっていうけど、それで何の利益があるの?」

多分痛みにも感じる時間が必要なんだよ。
Crooked Fingers Official Site

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セットリスト



Welcome to Daytrotter
Lonesome Warrior
Don't Say A Word
Weary Arms
Broken Man


Crooked Fingers - Breaks in the Armor (Album Trailer) from Merge Records on Vimeo.

2011年11月26日土曜日

Surfer Blood


To All Of Those Who Have Ruined Us For A While

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Matt Oliver, Mastered by Sam Patlove, Translated by Teshi































あきれるくらい何度も「いかなる人も島ではない(No man's an island)」と言われてきた。まだみんな使う言葉だけれど、もうこの格言も本当に意味を持たなくなった。どうも「誰かに頼ったり、影響されたり、影響したりせずに生きる事は不可能」っていう考えが基になってるみたいで、だからって無人島でヤシの木と一人ボッチの島民になったほうがいいなんてとんでもない考え方だよね。こういう人たちはただ「孤島」のように感じてしまうだけなのだ。問題を一人で乗り越えなきゃいけないって感じてしまうだけなのだ。だからこんな狂気に満ちた思想の中で朽ち果ててしまって...それ以上に酷い結末ってないよ。

若かりしウェストパームビーチのバンドSurfer Bloodは自らの間違いで(それか誰かの間違いで)孤島に辿り着いてしまった人々の人生を探求する傾向がある。この人たちは酷い困難や心配事を引き起こす奴らに偶然出会ってしまうのだ。自分のことしか考えない奴らにばったり出くわしてしまって、彼らの態度がほかの人々にどう影響するか関係無しに孤島に向かって行く。バンドの最新作"Tarot Classics EP"を作り上げる登場人物たちは自分の足を銃で何度も打ち抜いて、その後他人の足にその銃口を向ける。一回、二回と続けて発砲し、弾薬を空にした後再び充填する。そして自分達の足が回復し、他人がその銃を発砲するのを待っている。そこにあるのは不信感と、不信感を持たれる嫌な奴の物語。彼らは何も考えずに生きてきて、その結果彼らに嫌悪を抱く人々の周りで生きるしかなくなってしまう。周りから可愛いがられる女の子達でさえも、言い寄ってくる男達の取り扱い方を間違えてしまったみたいだ。

人々はずっと干されっぱなし。人々は干されて酷い目にあっている。その二つは全く違ったシナリオだけれど、どうも同じ類のものに見える。"I'm Not Ready"という曲に登場するかつての友達(そう聞こえる)に対しほとんど愛に喪失を感じていないようだ。John Paul Pittsは歌う

「そうか、お前のくだらねえ事をちょっとの間だけ片付けてくれるような、新しい仲間を見つけたのか/まじでさ/遅かれ早かれ/お前がどんな人間かすぐにばれちまうぜ、絶対に/いつのまにかそれもお仕舞いさ」


PittsとギタリストのThomas Fekete、ベーシストKevin WilliamsとドラムスのTJ Schwartzはこのようなダークで陰がかかった精神の支配の中に清々しいものを発見した。Pittsのボーカルは豊かで声を震わす趣がある。その歌声が僕らに彼の優しさと親切心を失った人間に対する評価は正しいと思わせる。彼の心をむかむかさせるような物語--最低一人はひどく悪質に利用されている--の描写はNew York Timesの論説みたいに聞こえる。もし彼らが誰かを「クソマスかき野郎」なんて呼ぶ傾向があったら、の話だけど。そう、彼の描写は的確で適切なのだ。まるで恋愛関係の侵害が不快で不公平であったかのように。彼は"Drinking Problem"という曲でこう歌う

「評価基準なんていらない/恐れることなんてないんだ」


そして僕らは「何かがすぐ傍で牙を剥いて低床貨物車のケツをかじろうとしている」と感じるのにも理由があると信じ、だからこそバランスは保たれるのだ。

Surfer Blood Debut Daytrotter Session
Surfer Blood Official Site

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セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Island
  3. The Fast Song
  4. Fast Jabroni
  5. I'm Not Ready


2011年11月25日金曜日

The Antlers


Sick With The Stable Feelings

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered and mastered by Matt Oliver, Illustration based on a photograph by Sarah Buckley, Translated by Teshi





























この数年あのポンコツ自動車をどれだけ片付けてしまおうと思ったことか。あの弱々しい車は何年も昔に貰ったものなんだけど、なんで捨てないかというと、あいつが自ら故障するところを見たいからっていう嫌らしい理由があるからなんだ。僕らはあいつをこき使ってるし、新しい燃料なんか入れてやる気はまんざらない。嫌々オイルを交換してやるけど、どうしても仕方が無い時以外は絶対に換えてやらない。僕らはそこまで嫌なヤツにはなれないみたいだけど、車に対しての酷いほったらかし行為と壊れるところが見たいっていう少しの好奇心が、この限られた時間内での車の墓までのレースに僕らを引き込むものが何か知りたいっていう気持ちもある。

卒倒してくたばるだけの車なんか一度も人生で保有したことなんかなかった。もし全てうまくいったら、または全てが悪い方向に向かったら、これが初めての経験になるだろう。僕らにとって一番恐ろしいことと言ったら、こいつが僕らのしてきたあらゆる虐待の痕を見せ始めることだ。もちろん、ダッシュボードのエンジンライトはちゃんと明るくオレンジに光ってる。でも長年そうあり続けてきたし--うん、大体一年くらいは--まだ問題は何も起きてない。でも朝からずっと光り続けてて、一回始まったらずっと止まらないんだ。それ以上に何も望むことはできないね。

僕らがちょっと心配なのは、僕らがブレーキライトやストップライトをアイドリングでテストすると、しゃっくりを出してちょっとカタカタ音を立てて、一時的だけど気持ち悪くなるような揺れを起こすことだ。それはまるでこいつがついに最後の「グッバイ」をコホコホ咳き立てながら言っているようで、僕らはそこに閉じ込められて交通を塞き止めながら、嫌らしい視線とホーンを投げかけられる運命なのだ。でもあいつらにこんな事態が起こってくれてよかった。この車が揺れ動く感覚は君にあの寒気を...いや、あの痙攣を思い出させる。何か恐ろしいことが起きたことに感じる、あの震え。この感覚と同時にわきの下には汗をかいて、手もぬるぬるになる。軽い心臓発作が起きた時に感じるものだ。君は恐怖に体を縛り付けられ、自分が自分である感覚も殆ど分からなくなる。君は荒々しい狂気の中に滑り込んでしまって、そのまま氷水の中に叩きつけられた気分。あえぎ震える自分を引き抜くためだけに。

The Antlersも同じように君を震えさせる。三人の音楽家はこのようなセンセーションを最新作"Burst Apart"で再現してみせた。君を見世物用の檻に連れ込むのだ。見世物っていっても動物はいない。代わりに、衝突する感情の波--夢のようなリードシンガーPeter Silbermanのボーカルと、"Parentheses"で広がる祈りを捧げる蟷螂のようなDerby Cicciのシンセのジューっと鳴る音。そして深夜に何かを探るように鳴らされるドラマーMichael Lernerのドラミング--があり、それらはみな共生の方法を求め、お互い間を通り抜けながら肌を掻き毟り摩擦を起こしている。それぞれの感情はお互い競い合いながら、常に「あと一瞬で違うものに変化する」ように見える。今のところ、何も問題は無い。穏やかな心で落ち着いている。でも、僕らの危険な車みたいに、常に僕らに嫌な揺れを与える。次に何が起こるか恐怖にかられることになる。そして何も起こらないと、僕らは大きく息を吐く。酷く心配している時に限って何も起こらないんだから。僕らは気にしすぎなのだ。そのせいで血圧がロケットみたいに急上昇してしまうのだ。僕らはそんな自分達に嫌気が指しているけれど、でも「まあ心配するのも仕方ない」と普通なら思って。

君にも分かるだろうけど、Silbermanは心配性な人間だろう。この揺れは彼の心配が引き起こす感情だ。それを彼は颯爽としたスーツと光沢のあるスーツで飾り立てているけど、その下にはあの揺れが潜んでいる。たとえ軽くであろうが、僕らはそれを感じることができる。脅威的な感情の揺れだ。いつ最高レベルの揺れが来てもおかしくないし、僕らもそれは承知している


The Antlers Debut Daytrotter Session
The Antlers Official Site

セットリスト



  1. Welcome to Daytrotter
  2. No Widows
  3. Parentheses
  4. Rolled Together
  5. Hounds


2011年11月23日水曜日

Future Islands


The Damaged And Hopeful Lights

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Matt Oliver, Mastered by Sam Patlove, Translated by Teshi

Download































Future Islandsの面々はまだ吊り上げられていないシャンデリア。

僕が昨日の夕方Home Depot(ハードウェアストア)を歩き回っていた時にそう思った。ちょうど壊れてしまった照明設備の替えを買いに来ていたんだった。そこには二列か三列にわたって照明だけがずらっと並んでいた。シャンデリアがあったかはもう既に覚えてはいないけれど、少なからずいくつかの購入可能な照明はじっと見つめて何か思いを耽る価値があるものだった。多くの照明は特別な夜を盛り上げるチャンスは全くないような、特に面白みの無いタイプのもので、引き上げられて天井に設置されるタイプだった。多分人々はそんな照明の下でテレビを見るんだろうな。子供部屋で車のおもちゃや人形で遊ぶ子供達を照らしているのかもしれない。その下で人々はご飯を食べることになるんだろうけど、高級なチャイナの上に食事が載せられるなんて誰も思わない。それはプラスティックか紙製のプレートや、結婚式の引き出物とかでもらった40代になるまで使い続けるような皿なのだ。ディッシュウォッシャーに放りこんでも痛くないような、そんなやつ。ストアの中に並べられていた設置物の殆どは、物の価値や意味に恵まれてなどいない。ただ普通の家庭のよくある日常を手助けているだけなのだ。

それでもシャンデリアは、それがどこにあろうが、どこからやってこようが、僕らは一目置いてしまう。今日みたいにガラガラの店の中で、箱の中にどんな気持ちで納まってるんだろうとか考えてしまう。僕らはそんなシャンデリアに人格を与え、彼らの希望や願いを耳にすることになる。彼らは待ちながら何を考えているのだろうか。多分頭の中で彼らはどんな素晴らしい部屋に吊り下げられる運命なのかわかってるんだろうな。舞踏会や祝祭の場において着飾った重要で、麗しい人たちの上を浮かび、垂れ下がりながら照らし出すのだ。こういうシャンデリアはFuture IslandsのリードシンガーSamuel Herringが僕らの前に提示する人々にかなり似ている。この登場人物たちは圧倒的な感情と感覚で溢れている。まるで「疑い」と「要求」で爆発しそうになっているのだ。Herringがそれらの感情に「声」を与え、音に騒然さを作り出している。その音はまるで彼らが傷ついて、急な坂を転がりまわって辿り着いた先は尖った岩山で、体中血まみれになっているみたい。ダメージを受けても彼らはあの感覚を失ってはいない。「いいことはまだこれから起こるさ」ってね。

多分彼らは少し傷がついたシャンデリアなのかもしれない。薄暗くて、所々破損しているけど、いずれは美しい場所に辿り着くのだという信念は確固としたまま。HerringはまるでWild BeastsのHayden ThorpeとTom Waitsをミックスさせたような声で歌い、魅力的で回想的。散らばる感情の爆発と心の中の葛藤はその人物のリアリティに対し同様にそこに留まり続けるだろう。彼らはただ愛されたいだけ。なんとしてでも幸せになって、そのためならば何でも手に入れてやる。いつか自分達が値するのと同じくらいの幸せを手に入れる方法を見つけてやる。

Future Islands Official Site

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セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. On The Water
  3. The Inkwell
  4. Walking Through That Door
  5. In The Fall

2011年11月20日日曜日

O'Brother


Walking The Foggy Graveyards Where Bodies Lay

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi
































発売予定のデビューフルアルバム"Garden Window"に収録された4分30秒のO'Brotherの"Lay Down"は美しく肌を剥いたちっぽけな獣のような曲だ。どこも隠されていない。肌を震えさせたこの獣は何かに取り付いているのか、取り付かれてしまったかのどちらかだ。それを確かめるのはちょっと大変だ。両方とも正解に思えるから。まるで僕らは夢の中にいるみたい。朝起きた時にイメージが頭の中から振り払えないような冷たい夢。頭の中から夢の中で現れた本物のような感情が出て行かない。君はそれに囚われてしまって、胸の中で、血管の中でそのイメージが反響しながら巡り巡っている。止むことなく君の心に影響し続ける。道や廊下を歩いていると人々が君を引きとめて「何かあった?」と聞いてくる。君は彼らに「大丈夫、ちょっと疲れてるだけ。よく眠れなかったし、凄い奇妙な夢を見たせいで変な気分なんだ」と呟きながら答える。食欲もわかないし顔色も良くない。AtlantaはGeorgiaのバンドのリードシンガーTanner Merrittは確実に僕達がこの曲の熱をすぐに忘れてしまわないようする。いやこの曲だけじゃなくて、素晴らしいデビューアルバムの殆どの部分で。この作品はこの若きバンドがいつのまにか現在アメリカのバンドとして絶対目が離せない存在になった理由を証明している。

Merrittはこう歌う。

「疲れた手を地面につけておきなよ/血は君が縛りついた地面に栄養を与えるのだから/そこに僕は横たわるんだ」

そしてすぐに僕らの目の前にはあの頭を落とされた馬に載った騎士がシーンの中を通り過ぎていくのが見えるだろう。まるで南北戦争の墓地の地面に立っているみたい。それぞれの闘いに敗れた戦士達の名前が刻まれた墓。桃の木の下、野原や池のなかで血を流し、もう消えてしまった命によって水を赤く染めた。全て自由と愛国心のために。似たように冷たくて、同じ石から彫られた墓。ぎっしり詰め込まれたこの敷地には厚い霧がかかり、ここにいるのは僕達だけ。カラスが傍観者の様に木の上から見つめているこの場所で、僕らは全てを飲み込んだ。それはまるで僕らが魔法にかけられた庭、あるいは休息所への入門が許可されたようで、そこはきっと誰もが死んでいるか生きているかだろう。なにか有害な所にいる感じはしないけれど、ここにいてもいいのかと感じている。だから僕らは警戒心を鎮めず、なるべく落ち着いた気分でいようと努力している。O'Brotherはそれの手助けを大いにしてくれるし、確実に僕らが内省的で陰鬱なふらふら感をもったアンセミックで勢いの良い曲に体を横たわらせ、ショックを和らげるようにしてくれる。彼らは僕らの心を高揚させ続け、まるで僕らが有害的な方向に留まっているように思わせる。けれど同時に安全な気分にさせ、それは僕らが夢の中を歩いている時と同じような気分だ。そして僕らがギリギリのところにいて、まだ酷く緊張する可能性はあるけれど、自分たちのことは全然見失っていない。O'Brotherこそがぞっとさせるものの象徴。彼らこそが決意を持って心を振るわせる音楽の制作者で、君の胸の内を明かす次の出来事が何か君にずっと考えさせる。それが恐怖に体を強張らせるだけかもしれない。

O'Brother Official Site


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セットリスト

Welcome to Daytrotter
Ascension
Division of Man
Easy Talk (Open Your Mouth)
Lay Down



Thomas Dybdahl


The Creaks And Moans Of Your Own

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi






























Thomas Dybdahlは君に全て明白にして欲しがっている。彼は全てを引き剥がして、誰も見ていないところで暖炉の中に薪が燃えている時に、どのような種類の炎が出来上がるか確かめようとしている。僕らが彼と一緒に一晩過ごす部屋の中に休息のオプションはほとんど無ければいいと願っている。このノルウェー人がリリースした作品の一つの最初から終わりまで、彼は君に床梁の中から聞こえる軋みも嘆きも実は体のどこかから響いているのではないかと思わせる。そういう才能を持っているのだ。その音は膝と関節のうめき声。窓の外から聞こえるうなり声は空腹の痛切な叫び。いや孤独の叫びかもしれない。すべて君の心の闇の部分から発せられている。そういう体の部分は僕らが決して見ることがない血管、骨、そして筋肉と一緒に詰め込まれている。

Dybdahlは君がこの部屋、いや家を丸ごと取り除いてくれたら感謝することだろう。ここには思い出がつまっていて、あらゆる物、あらゆる人のことを君に思い起こさせる場所だ。彼は君が彼に対して細心の注意を払っている時にベストを出すことができる。彼は君に自分への注意以外を全て彼が気にしないで済む場所へ蒸発させて欲しいだけなのだ。もし彼がやっていることを済ませて去った後にそういうもの(思い出など)を取り戻したかったら、どうぞ取り戻してご覧なさい。ただ問題ごとになるかもよ。わざわざ回復させる価値も無いかもしれない。君は彼の曲に自分を失うことが出来る。催眠術にかかってしまうのだ。自分が思ってもみなかった行動を引き起こすのだ。君を絶対的な恋愛に落とすこともできる。彼の曲にはこういう文句が貼られているべきだね。

「女の子達、気をつけて。何があってもThomas Dybdahlとは目をあわせちゃいけないよ。」

彼は自分自身に、そして君に--誰であろうが--周りで起きている出来事に完璧に無関心であるべきだと思わせる。君は彼の言葉に耳を澄まし、彼の言葉だけが大事になる。彼はまるで君と彼がコテージのようなどこか遠いところで木々に囲まれて、それでも遠くからは見えるような所に孤独でいるような感覚にさせる。石製の暖炉からは厚い煙がプカプカ浮かんでいて、特に急ぎもせずに空に昇っていく。僕らはそのコテージの中にいて、そこは理想的な環境のように感じている。軋みと、木々の嘆きと、彼の言葉、ギター、そしてピアノといっしょにいる。そこには僕らだけしかいない。この後に僕らが出かけるときに寒さで白い息が出るけれど、耳に聞こえる音楽は暖かい。

Thomas Dybdahl Official Site



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セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Cecelia
  3. A Love Story
  4. Party Like It's 1929
  5. It's Always Been You



2011年11月18日金曜日

Carl Broemel


The Tired And Weary Parts Rest

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Matt Oliver, Mastered by Sam Patlove, translated by Teshi





























僕らが初めてCar Broemelの最新作"All Birds Say"を聴いたのは、David Vanderveldeと車の中でだった。ウィスコンシン州のEau ClaireにあるApril Baseスタジオで、Gayngsと信じられないくらいゴージャスな秋の午後にセッションの録音を終えたあと、アイオワまで戻る旅路で聴いたのだ。あらゆる種類のタバコ休憩とかドリンク休憩の時間があって、田舎に建つ断層のある階層構造の家のデックを出たところ、あるいはフロントにある芝生の上で友達とGlasserのメンバーとその時間を過ごした。遅くなるにつれてカメムシがどんどん出てくるようになった。夕方の少しの時間を使ったプロジェクトが一日を費やす出来事に変わってしまった。僕らは日が沈んだ後、まあディナータイムはとっくに過ぎていたけど、家まで6時間かけて帰るためにそこを抜け出した。昔はインドアのプール施設だったあの場所での魔法のような音楽体験から受け取った高揚した気分を、疲労が肘で突いて追い出し始めた。道中のスナックが欲しかったし、家にも帰りたかった。まずお菓子ね。

僕らはVandervelde所有の車に乗っていて--ジープのようなもの--乗客用シートの一角に"All Birds Say"のコピーがつめ込められていた。同郷Nashville出身のBroemel自身から彼に差し出されたものらしい。帰路はこのアルバムしか聞かなかった。それ以外には2時間くらいFleetwood Macかけているのと同じくらいの価値があった。ある日の朝、道路上に他の車が見当たらなかった時20kmくらいスピードの出しすぎで切符を切られた前と後に大音量で聴いていた。そう、もしまたアクセルを思いっきり踏む時は、"All Birds Say"をスピード違反を食らう前にプレイヤーに入れる。このレコードはこっちへ向かってくる作品なのだ。

このレコードはまるで何十年もの月日を費やして作られたみたいで、シンプルな言葉から生まれる英知は時間をかけて養われるものだし、直球にポイントを突いてくる。ケンタッキーのMy Morning JacketのメンバーであるBroemelが"Carried Away"や"Questions"などで歌い、吐き出す言葉が思慮深く、信用できるものか確かめるのには時間を要する。これは君がただうちに帰りたくて仕方が無く、自分の個人的な問題と考えの孤独に包まれながら誰とも関わりたくないと思う瞬間だ。君がこういう静かな古い家で、他には自分以外誰もいなく、何もすることが無い瞬間。そしてまさにそうあってほしいと願う。君に必要なのはこれなのだ。Broemelは楽曲の一秒一秒を使って君を安心させる。この作品は一週間の半分は続く日曜の夕方で包み込まれている。その時間帯は急かされることも無い。しかし、物語は詳しく伝えられ、登場人物の完璧なパーソナリティーも提示されているようだ。疲れているけど満足している仲間達がアルバム最後の収録曲"Retired"に現れ、全ての登場人物が違ったバージョンで登場する。彼らはただ少し前より道を進んでいっただけだ。

彼らはアルバムの最初ではボトルワインを$80で購入するような人たちだったけれど、今では紅茶を淹れて一人の時間を楽しみながらクラシックミュージックを聴いている。Broemelは歌う

「君は一人でワルツを踊る」


まるで誰か何十年間も死ぬまで働き続けた人、あるいはちょっときつくしごかれた人が見る夢の続きの一場面のようだ。彼は公文書保管人みたいに曲と向き合い、その日、目の前に見える景色、音、匂い、彼らの人生を通り過ぎる人々を詳細に描き出す。全てが回帰し、彼が6~7分近く曲を引き伸ばしていたとしても、どこか簡潔性がみられる。彼らに時の経過の美しさを、満足した心の輝かしさを、そしてお腹が一杯になり、イルミネーションで飾られた魂を与えるために。
Carl Broemel Official Site

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セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. All Birds Say/Carried Away
  3. Retired
  4. On The Case
  5. Questions




http://www.amazon.co.jp/All-Birds-Say-Carl-Broemel/dp/B003VOP7SW/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1321624275&sr=8-1

2011年11月16日水曜日

Gun Lake


Beats Of Hearts In The Breezes And In The Trees

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Patrick Stolley


Download





























「僕は荒々しい土地を歩いていた/君は荒々しい土地を歩いていた/そこで僕たちは自分達の姿を明確に知ることができた」

Gun LakeのリードシンガーMark Fainが適切なタイトルを付けられた"Stormy Country"という曲の乱れた最後のパートでこう歌う。この大陸の大地は長々と続く強い雨によって湿り、赤とオレンジ色の汚れた葉っぱがフジツボや新たな牽引力のように靴の裏にくっつき、その場所がこのミシガンのバンドが一番心地よいと感じる場所なのだ。僕らはミシガンの素敵な名所に行った事があるし、彼らにとってそこから身を引こうとするのがどれほど大変なことか想像もできない。それはまるで心にあてた手を振り払って、悲しく車で立ち去るような感じに違いない。君は心にあてた手がもう1マイル先まで必要だと分かっているけど、それにアクセスすることが出来ない。君の手首の終わりにある筋肉がその空いたスペース、あるいは喪失感を埋めようとするかもしれない。しかしその実体の無い悲痛は何も掴むことが出来ないし、何も埋めることができない。

Gun Lakeは物事が目の前で起きるスペースの中で活動を行う--夜の爆発を通して輝き、電力ははるか遠くから供給されている場所で、君はそこに今まで気づくことがなかった。 彼らは枝を揺さぶって新たな雨を降らす場所で活動を行う。すべての水滴が頭の上のトゲにしがみ付き、ショッキングな大きさの雨粒を落とす。そんなことが起きると、僕らは息を呑まずにはいられない。それはまるで穀物を貯めておくサイロや貯水庫の天辺に上って星に近づこうとするみたいだ。いや、それかなるべく地面の近くまで泥に体を寄せているみたいだ。その二つはそれぞれ違った感情だけれど、彼らの最新作"Balfour"では両方が作用している。この男達が自分達の心臓の音をそよ風や、自身の胸の中で耳を澄まして聴いている。そこには雨を降らす木々や、関連性が深い予知不可能な要素の中で、近親性と親交を見つけなければならないというミッションがあるみたいだ。

とにかく地面に寝転がって地面に耳をくっつけたら、そこで最も力が弱まった、かなり小さな音が聞こえてくるだろう。何千万もの足が地球の下で踏み込み、そして地球の反対側には大空が反対の方向へ手を伸ばし、違った季節の中で違った日を送っている。君を少しの間混乱させるには充分だ。しかしGun Lake(蝶の形をしたミシガンの湖から名づけられた)が同じように感じるのに必要なのは、ただ寂しげな狐達、お腹をすかせたコヨーテ達、怯えたウサギと穏やかな湖だけだ。そこは心配事をシンプルに投げ出すことが出来る場所で、痛む心もそこでは自然の美しさが生み出す愛情表現を感じることが出来る。アウトドアの驚き。どこでも好きなところに火を起こすことが出来るという考え。荒々しい大地に落ちる雷が木々を薙ぎ倒し、僕らを殺すことが出来る。そんな木々に同種の感情を抱くことができるのだ。Fainは歌う。

「まだ木が育つことが出来る場所に連れて行ってくれよ」

そして

「いや、ここ以上に最高な場所は無いし他の場所に行こうとは思わない」

と歌い、この場所で彼は大きな幸せを見つけることが出来るみたいだ。彼は今まで以上に泥が燃えてゆくのを感じ、ここから離れる必要が無いと感じている。生き続ける限り。
Gun Lake Official Site

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セットリスト



  1. Welcome to Daytrotter
  2. Really Something
  3. Trees
  4. June
  5. Stormy Country





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