2011年6月8日水曜日

Cults/Cults




Cults
Cults


Joe Tangari, June 6, 2011

8.5


去年Cultsが"Go Outside"で初めてネットに現れた時、まるで野火のように広がっていた。キャッチーでスイート、誰でも歌えるようなメロディーでオフィスに閉じこもっていたり、ネットに夢中になっている人々にとって完璧なシンガロングな曲だった。でもそんな「みんなの歌」をバンドは飽きられる事無くどれだけ作る事が出来るだろうか。Cultsはそんなこと気にしていないようだ。"Go Outside"はこのデビューアルバムに収録されていて、まだ一日必要量のビタミンDを与えてくれるように元気なトラックだ。しかし、この曲の夢のような流れはバンドの器用さとカラフルで記憶に残るアルバムを作る作曲能力がある事を証明する一つの側面にすぎない。

CultsがColumbiaと契約する事についての早さについて多くの事がすでに語られてきた。まるで彼らがメジャーでデビューアルバムを発表する初めてのバンドのように扱われていた。このような急速な上昇は別に真新しい事ではないが、それと同時に入ってきた予測、オンライン上で彼らが「一発屋」になる運命だと言われていた事は今では酷い見当違いだったことがわかるだろう。バンドのアピールポイントの中心に、歌い手Madelline Follinの若々しいアルトの歌声がある。彼女の出す音色は早熟の10代後半の女の子がPhil SpectorのBack to Monoとここ三十年分のピークに達したインディーポップに熟練したバンドのフロントをしているような、そういう印象を作り出す。彼らの音の60年代ガールポップの要素は表面上かなり顕著である。“You Know What I Mean"のメロディーはThe Supremesの"Where Did Our Love Go"から拝借している。しかし、彼らは21世紀の音楽で、シンセとギターと、柔らかくくっつけられたサンプルでカッティングをしてみせたのだ。

もし彼らがカルトに対して大きな問いかけをしようと決めたのであれば、カルト団体のリーダー達がそれぞれの信者に話しかけている場面のサンプルは気が散る部分になりえた。しかし、それらはアルバムの音の生地にきつく編み込まれていて、「謎解き」が出来るように様々な形に処理されている。これによってリーダーのスピーチは効果的な音のテキスチャーに変化した。これは"Oh My God"のイントロで跳ね回る。元々はAdult Swimのシングル発表の一部として去年リリースされていたが、今作のために少し再編集されている。音楽そのものは変わっていないが、ビートの圧力があがり、ミックスの前方にベースが動かされ、メロディーを支える強力なグルーヴを曲に与えている。Follinの歌詞は必要以上に深いものでなければ、彼女はみんなが共感できる歌詞を書く。(「私はいつでもあなたをおいて逃げて行く事ができるの。私の人生の計画を知ってるなんて言わないでよね。」)

これがアルバムを通して現れる短気な性格を作り出している。”もう(あなた以外)誰もいらない”という"Never Saw the Point”の歌詞は恋愛の終わりの一言かもしれないが、変にポジティブに考えてみると、これがレコードの主なメッセージであるかの様に感じる。永遠に明るい"Go Outside"も”私は自分の人生を行きたいし、あなたはただそこにいるだけ」という歌詞で終わる。これらは10代の感傷的な部分で、一旦10代半ばに入ると、言ったり考えたりするのも馬鹿らしいと感じるような事だ。しかし、これは人生で自分がどんな人間になるの考える瞬間に誰でも感じる普遍的な感情だ。Cultsのティーンミュージック(ガールバンド、50年代のプロムポップ、ベッドルームインディーポップ)から借りた要素は歌詞と共に小さな世界を作り出している。Follinがイライラして”ファックユー!”("Never Heal Myself"[絶対立ち直れない])と歌い、次はどこかに逃げたいと夢見る。さらに形式張ったポップの探求精神も青年期のメロドラマを盛り上げている。Phil Spector風ポップのレコードのアンセム級のオープナー”Abducted"は恋に落ちる事を誘拐される事に比喩して、もう一人のメンバーBrian Oblivionに誘拐者のボーカルパートを与えている。

30分強だが、
Cultsは完璧な長さに感じられる。バスに乗って学校(あるいは仕事)に行くのにちょうどいい長さだ。しかしもっと重要なのは、このアルバムは完璧にするべきことが成されていて、このグループに成長と成熟する空間を与えている。彼らはまた自分たちの音と、歌詞のテーマを今後様々な方向へ持って行く事が出来るし、それは若いバンドにとっていいポジションだ。Cultsは去年たった3曲で今年への期待を募らせた。このデビューアルバムでは十分それに応えている。

原文:Cults/Pitchfork






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