2011年5月25日水曜日

James Blake インタビュー Part I


James Blake (By Mark Pytlik, March 21, 2011)

たくさん曲のリミックスを仕上げ、三枚のEPをだし、批評家から絶賛された流行と全く逆を行くフルアルバムを一枚発表し、ロンドンのJames Blakeはダブステップの重要な新しいプロデューサーから、英国シンガーソングライターきっての先駆者となった。六ヶ月ほど前はBlakeが歌える事を知る人は多くなかった。しかし、自己の名前を称したデビューアルバムの人気で、大半の人が彼を主にプロデューサーというよりは、シンガーソングライター兼ピアニストとして認知している事は否定できない。

 

彼の進化、期待、そして人気の素早い上昇はBlakeのキャリアの軌道についての問題を巧みに避けている。今年の二月、アルバム発売の数日前、アメリカでメジャーレーベルUniversal Republicとの契約を発表した何時間後、23歳のアーティストとBrixtonにある彼のアパート近くのカフェでインタビューを行った。ジャズピアニストのArt Tatumのこと、Antony and the JohnsonsやFeistのこと、ビニール版の必要性、クラシック音楽の訓練の欠点、ソウルミュージックの影響に渡りあらゆる事を話した。


Pitchfork(以後PF):自分の声は好きですか?


James Blake(以後JB):うん、好きだよ。大好きってわけではないけど、愛用してる。(声を)可能性をひめた楽器として使う事に慣れてきたけど、もっと突き詰められると思う。


PF:発表されたEPでは、ボーカルをほとんど全体的に楽器のように使っています。LPではそのスタイルと伝統的なボーカルアプローチとの半々で構成されているように感じました。


JB:僕はそう捉えていないんだ。僕の作曲の行程は素早く原始的で、実際そういった方法をとったという記憶が無いんだよね。色んな人が加工されたボーカルをみて、「自分の声に自信が無いから、たぶんピッチ補正かディレイを使ってるんだよ。」って言う。曲を過度に単純化したリスクで今の所そう思われているだけだと思う。


PF:自信の作品で、あなたが受け付けないであろう作品はどれですか?


JB:僕という人間を表現していない作品だね。君がスピーチをしなきゃいけなくなって、自分自身を完璧に表現できる何かを書くのに数日しかないとする。君はきっと使う全部の単語を洗練させて、スピーチのニュアンス、伝わり方まですべて心配するだろう。僕が曲を書いているとき、自分自身を完璧に表現した作品を作らなくてはと思うし、もし失敗したら、その時すぐに止めてしまう。二の足ふまずに、その曲は終わりで違う事をはじめる。



「人々は誰かの不正直を察する事が出来る。このアルバムでは僕はとても正直であったように感じてる。だから何も失う物は無いんだ」



PF:だから、分析的な物というよりは、感情的な物だと。


KB;僕は学校で音楽を勉強して、音楽の分析をする知識もある。でもそうすると誰のために音楽をつくっているか分からなくなるんだ。人々は誰かの不正直を察する事ができる。このアルバムでは、僕はとても正直であったように感じてるよ。だから何も失う物は無いんだ。メインストリームに勇気を出して足を踏み出した、とか考えているわけじゃなくて、今はこのアルバムがどのように評価されるか待っているんだ。僕は自分が誇りに思えるものを作ったし、僕が今まで書いた他の物と同じくらい断固としたものだよ。妥協しないために、出来る事全てやった。


PF:このレコードに意見を出したがる、プロデューサーやレーベルの人たちからのプレッシャーと戦わなくてはならなかった?


JB:うん、かなりね。全部Universalからって訳ではないけど、各方向からプレッシャーはあった。一年前、このアルバムに結局収録されたいくつかの曲は、デモで、もっと加工できるっていうみんなに承諾された提案があったんだ。彼らはこのような曲をスタジオに持って行って、いじくったり、コーラスをスイッチしてみたりしたがった。当然、そうやって出来上がったアルバムはクソみたいな仕上がりになっただろう。世の中の最低なアルバムって、聞いてくれる人が、誰か他の人がいじったなって感じられるやつなんだよ。でもこのような曲は書かれてからあまり変化してないね。僕はミックスさえもしなかった。






PF: ピッチフォークのTom EwangがPoptimistの記事でUKでは君の人気を上げようとする動向があるようだと書いているんだけど。そう感じた事は?何の事だと思いますか?


JB:それはたぶん、産業的なことよりもリスナーの傾向にある。僕にとってはとても喜ばしい事だよ。自身の活動に多くのアンダーグラウンドシーンからのサポートを受ける事は滅多にないことだし、それに僕はアングラ界からまだ抜け出そうとはしていないからね。ドラムンベースやヒップホップから始めて、メインストリームでうまくやっていけるような流行のレコードをわざと作ろうとするアーティストが多くいる。だけど僕が今回やったのは、僕がすでに音楽をかけていた、そういう人達のためのアルバムを作ろうとした事なんだ。そうすることで、僕はたまたま自分の声を使うステージに立っていたし、たまたまそれでもっと色んな人たちと繋がることができたんだよ。


自分の声使い始めると、物事は変わるんだ。たぶんちょっとした(流行への)反発が起こると分かってるんだけど、そんな妥協は今までにしてきてないから。EPや12インチでみんな僕の遍歴は理解してくれてると思うし、今までのEPをちゃんと聞いていれば、僕が違ったスタイルに向かうって察していたはずだよ。


「自分の事をソウルシンガーだと感じた事は一度も無い。僕はそんなタイプじゃないんだ。」


PF:あなたが反発と呼ぶ物は、あなたのようにエレクトロから始めて、ボーカル重視の作品に移るというアーティストが先にあまりいなかったという事実に基づいているからではないでしょうか。このステップ、移り変わりはどのくらい計算された物だったんですか?


JB:計画は無かった。自分自身のキャリアの軌道に沿って行っただけだよ。実用的な問題ね、僕が実際に曲を書いている時に、同じように聞こえる曲を5つか6つ書くんだ。そうやって、EPが一つ噴出される。でも、この六曲書き終わった後に、僕は「あーもう、また何か書き始めないといけない。この方法論はもうつまんないから。」って考えるんだ。だから違った方法をとるんだ。その(変化の)段階の一つが、自分の家で録音したピアノとボーカルをサンプリングすることだった。古いソウルレコードを録音するのにそれが一番だと思ったんだ。でもソウルミュージックを一度も歌いたいと考えた事は無かったんだ。自分の事をソウルシンガーだと感じた事は無い。僕はそんなタイプじゃないんだ。


PF:ソウルフルだと呼ばれてどう感じます?


JB:おかしな感じだよ、誰もソウルとソウルフルの違いを区別してないみたいなんだ。僕の意見では、ソウルフルはSam Cooke(著名なSoul,R&Bシンガー)を聞いて分かる物じゃないんだ—新しさに欠ける、もっと後退的に計算された、ソウルとは違った物で。時代遅れの総称だよね。別にわざわざ言われる必要ない。それが「いい歌手」って意味だったら、そのまま「いい歌手」って言った方がいいよ。僕はソウルフルって言われても何も感じないよ。例えばAdele、多分彼女は一生でソウルレコードを何百とも聞いてきただろうけど、僕は彼女の事をソウルフルとは呼ばないな。彼女はAdeleでしかないんだから。


PF:私にとって、誰かがソウルフルというと、「白人が黒人みたいに歌ってる」といってるように感じるんですよね。


JB:そういうこと。僕が言いたかった事代弁してくれたね。でも何で僕は言いたくなかったんだろう?それが問題だよ。


PF:多分僕らの言語の中で実際言いたくない物があって(たぶん人種観のこと)、でも人々があなたのことをソウルフルと呼ぶので普通の人よりそう感じるんじゃないでしょうか。


JB:まあ、例えばね、僕はJamie Lidell(UKのテクノアーティスト)と比較されるんだけど。もしJamie Lidellの曲や彼の歌い方を聞いたら、彼が(古い音楽の)復興論者であることがわかる。正直言って、そんな比較しか出来ないんだったら、聴力をもういっかいチェックしてもらった方がいいと思うね。


PF:サウンドよりは、あなたが現れたシーンが比較に関係してると思いますけど。


JB:こうやって僕の音楽の理解が崩れて行くんだよ。いつも純粋に音と関連させて考えるから。音楽がどこから生まれたとかちゃんと考えないし、だから多分論理的にも分類的にもみんなが言っていることが理解できないんだ。僕にはソウルフルっていう汚名が着せられている。なんでかというと、”ポップアイドル”やらでソウルフルシンガーって呼ばれる人たちって、全部着飾って純粋なメロディーを汚くしている奴らだからさ。やりすぎちゃうんだよね。どうしてもそれはさけようと頑張ったよ。Sam Cookeにはけっこう影響された。彼は"サマータイム"みたいな曲でも「サマーターイマァーーーーーーーウォオー」って過度に演出しないからね。


PF:誰みたいに聞こえると思います?


JB:正直わかんないな。自分の声をサウンドの一部として聞いているから、僕みたいに聞こえるとしか言えない。誰かと同じように聞こえるとは思わないな。誰かに似せようとしていないし。多分自分ではない何かとして理解されたくないってことだね。


(続く)


Part II


Part III


原文:Pitchfork/James Blake Interview









James Blake

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