2011年5月19日木曜日

Kate Bushインタビュー Part II


The Sensual World (1989)


Pitchfork (以後PF):新しいバージョンの"The Sensual World"でジェイムス・ジョイスの「ユリシーズ*」の一部分を使う許可を得ることができたようですね。あなたとあの本の関係は?*ユリシーズとはアイルランドの小説家ジョイスの長編小説で20世紀を代表する作品と言われている。Bushの母親もアイルランド人。


Kate Bush (以後KB): 一度だけ読んだ事があってね...だいぶ昔の話だけど、読むのにすごく時間がかかったわ(笑)。あの曲の当初のアイディアでは、小説の最後にある独白の一部を使おうという事だったの。でも許可を得る事が出来なかった。自分で歌詞を書かなければならなかったのはちょっとした妥協だったの。まぁ、別に良かったんだけどオリジナルのアイディアほど面白くは無かったわね。だからこの曲のアイディアをまとめていたときに、もう一回聞いてみようかと思ったの。どうせ断られるだろうから、駄目元でね。でね、本当に驚いちゃったんだけど、許可を得る事ができた。実際に元のアイディアを達成できる事って素晴らしいことね。


「オリジナルのボーカルに当初ひどくたくさんの仕事を詰め込んでいたから、本当にそれよりさらに良くすることができるか不安だった。実際どうなのかしらね、良くなってるのかな。」


PF:(許可を得られた事は)このプロジェクトを遂行させる上で、いい兆候だと思いましたか?


KB:いいえ(笑)。このプロジェクトを始めた時は、簡単でシンプルで、すぐに終わるとおもってたの。で、始めてすぐの時に、こう思った。「こりゃだめだ」って。どうしたらいいかわからなかった。例えばね、オリジナルのボーカルに当初ひどくたくさんの仕事を詰め込んでいたから、本当にそれよりさらに良くする事ができるか不安だった。実際どうなのかしら、良くなってるのかな。でも、殆どの曲のピッチを下げる事で、違う方法で突然アプローチを図ることが出来るってことに気づいた。それが一つのターニングポイントになったわね。

それに、リズムセクションがある全ての曲でドラムを担当してくれたSteve Gaddと仕事ができたのは素晴らしい経験だった。私はずっと彼のファンで、それに彼の音楽に対する解釈は素晴らしいわ。彼は取り組み方がすごく巧妙で、音を取り除く事を恐れていないの。


PF:Director's Cutを聞いていて、私が一番印象に残った曲はあなたが(オリジナルの)大掛かりな楽器編成を取り除いた楽曲だったんですね。どうしてその方法論を取ろうと思ったんですか?


KB:二枚のアルバムにあった何曲かは多分違う方法で伝える事が出来たと思うの。だから、ちょっと呼吸をさせてあげたかった。まずは多くの部分を取り除いて、曲をシンプルにすること。そして、ある場合はオリジナル音源で参加してくれたミュージシャンの演奏をもっと輝かせるために曲を長くした。


Moments of Pleasure(1993)


PF:"Moments of Pleasure"や"This Woman's Work"のような曲、両方ともすでにあこがれと回想について歌われていますが、20年後新しい視点からレコーディングをしている時、当初リリースされてから今までの期間のことを考慮しましたか?


KB:全ての曲で考慮した感じがしてる。特にその二つは、ある意味アルバムで一番親密な曲なの。"Moments of Pleasure"は本当にうまくまとめることができるか不安だったから、座って、もう一度聞いてみようと思った。もう二十年も聞いてなかったから。今の時代だったらオリジナルよりもっと物語風にしたいとすぐに思った。コーラスパートを取り除いたことで何でかストレートな曲よりもっと物語っぽくすることができたの。


PF:このような新しいバージョンをオリジナル楽曲の思い出部分だと考えると面白いですね。


KB:(笑)殆どの場合、複雑にせず、ただシンプルにしたいと考えていたの。作曲と編曲の作業、かなり大変な仕事なんだけど、それが終わっていたから、作品に対する再アプローチを試みることに重点を置いた。


「前のアルバムを振り返ってみるとね、あらゆる努力がつまっていて、すごく頑張っていたの。今回はもっとリラックスした作品にしようと努めたわ。


PF:Director's Cutであなたが選んだ多くの曲はかなり個人的で、オリジナルに比べドラマティックな感じが薄れています。この数年でパフォーマンスの時のあなたと、私生活でのあなたとのキャラクターの距離は変わったと思いますか?


KB:あら深い質問ね(笑)いつもその変化の途中にいるから、どうやって答えたらいいかわからないわ。でもそろそろ、二つの人格をまとめる方法をがわかるといいけれど。時々、前のアルバムを振り返ってみるとね、あらゆる努力がつまっていて、すごく頑張っていたの。だから今回はもっとリラックスした作品にしようと努めたわ。


PF:今、たくさんの若いアーティストがあなたが過去してきたことに影響を受けています。このようなことにお気づきですか?


KB:ほとんどはついていけてないんだけれど、みんな私にそう言うわね。とても嬉しい。私たくさんの時間を仕事と家族に費やしてきたから、それ以外に何かする時間が無いのよね。音楽をたくさん聴いたりしないし。音楽が大好きなんだけど、でもスタジオでいっぱい過ごしているから、アルバムを聴くよりは多分映画を見るかな。いろいろ聞けるんだけど、目一杯ではないわね。


PF:じゃあまだ毎日スタジオで作業を?


KB:ええ、もうだいぶ経つわね。Director's Cutは大分前に出来上がっていたから。まだあのアルバムで仕上げなきゃならないことはたくさん残っているんだけどね。マスタリングとかアートワークとか。でも出来上がってすぐに次のアルバムの製作に入ったわ。すごく楽しんでやってるわ。Director's Cutはどちらかといえば一回きりのもので、何回も過去の作品を振り返ったりはしない。


PF:前のインタビューであなたが最初のアルバム製作でスタジオに入ったときは200曲ほど用意してあったそうですけど、この地点で、あなたはもっと時間をかけてたくさんの曲を正しい形にするタイプなのかなと思ったのですが。


KB:今では全く違った作業になったわ。最初曲を書き始めた時、ピアノの前に座って曲を弾いた。一曲か二曲一晩で書いていたわ。それが趣味だった。ある地点で、それがスタジオの環境で行われるメインの作業になって、作曲がレコーディング作業の一部になった。まだ時々ピアノの前で曲を書いたりして、それをスタジオに持っていくけど前とはとても違ったものになった。


PFDirector's Cutあなたの新しいレーベル、Fish Peopleから販売されます。なぜ自身のレーベルを今始めることに決めたんですか?


KB:以前は、それができるポジションにいなかったから。でも今自分のレーベルに満足してるわ。もっと制限無く自由に創造ができるし、ずっとそれを願っていたもの。3rdアルバムから自由にやらせてもらっていたけどね。でも今は、いままで私がやっていたように、レコード会社の人にいくつか一定の決断を頼む必要がなくなった。あらゆる点でかなりの変化であると思う。でもあのビデオ("The Deepr Understanding"のこと)みたいなものは、出演せずに監督に征して、ミュージックビデオではなくショートフィルムを撮りたかったの。こういうの、いままではレコード会社が反対するような事だったのよ。


(...続く)


Part III


原文:http://pitchfork.com/features/interviews/7968-kate-bush/






Director's Cut



2 件のコメント:

jasouyouqui さんのコメント...

teshi さん、はじめまして。
ブログへのコメントありがとうございました。
実はteshi さんのサイト、既に見つけていてじっくりと読ませて頂きました。軽々と翻訳しちゃうteshi さんの様な方がいらっしゃると、とてもありがたいです♪
新記事の方に使わせて頂きました。ありがとうございます。

Pitchforkは最近まで知らなくてCharlotte Gainsbourgの記事で知ったクチです。
teshi さんのサイトを参考にして新しいアーティストを知る事で世界が広がりそうです。
これ以上購入物が増えるのも困りものではあるんですけどね(苦笑)

teshi さんのコメント...

はじめまして!
お役に立てているようで光栄です。
Kate Bushの初期の作品が大好きなので、結構Red ShoesとSensual Worldは過度期の作品として敬遠してたんですけど、こうやって現代風にしてみるとなかなかバランスがとれていてかっこいいんですよねえ。
僕もこれからちょくちょくJasouyouquiさんのブログ寄らせていただきます。
コメントありがとうございました。

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