2011年6月3日金曜日

Death Cab For Cutie/ Codes and Keys

















Death Cab For Cutie

Codes and Keys
[Atlantic 2011]

5.0


2008年発表のDeath Cab for Cutieの最後のレコード、Narrow Stairsでギタリスト/プロデューサーのChris Wallaはバンドがブレイニアック(ずば抜けた知的能力と独創性を持つ人)からインスピレーションを得て、「ヘヴィーでどろどろの、スロウでメタル」なレコードには「10分続く長いCANのようなジャムセッションがあるんだ」と言った。しかし作品ではどこにもそれに似たものは聞こえなかった。たとえばジャムセッション、"I Will Possess Your Heart"は確かに八分以上だったがBen GibbardをDamo Suzuki(CANのボーカリスト)と聞き間違えたりしないだろう。バンドの最新作、Codes and Keysでまた影響された人たちの名前を落としている。GibbardはSPIN紙に、今作はキーボード重視で「ギターベースではない」と言い、Brian EnoのAnother Green Worldがどんな作品になるかを予想させるヒントとして言及した。

実験作であるという主張(過剰に言っているが)は今回はそんなに間違っていない。Codes and Keysは確かに今までのバンドの作品と違う色になっている。パタパタとしたソフトなビートがつまらないメロディーの下で鳴っていて、その上からすでにバタバタしたアレンジの上にさらに楽器を配置している。規則正しいメトロノームのような"Doors Unlocked and Open"と不安定なピアノの静かな"Unobstructed Views"は五分以上の曲だ。優しいノイズの固まりが、さらに直球のパートを囲むように鳴っている。もし、"Cath..."や"I Will Follow You Into the Dark”のようなストレートで魅力的な曲をこのレコードに期待しているなら、何も手に入れる事ができずに立ち去る事になるだろう。

Death CabはいまだにDeath Cabのように聞こえるが、Codes and Keysは間違いなくバンドが2003年に発表した最後のインディー時代の頑張りでTransatlanticismによりメインストリーム現れた時以来、一番ポップでない作品になった。だから、ここにはバンドが開拓した新しい領域がある。Wallaはミックスの天才Alan Moulderとともに、このアルバムの特徴的な音をまとめるためのまともな骨組みを与える、大手レーベルの力で得た"質"を加えている。しかし、感情や人の関係を追求するのが特徴的なバンドにしては、この作品は、冷ややかで、遠慮がちで、感情的によそよそしい。ヘヴィーな音色の曲("Doors Unlocked and Open", "Unobstructed Views","St.Peter's Cathedral”など)は的外れで方向が定まっていなく、シングルの"You Are a Tourist"や"Underneath the Sycamore"なんかはバンドの最初の時期の楽曲をしっかりさせたバージョンのようだ。

本当に、バンドが過去の栄光をCodes and Keysのほとんどないハイライトで振り返ってみても、Death Cabはなぜか自分自身をまねしているように聞こえる。彼らはBrian Wilson風のバロック調を借りたNarrow Stairsの"You Can Do Better Than Me"を今作の“Portable Television"でやってしまい、The Photo Album収録"I Was a Kaleidoscope"での盛り上がって行くブリッジ部分を"Monday Morning"でコピーしている。そしてPlansの最初の曲"Marching Bands of Manhattan"の基本構造を"Underneath the Sycamore"で繰り返している。バンドをこの10年追い続けている人は誰もがこの親しみやすいフラッシュバッグに暖かさを感じるだろう。しかし、何回か聞き続けているとつまらなくなる。

このまとまりのなさは作品製作にあたるバラバラしたレコーディングのせいかもしれない。八つのスタジオが使われ、まるでDeath Cabのメンバーが全員一緒になることはまれだったかのように聞こえる。特にGibbardは。夢心地の最終曲"Stay Young, Go Dancing"を除いて、彼のボーカルは常に加工され、それが人を遠ざける雰囲気を作り彼のトレードマークだったその親しみやすい声色を奪っている。歌詞はリスクを冒さずに、ノンセンスな韻("When you scream/Love you seem)や陳述的な物事の一般化に徹している。Gibbardの喚起的な物語調や優柔不断な喋りはいつもバンド内で見落とされ、今回もほとんど無い。

この十年間、Death Cabも彼らを取り囲む環境もかなりかわった。彼らがメジャーレーベルと契約しチャートを賑わせている間、10年前にバンドが登場したインディーロックの聖地だったPac NW(パシフィックノースウェスト)のシーン※は後退して行った。しかしGibbardが時に奏でていた音はいまだに響いている。Jimmy Tamborelloと組んだPostal Serviceの優しい、エレクトロのベッドルームポップの音だ。このような音は今までDeath Cabの中で浸透することはなかったが、Codes and Keysでもあのプロジェクトのエモーショナルな魅力、そのレベルまで達する事ができていない。この作品で、Death Cabの音はお互いに遠く離れてしまっている。究極的には、僕らからも。

— Larry Fitzmaurice, June 1, 2011

原文→Pitchfork:Death Cab For Cutie/Codes and Keys

※Barsuk RecordsやSub Popも北西太平洋に面する地域にあるレコードレーベルです。Death Cab for Cutieは両方に属してました。






Codes and Keys


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