2011年10月31日月曜日

Scars on 45


Those In Their Breathless States

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi



























Scars On 45の歌の中では全てがそわそわしている。仲間達はみんなここから去り、新しい人生へ向かう準備をしている。彼らは自身の情熱を再び考え直している。そこには強い願いがあり、感情が昂ぶった人々が集まり激しい討論が交わされる部屋もある。全てがこの結論に達する...この熱気、そして水分が沸騰したポットの注ぎ口から噴出し、それが床にこぼれたときジューっと音を立てる。そう、彼らが手や頬っぺた、腕や首を叩く時に。人々は手に、膝にぶつかり合い、次に何が起こるか、誰がアクションを起こすか誰にも分からない、息を呑む緊張感がある。 どう転んでもおかしくないし、これが彼らの楽曲--普通は二人の人間の衝突--がバランスをとる方法だ。これらは様々な色へと爆発する,
私的な思いに対する私的な戦いなのだ。

リードシンガーDanny Bemroseはこういう物語を語る時、つねに怒りに満ちているように聞こえる。彼は物語の中に身を乗り出している。まるで物語が彼を支配し、彼に取り付いてしまったかのようだ。彼はそこから逃げることができない。永遠に。想像から生まれたもので、自分が経験していないただの感情だったとしても、彼はそれらの物語がしっかり燃えて、生きているか確実に確かめる。それは彼の経験から生まれたもので、彼の人生の中で現在起こっていることに対する必然的な答え以外の何者でもないのだと。

UKのBradfordから来たこのバンドは、まるで胸の中が世界中の蜂やスズメバチで溢れていて、ブンブン音を立てながら威嚇しているように思わせる。ただまだ誰も刺してはいない。ただそこにいるだけ。威嚇が一番恐ろしいものなのだ。これは愛する人の「私には他にもっと違う人がいる。Bemroseの歌詞を思い起こさせる誰かが」と言う威嚇なのだ。彼はまるで全てどうすることも出来ないと感じさせる。これは全て自然の出来事で、全部何千年も昔に予定されていたことだ、と言っているかのように。ただ今の瞬間喧嘩が起きていて、僕らは観客になるしかない。しかし彼はそれを信じない。彼は脚をあげながら、怒りをぶちまけている--ただ彼の癇癪や怒りの爆発は所々でピークを迎える可愛らしいバラードの様に聞こえるのだけれど。全て過去良かったものにしがみ付くことについて歌っている。たとえ過去良かったものは結局悪い方向に向かってしまったのだと頭では理解していても。
Scars On 45 Official Site

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セットリスト

  1. Welcome to Daytrotter
  2. Beauty's Running Wild
  3. Give Me Something
  4. Heart on Fire
  5. Burn The House Down

Wilderness of Manitoba



It's The Birds And Their Southward Pull

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Patrick Stolley, Translated by Teshi


































ある日僕は秋について書いていたら夢中になって止められなくなってしまった。しかもかなり時期尚早に。でもそういうのも馬鹿げてるかもしれない。何故かと言うと、それはエネルギーの一部がみんなが(最低でも)二番目にお気に入りの季節のニュアンスについて考えることに使われても良いって言っているようなものだから。秋はたとえお気に入りではなくても、みんな好きな季節だよね。ずいぶん長く座って、ここで録音したThe Wilderness of Manitobaの4曲(全て彼らのデビューアルバムに収録されている)聴いていると、全てが間違っているような気分になる。僕が昨日書いた全ての原稿は無駄になった--ホットチョコレートとりんご酒、枯葉を踏む音とか他のゴミみたいな文章。その時は良い感じに見えてたのだけれど、でも実際僕の文をしっかり味わってくれる人がいるとしたら、分かってるだろうけど、The Wilderness of Manitobaだ。ああ、彼らだったらきっと秋の豊かな色彩や落葉のことを楽しんで読んでくれただろうし、きっと頭の中で自分達が枯葉の山に跳び込んで遊ぶ所を想像してただろうな。それ以上何を言ったらいいか分からないってわけじゃないけど、ちょっとだけずるしてる気分になるんだ。このトロントのバンドがあのエッセイを読んで、「これ、僕らのエッセイにぴったり」って思わなかったなんて偽ることはできない。

このバンドはScott Bowmeester、Will Whitwham、Stefan Banjevic、Sean LancaricとMelissa Daltonで形成され、彼らはきっと自分達のりんご酒のスパイスにはこだわりを持っているはずだ。きっと帽子、スカーフ、手袋のストックがいくつも箱に詰められていて、その箱を引っ張り出すその日まで一年中一分毎にカウントダウンをしているのだ。彼らは薪から出る煙を、まるで冬に向けて支度をする痩せこけたネズミのように体中に沁み込ませるのが楽しみでならない。"When You Left The Fire"に収録された音楽は10月の半ばから終わりにかけてやってくる夜の時間へのサウンドトラックだ。その時期は紅葉がピークを迎え、作物は埃を立てながら収集され、太陽が地平線に消えた途端、気温は急にスイッチを入れるみたいにグンと急激に低下する。空が暗くなるとすぐにパリっとした美しい秋の冷えが何のお咎めもなく地上に降りてくる。僕らはフードをくいっと上げて、コートのジッパーを締める。上着を忘れてしまったらちょっと震える。そして雪が降り何ヶ月かがゆっくりと進む時に僕らが成り果てる「冬眠モード」を少し感じるようになる。これらは冬に備えてやってくるもので、こういう日々は徐々に少なくなってきて、もう少ししたら良い事もなくなるという警告だ。僕らはこの先本物の寒さに悩まされるんだから。そうなると以前の空気の触感を懐かしく思い、あらゆる方法で熱を集めようとする。どうもThe Wilderness of Manitobaの言葉もその考えをかき立てているみたいだ。彼らの牧歌的なフォークの音色にチクタク時計を連想し、まるで何か一時的な死を予感しているみたいだ。死はやって来る。僕らは死は絶対やってくるってわかっているのに、同じようにそれを嘆いてしまう。それは確かに枯葉のことだろう。しかし一番打撃を受けるのは衰えた僕達だ。僕らは再びその時を待って、また来年までカウントダウンを始める。
The Wilderness of Manitoba Official Site

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. November 
  3. Hermit
  4. Summer Fires
  5. Orono Park



James McMurtry



The Sentence Of A Life

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Matt Oliver, Mastered by Sam Patlove, Translated by Teshi






























僕らは時は早く過ぎ去ると信じたり、人に言ったりしたがる傾向があるし、時にそれが全くの事実になる日がある。そうじゃない日もある--人生の大半がそんな感じだけれど。僕らはどうもとても素晴らしい日常の中を飛び抜けているみたいで、肩越しに空に浮かぶ赤と黒のもやもやが急スピードで僕らから離れて行くのを見る。落ち行く空の中へ、永遠に帰ってこないもの全てと一緒に消えてゆく。僕らは怠惰を感じ、人生の長さをまるで刑罰のように感じている。それはまるで僕らが不公平にも無実の罪で罰せられているみたいだ。僕らはここから出ることができないし、脱出することもできない。さらに言えば、そんなに簡単に出来るようなことじゃない。途中で止められるし、数え切れないほど声をかけられる。まるで午前2時に何時間も渋滞したテキサスのハイウェイから抜け出せないみたいで、自分の時間が、居眠りのトラック野郎が何マイル先で居眠りしていて、後ろに積んでいた牛が何匹も路上に広がったせいで奪われたなど気付かずにいるようだ。この物語の全てのパートは(僕ら全員にとって)「僕と私」の物語に適用している。何故かと言うと、僕らの時間が無駄に使われ、時が何を費やしたか、何を楽しんだか、何を失ったかという激しい支離滅裂と魅力的なつながりが実際どう感じるのか理解する瞬間を感じることが出来るからだ。

AustingのシンガーソングライターJames McMurtryは時が僕らにどのような影響を与えるか、僕らがどのように時と接しているかを描き上げる達人である。"No More Buffalo"のような曲で彼が自身の言葉を捉える方法と彼が与えるガイダンスは、僕らは何かちっぽけな事を信じ、それでもそういうちっぽけな事が僕らを葬ることになるのだと信じている人間に耳を澄ましているのだと感じさせる。僕らはそれに生かされ、呪われ、その輝きに惚れ、ちっぽけな事のかなりの無意味さに惹かれていいる。まあ結局全部それに帰属しちゃうんだけど。

時々僕らは物事の中の自分の居場所を忘れてしまう。僕らはたとえどれほど難しい試練であったとしても、毎日の日課がどれほど簡単なのか忘れてしまう。外にはたくさんの人がいて、人生のうちにどれほど見たことがない田舎があるのか、どれほど決して見る事が出来ないのか忘れてしまう。ここに挙げた事は全てMcMurtryが書く物語で起こる事だ。

彼の物語は終わることない物事の関連性とさらに終わることない捜索について歌っていて、それはまるで今この瞬間全てを決定する方法なんて絶対にないと言っているようだ。僕らはまだまだ何者でもないし、何も解決できない。それが出来るのはまだ何年も先だ。周りで物事が砕けていくのを見つめることはできる。恋愛、身体、家族、そして人生が。それでも、ちょっとぐらいはそこで何かやってみようと思う。何故かと言うと、McMurtryが彼の歌唱スタイルでまさにこのことを歌うとき、「これは君が知っている今までで一番長い道だよ」と暗示しているからだ。そう、この道は君が進む今までで一番長い道で、まるで永遠の様に感じるはずだよ。
James McMurtry Official Site

セットリスト

  1. Welcome to Daytrotter
  2. Down Across The Delware
  3. We Can't Make It Here
  4. No More Buffalo
  5. Peter Pan



2011年10月30日日曜日

Bear Hands


A Willing Relationship With Loneliness

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi

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ブルックリンのバンドBear Handsのデビューフルアルバム"Burning Bush Supper Club"に収録の"High Society"という曲は二人の友人の衝突について歌っている。二人は共に同じ個人的な問題に対処していて、でも実際にはそれだけではないような気がする。Frankという名前の男が語り手である友達に手紙を書いている。会話調のメモで、まるでチャットのように考えが連ねられている。そこに書かれていることは助けを求めて哀願しているわけではないが、どちらかというと好奇心に溢れた「お願い事」が書かれていて、もし返事が肯定的だったらこの先全て楽になるのにな、と思っている。Frankのメモ書きの一つは「君の家族最近どうなの?」と書かれていて、もう一つの質問はかなりパーソナルな内容になっている。Frankはまず

「僕とっても寂しいんだ」

と言い、その後

「僕の恋人になってくれる?」

ナレーターはそれを承認したりしない。彼/彼女(ナレーター)も寂しい。だけど彼らを心配させるのはそれが理由ではない。それは何か修繕が必要なものとして捉えられていないものだ。ナレーターは不愉快な感じにその設問に対して何回も「ノー」と答える。Frankの質問がジョークみたいに軽く流されたのか、ただきっぱり断られたのか、それははっきりしていない。彼らは恋人にはならないし、そのナレーターは

「今は一人がいいから」

と言うように、どうも彼らは当分恋人を作らないみたいだ。

Bear HandsのリードシンガーDylan Rauがそんなことを言うにして興味深い方法だ。それはまるで孤独で寂しいという理由を1対1の恋愛関係へと昇華しているみたいだ。何か尊敬に値して、讃えられるべきのものに変えようとしている。それは指に輝くダイアモンドリングと同じように扱われなければいけない。彼/彼女は自身の孤独を愛していて、たとえ友達が何よりも交友を必要としていたとしても、それを保とうと心がけている。彼らは愛に飢えているが、それを彼らが探すべきでない所で探している。

"Burning Bush Supper Club"の様々なところでRauは再び孤独について考え、社会や社会のつまらなさや、それが人々をどこへ導くか--人々は犠牲になり、崩落している--を掘り下げている。そのシニシズムは所々古びれた感じがするが、再び他の人々に対して牙を剥くようになる。作中の激しくノイジーになるキーポイントのほとんどで、Rauは曲の登場人物が置かされる苦境に対して今までよりも怒りを鎮めている。どちらかというと彼らに鎮められているのだろう。まるで登場人物を認めることが成長過程の重要なパートなのだと言うように。僕らは成長するたびに孤独を覚える。その時は全く反対になると信じていたのに。
Bear Hands Debut Daytrotter Session
Bear Hands Official Site



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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Can't Stick Em
  3. Camel Convention
  4. Tablasaurus
  5. High Society



Hacienda


The Great American Savoring

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi




























愛する女性に愛されるということは一番重要なことである。彼女に対して優しく、理解がある人間でなければならない。彼女に「僕は君なんかにとても及ばない」と思い出させなければならない。大体の場合、それは全くの事実だからね。彼女の方が優しいし、君をもっと理解し、心配してくれる。部屋を汚くしたら自分で綺麗にするべきだ。そうすれば彼女が後からやらなくてすむから。片付けられなかった時は何回も謝るべきだ。でも自分が彼女が望む以上に頻繁に、そして上手く片付けられないのは分かってるから、結局たくさん謝ることになる。だから上達しようと努力するべきだよ。自分が大切に思う「ちっぽけな」ものにもっと心を込めてたくさんキスとハグをしてあげれば「ちっぽけな」ことにはならないはずだよ。彼女は中身のない言葉や意味のない抱擁の本質を見抜くことが出来るんだ。

テキサス州はSan Antonioの四人組Haciendaは女性の心を理解していて、そこから彼らが心に感じた感情を歌の中で蘇らせる。多分そうすれば彼らの愛する女性達を通常よりずっと長い時間幸せにさせることができるから。彼らはまるで一日の終わりにたくさんの「言い訳」「説明」を彼女に対してしてきたように聞こえるけれど、この三兄弟と従兄弟は女性が望む最高の夫、或いはボーイフレンドのようにも聞こえる。彼らは自分の失敗に対して誠実だし、彼が一緒に過ごす愛する女性の美しい部分、隠された美しさまで全て見つけることができる。それは愛おしさを感じさせるような愛情や(愛する人に対する)心酔で、誰もが恋愛関係に期待するものだ。二人の関係が気まずくなる瞬間もあるけれど、きっとHaciendaの男達は恋愛関係のいきなりの終焉に不意打ちを喰らったのだと思う。彼らにそんな仕打ちは値しない。

Abraham、ReneとJaime Villanuevaの三兄弟と従兄弟のDante Schwebelは僕らに僕らが一番愛する人に会いたいと強く願いさせる。彼らは僕らに田舎の空気をお腹いっぱい吸い込みたいと懇願させる。彼らのバックヤードのBBQや自家製のポテトサラダに僕らはヨダレを垂らし、可能な限り集められるだけの拡大家族に囲まれながらそれを楽しむのだ。デビューアルバム"Loud Is The Night"とその次の作品"Big Red & Barbacoa"に収録された楽曲と、最近ミックスが完了し、友達であり親友のBlack KeysのDan Auerbachと一緒に録音した最新作からの楽曲は、小さなファイヤークラッカー(爆竹)で引き締められている。その小さな爆発は人生が上手く行っている時、口の中に炎の輝きが感じられる時、外に出て社交的になり、自分が扱える素晴らしい物事を話のタネとして持って行く時に血の中に感じるものだ。これらの楽曲は粗暴な感じがして、それはまるで非常に濃い茶色っぽい金色に色づけられたまぶしい月の光のようで、君が頻繁に感じたくなるものだ。彼らの歌は時々ほろ苦い思い出があったとしても、人生の実りに溢れていてる。それはまるで彼らが一番重要なものをストックに入れて、それの温存に(隅から隅まで)自分自身を打ち込ませているようだ。そしてそれを味わう。現在このバンドがアメリカであんまり知られてないのは犯罪的、って感じるのも当たり前かもしれない。
Hacienda Debut Daytrotter Session
Hacienda Official Site

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Here Today
  3. Where The Waters Roam
  4. Whose Heart Are You Breaking
  5. Country Air

2011年10月29日土曜日

Someone Still Loves You Boris Yeltsin


The Trembling Breaths And Rapid Heart Rates We Want

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi

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だいぶ前にアイオワ州のウェスト・ブランチにあるHerbert Hoover図書館の中を父さんと一緒に散策していたときに、父さんが僕に言ったことの一つ、「ちゃんと目をこらして見るんだよ。歴史はいつも繰り返すものだからね。」今では年老いてしまって、片方の耳から別の耳に筒抜けるような簡単に忘れてしまうような適当な事をいっぱい言ってきたけど、僕が若い時に聴いたこの言葉だけはしっかり記憶に残っている。まだ思い出せるなんて不思議だよね。あれから何年も経ったというのに。これで三回目のSomeone Still Loves You Boris Yeltsinの事を書こうとして、その言葉がまた頭を横切った。

今朝のニュースは3人の違うレポーターがそれぞれミズーリ州のカンザス・シティの別の場所で報道していた。彼らは前にのめり出して、3週間以上行方不明の赤ん坊を抱えた男をその日発見したと言っていた。そのストーリーは--かなり多くの違ったバージョンがあるみたいだけど--ミズーリに住む人たちに20年ほど前ミズーリ州のスプリングフィールドから消失した3人の女性の事件のことをいやおう無しに呼び起こした。赤ん坊は証拠も無しに連れ去られ、それはStacy McCall, Sherill LevittとSuzanne Streeterの三人の娘も同じだった。1992年の夏の夜に何の証拠もなくいなくなり、家からは何も盗み出されず、財布も服も荒らされずにそのまんま。車まで道路に停めてあった。3人の家族にとって謎のまま19年が過ぎ、それはこの小さい赤ん坊の家族も同じことを考えているだろう。このミズーリの三人は発見されること無く、Someone Still Loves You Boris Yeltsinはこのケースの解決に手を貸すために、自身のコールドケースを演奏している。自分達の愛するホームタウンのために。

バンドの二人のリードシンガー/ソングライターのうちの一人Phillip Dickeyは"Yellow Missing Signs"という曲を書き、これでこの事件に対する公共の意識を変化させ、あわよくば誘拐の新しい手がかりを発見できれば良いと願っている。この日の録音時、彼はスプリングフィールドの三人娘の写真がプリントされたTシャツを着ていて、この日の午後、路上でこの曲を演奏する時、自分のポロシャツのボタンを下にある写真が見えるくらいまで外していた。92年のMcCallファミリーの動画を彼が送ってくれて、そこにはあらゆる種類の衝撃的なコメントが収められていた。その中の一つに、母親が「娘がぶらぶら何の連絡も無しに出歩いてたのが悪かったんだわ。」と言う場面がある。母親は娘がしっかりした18歳で、絶対にメイク無しに外に出歩かないし、絶対しっかり鍵をかけるタイプだと思っていた。彼女は「今日は何か食べたかしら。(手足が不自由だと)自分では絶対に食べられないし」と思いを巡らせ、咀嚼しているあいだに泣こうまいとして、食べ物を喉につまらせちゃったらどうしよう、、なんて考えているのだ。

Dickey、John Robert Cardwell,Jonathan JamesとWill Knauerがいつも心に衝撃を与えるような物語に引き寄せられているわけではないが、このビデオの中の女性とコピーした「行方不明」のポスターを果敢にスーパーに貼りに回るほとんど黙ったままの夫が見せる飾りない人間性はBoris Yeltsinの音楽が常に根ざしているものと同じだ。火事、車の衝突、古いデパートメントストアや様々な出来事は彼らのほとんどが生まれ育った町を舞台にしている。彼らは成長して行くにつれて変わり行く町並みを見てきた。そこにずっと住んできた人がどう変わっていくかも見たし、人々の手は冷たくなるか、脆くなるか、暖かく、力強くなるかのどちらかだということも知っている。彼らはこれからも魂の強さや、人を元気付けるもの、心を暖めるもの、そして心を躍らせるものを信じ続ける。彼らは普段の生活に現れる不思議なことを歌にする。消え去ったり、忘れ去られたりしないために。そして彼らは生き続けることの意味や、食べ物に喉を詰まらせること、ちっぽけなことも大切にすることや、生きているうちに全ての日の出を見ようと努力することを歌い続ける。
Someone Still Loves You Boris Yeltsin Debut Daytrotter Session
Someone Still Loves You Boris Yeltsin Second Daytrotter Session
Someone Still Loves You Boris Yeltsin Official Site

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Yellow Missing Signs
  3. Letter Divine
  4. Critical Drain
  5. Sink/Let It Sway




2011年10月28日金曜日

Distractions


The Ghosts Of The Fire And The Dinner Made

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi

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何週間か前にThom YorkeとRadioheadが登場したSaturday Night Liveのエピソードを観たひとはきっとたくさんいるに違いない。その中の一曲はかなり感動的な出来だったんだけど、もう一つの曲はまだまだ良くなる感じだった。改善の余地があるその一曲の最中にThom Yorkeが小人みたいにたくさん動き回ってて、きっとその動きはロスアンジェルスでサプライズDJとして登場した時身につけたものだと思う。ロスアンジェルスではサプライズDJっていうのはよく登場するみたいだけど。あの動きは何かリズムと彼だけに聴こえるサウンドに神経が昂ぶっている人がするようなダンスだった。ちょっと"Lotus Flower"っぽかったけど、でも全く一緒って訳ではない。あの変にくねくねと俊敏でギクシャクした動きで、YorkeはシカゴのバンドDistractionの曲"Make A Move"に頭の中を乗っ取られてしまったかのようだった。多分その両方("Lotus Flower"と"Make A Move")から少しずつ、まあイデオロギーなんだけど、僕らが気付くものはかなり巨大なものだ。こじつけな意見だってわかってるけど、"Make A Move"はYorkeがはれぼったい目を完璧に閉じて踊っていたこと全てを体現するような曲なのだ。

この曲はほとんどインストで構成されていて、リスナーを踊らせようと背中を押してくる。しかしリードシンガーTom Owensの声は全然はっきりしていなくて聞き取りにくい。 体の動きは自分で作り上げるものだけれど、多分Distractionsが鳴らす音に刺激されたものかもしれない。これは10月や10月の終わりに向けてまさにふさわしい曲だ。まるで見捨てられたゴーストタウンにある誰も触れたことも、見た事もない鏡張りの空間に入っていくようだ。鏡は角から角に渡ってひび割れ、そのせいで鏡には君の姿が倍に映っている。そしてこっそり入ってきた反射したクモの姿をどんどん増加させていく。反復的なベースラインと「待ってればわかる」と期待させるドラムが時々導入される3パートのハーモニーと調和し(この部分はいつも美しく、Owenと仲間達はまるでGrizzly BearのEd Drosteのように聞こえる)。このハーモニーは絶対に長続きせず、メーソンジャーに詰まった魂が花火の様にガチャガチャ音を立てる時のようなうめき声が、無関心にもごもごと言葉を発している。



Distractionsは君が頭の中で考え始める全てをひっくり返す。その事を頭にかすめるとすぐに。君の片方の手の中には幽霊が閉じ込められていて、突然君はブルージーなナイトクラブにいる。Dean MartinとSammy Davis Jr.とマティーニを交わし、派手に着飾って"Ten Days"を聴いている。この曲は一週間とちょっとの短い間一人の女に狂おしいほど夢中になる曲だ。まるでGeorges Seuratの有名な絵画"Sunday Afernoon on the Island of La Grand Jatte"の点描の絵の中を散歩しているみたいだ。全く純潔で、地面にはゴミ一つ無く、尊敬されるような人々が静かに目的を持ってピクニックをしている。僕らもそこにいる。犬を散歩させながら、僕が(或いは誰かが)失ってしまった愛を残念に感じている。時々Distractionsは僕らが愛を失ったと感じさせる。誰かが焚き火に薪を頬リ投げて、火を起こしディナーを作ってくれた。特に理由も無く。ただ僕らの事を心配しているだけなんだ。
Two Syllable Records

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. I Need A Reason
  3. Make A Move
  4. All Night
  5. Ten Days

David Bazan


The Side Effects Of The Shit We Pull

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi





























David Bazanは常に僕らにいわゆる「精神的金欠」と「精神的裕福」に違いは大してないと伝える術を知っているみたいだ。金欠病にかかっているけど、基本的に幸せな人と、どちらかというとお高い上流生活を送っている人は大体同じようなものだってこと。彼の最新作"Strange Negotiations"のカバーアートに使われた魅力的な写真には息を呑むほど美しい(最低でも丸裸だし、かなりスリムにも見える)若い女性と寝具に身を包んだ年寄りの男性が映っている写真がある。男の手は痩せこけていて、髪の毛は雪の様に白く、足はもつれている。この二人は手を繋いで一緒にスイミング・プールの端を歩いている。この二人を簡単に見分けることは出来るけれど、この写真の中では二人とも一緒だ。美しい日焼けした女性に手を引かれながら、この男の目の中は空っぽで、僕らに「ここに楽しいものは何も無い」と伝えたがっているようだ。この話がどこに向かうかわからないけれど、多分そこで終わったりはしないだろう。多分僕が思うにはこの二人は交際していて、それもかなり不思議な関係だ。何故って、この娘は男の孫の年くらいだし、男は天国への階段に足を踏み入れたみたいな感じだし。二人の表情や行動を見ていると、これは最後のあがきなのだと分かる。最後に一回だけの楽しみ。でも君はきっと全部演技なんだろ!と信じたい。ただ人間が二人写真に写っていて、男が自分が剥離していると気付いた時の極限の感情を表すシーンを捉えただけなのだと。彼の白い髪が、僕らを死に近づく恐怖を与える。でもそれは自然な警告で、それ以外になんでもない。警告が鳴り、人々が彼が何をしてしまったか次々に見つめ始める。彼らは男の「人生の成功」を見つめているではなく、「失敗に」目がいっているのだ。

Charles Yuの小説"How To Live Safely In A Science Fictional Universe"の登場人物にタイムマシーンを修理して、仕事中に自分が集めた全ての情報をアウトプットする男がいる。彼は

『よくあるお客様が文字通り自分が望める場所にいく事が出来るマシーンに乗りました。さて、普通みんなどこに最初向かうと思います?言い当ててみてください。いや、やっぱり言わなくていいですよ。答えなんか分かってるんでしょ。人生で一番最後の日に戻るんですよ。』




Bazanは人生を通し決断にいつまでも迷っている(今でも)キャラクター達に息を吹き込むエキスパートだ。彼らは人を傷つけ、また人に傷つけられてきた。彼らは仲間をなくし、数人が自分達の世界に引き込んだけれど、その世界の全体像を与えたり、全く与えなかったりする。難しく考えすぎたり、核心に近づいたと思い込んだりすると事態はどんどん不明瞭になってしまうことはみんな分かっているのに。Bazanは全ての混乱をとびきり美しい詩として書き下ろし、人々が頭の中の思想をめぐってどこか辿り着く場所に降り立つところを見せ付ける。彼らは誰かを完璧に理解したり、また自分達を完璧に理解していると思っていると、また情報が全て変化した時に心の一部が消されてしまった気分になる。彼は"People"という曲でこう歌う。

「崩落に自分達の罪をなすりつけているやつの顔が見てみたいね/自分に正直でいるとき、あいつらが誰だか全くわかんないんだ/こいつらは俺の仲間だよ/それ以外になんて言ったらいい/お前も俺の仲間だ/俺ら二人とも同じような性質してるよな/すると君の目の色が緑に変わった/そして俺が最初にお前にあげた時は一応動いていたあの機械を壊してしまったんだ」

そう、僕らはみんな同じように頭を悩ませ、疑問に思っている。僕らはみんなそうやって苦しんでいて、だから全てが落胆して見える。いや、反対にそれは癒しに近づいているのかもしれない。頑張りすぎると、全部悪い方向に向かっている気がする。Bazanは

「俺達は今君が仕方が無いといって諦めてしまった面倒事から生まれるネガティブな副作用の一覧を仕上げてるんだ」


と歌い、僕らは結局解決へはどこにも向かっていないのだと結論を下す。もしまたお茶を沸かしてくれるんだったら、一杯淹れてくれないか?ここに座ってもうちょっとお話しようよ。

David Bazan Debut Daytrotter Session
David Bazan Second Daytrotter Session
David bazan Official Site

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Eating Paper
  3. Leaving With Yourself
  4. Virginia


2011年10月26日水曜日

Brett Dennen


The Feeler And The Sightseer

Oct 24, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Jon Ashley
Translated by Teshi





Brett Dennenは問題を抱えている。だからってそれは嫌になるような問題じゃないけど。彼は心配しすぎだし、感受性が強すぎるのだ。彼の抱えるストレスは健康的なストレスで、それはなかなか得られるものではない。彼はその領域を完璧に支配しているようだ。このカリフォルニア北部からやってきたシンガーソングライターは時々世俗的な問題に思いを馳せる。実を言うと、彼は人道主義者で、自分のことよりも他の人のことをもっと心配する性質なのだ。しかし、彼が普段書き溜める問題というのは、大きい心を持った人、あるいはすぐに絶望してしまう人が抱える問題だ。

彼はわざわざ自らを恋をしなければならないと課し、もし僕らが心配するべきことを全部積み重ねろと言われたら、「恋愛する」というのは良いことと悪いことの真ん中をまたぐ問題になるだろう。外に出て愛を見つけるというのは大変重要なことだけれど、恋愛っていうのはどちらかといえばスポーツマンがするようなことだ。とても楽しいことだけれど、同時に酷く苦しい。とても複雑で美しいものだけれど、同時に酷く嫌になる。彼はきっと『恋はいつも違う始まり方をするけど、最終的には似たようなもんだ』と言う風にどこか心に平穏を作っているんだろう。きっと自分を病気にさせるほど可愛らしいモノを必死で探すことに夢中になって、その喜びに浸っているのだろう。まるで太陽の光から毒をもらってるみたいだ。実際は毒になんかかからないし、どちらかというと太陽に恩恵を受けているんだけれど。

君は船の外に出て、水の中で溺れたりなんかしないと気付く。それよりも君は恐ろしい困難と拷問の後に驚くべきことを発見する。それは自分が水の中で息が出来て、何もかもがどうにかなるってことだ。君は『愛』という名のどんどん深まる溝に突入し、たとえ何か悪いことがあっても、良いことのほうがたくさんあって、価値あるものだと気付く。彼は浮き上がってくるどんな状況も感謝し、それに頭から挑む。顔にえくぼを作って、最高の笑顔を見せながら。彼は穏やかな青年で、怒っているところが全く想像できないタイプの人だ。彼が眉をしかめる所なんか全然思い浮かばないし、些細なことに堪忍袋が切れたり、重要なことにブチ切れることすらありえないだろう。彼はどうも先が想像できない愛の波のうねりに乗っているようだ。そこから眺めを楽しみ、愛を観察している。彼が目の前を見失わないっていうのは神聖的なものだよ。その高貴な輝きに彼は絶対驚いたりしない。
Brett Dennen Debut Daytrotter Session
Brett Dennen Official Site

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セットリスト
  1. Come Back Kid (That's My Dog)(Loverboy収録)
  2. Can't Stop Thinking(Loverboy収録)
  3. Intro/When You Feel It(So Much More収録)

"Comeback Kid (That's My Dog)" Official Music Video from Brett Dennen on Vimeo.

2011年10月25日火曜日

Whalers


The Great Struggle Of Others

Oct 23, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Matt Oliver
Mastered by Sam Patlove
Translated by Teshi




それはまるでWhalersの曲の中で出会う人々はただそのまま歩き続けたほう状況はマシになると分かっているのに、どうしようも出来ないみたいだ。事が始まる前に、止めてしまったほうがみんなも助かるのに。真夜中に「あっちへ進め」と指された方向を導く月の光もない。一緒に何日も過ごすのだからコンパスくらいあってもいいのに、それもない。困難は次から次へとやってきて、大して面倒じゃないことも酷い困難と間違いなく同じくらい面倒だ。テキサス州はAustinからやってきたバンドの楽曲からは憐れみが流れ出し、その感傷は10年以上も結婚していたり、1周年記念や銀婚式を迎えようとしている人々から出来ている。この二人は一緒にお酒を酌み交わした。ケーキも食べたし、旅行も行った。些細な喧嘩もしたし、くだらないことも一緒にした。どれほどお互いを怒らせる可能性があったとしても、大体は元通りになる。生涯を一緒に過ごすと決めた人だしね。

この長年連れ添ったカップル達--しかしWhalersの楽曲に現れる人々は実際結婚しているのか疑問だ。多分彼らは熱愛モードを通過中で、そこから振るいにかけてこの先どうなるか見てるんだろう--はすぐに「嫌々一緒に住んでる」と認めるだろう。でももう一人も同じ事を考えているから、別にどうってことない。その後二人はお互い笑いあって、もう何千回と同じように一緒に床に就くのだ。彼らにとって心無い言葉や叱責は特に意味を持たない。何週間か前にVermontで一人の女性に出会った。彼女はすごく優しい人だったけど、狂気じみた女性だった。彼女はいきなり「旦那がむかつくのよ」と言い出した。唐突だったけれど、ほとんど見知らぬ人に自由に差し出された彼女の感傷に満ちた言葉は、きっと二人は生涯を共にする運命だったんだなと僕に思わせた。二人は一緒に牛を育てて、チャンスがあればビールを一緒に飲んでるのだ。

曲の中にハラペーニョを突っ込み、ベースを重く、スパイシーな音を奏でるWhalersのリードシンガーのGus Smalleyは楽曲の登場人物が彼ら自身と絶え間なく変化する水域を探っているところを描き出す。この人たちは人生の最大の岐路に立たされ、「これが僕の一番願っていたことだ」という考えと、それと同じくらいに「もう最悪なことになった。世界で一番のミスを犯してしまった」という考えが交差している。ある人は生まれつき他の人に自信を与える能力を持っていない。それが情熱的な心の中の独り言を生み出す。Whalersは封鎖された空間でそのような不安定さを持っている。不安がみんなを物差しに乗せ、どちらの方向にも傾いていないな、と答えを出す。ただ、今ある問題がさらに複雑になっただけ。本当にさ、もう無茶苦茶だよ。

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. I Slept With Her Too(How The Ship Went Down収録)
  3. That Rabbit(How The Ship Went Down収録)
  4. Magic Tricks(How The Ship Went Down収録)
  5. Paddle Easy(Paddle Easy収録)
  6. Vagenda(Paddle Easy収録)
現在バンドのbandcampにてHow The Ship Went DownがフリーDL出来ます。

2011年10月24日月曜日

Adam Faucett


A Vision Of Ordinary Agonies

Oct 22, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi



ブコウスキー※は彼なりの方法で男に爪を食い込ませるようなダークな事を書いた。けっこう簡単に想像できることばかりだけど。女と愛と酒と中毒。大体は気がつくとすでに遅い。すぐに君の頭はぐるぐる回り始めて、かなり危険な状態に陥る。こういう種類の物事はみんなが想像出来るものと同じトラブルを巻き起こす。ほとんどの場合、そいつらは災害のようなものだけど、想像に反し、他に変えられない素晴らしいものである時、僕らにとびきり最高の気分をもたらす。僕らは大体結果がどうなるか分かっているけど、そいつらがそのポイントに達するまでにどんな新しい方法と言語を使ってくるか、気になるところではある。これからどうなるかが問題で、僕らは目が釘付けになっている。僕らは席の端っこに座って、我慢強く足元の床が抜けるのを待っている。そして新たな落下がどう感じるか実際に感じ、自分たちがすでによく知っている『落下』とどう違うか、何が似ているか確かめてやるのだ。

ブコウスキーはよく人生の一般的な苦痛とそれが--君が絶対願うようなことではないけど--最低でもどういう風に識別され、どのように人はそれに備えることが出来るのかを描いた。そういう事はもっとましな方法で対処するべきなのだけど...僕らは常に苦痛への道へ直接向かっている(或いはそこにいた)ってことを理解しなくちゃいけない。道は分かれていないし、僕らは移り気な性格ってわけじゃない。いずれそこに衝突が起こるだろう。だから僕らはそこに立って、一般的な苦痛の魔の手に戦いを挑む。心は動かされない。何故かと言うと、彼が言うように「そこには常に違う種類の人間が充分すぎるほどいる」からだ。そいつらは誰からも見られたことがない「普通でない」苦痛。僕らの腹に、背中に直接食い込み傷跡をどんどん広げて行く。

ArkansasのAdam Faucettは一般的な苦痛に少し違った方法で対処するみたいだ。ほとんどまるで「苦痛はある地点でみんなにやってくるものだし、たとえ気付かなくても、注目を浴びるべきだ」と言っているみたいだ。たとえ苦痛がかなりの数やってきても、それらは小さい子供の失敗を気にかけ、面倒を見るのと同じ方法で治療される。何か時間の無駄にも感じ、肌割れを作るものでもなく、適当に気をかけて、慰めのキスをしたりケツを叩けば奇跡的に治るようなものだ。「今からまた遊んであげるよ~」とでも言っておけばいいのだ。

Faucettの楽曲の世界では人生は辛いし、人々は心配事に常に悩まされている。彼らはそれがバランスを崩し、巨大な嵐が大暴れした時に僕らの心を和ませるような苦難だと気付いていない。庭の周りには木々の根っこや破片が散らばっていて、掃除しなくちゃいけない。けれど今まで以上に空は最高に輝いているし、ずっと見ていられる。全ての悪が消え去ったか確認しておかなくては。今のところは。一般的な苦痛はまだ消え去っていないし、Faucettの新しいフルLP"More Like A Temple"でも簡単に対処できるものとして描かれてはいない。彼は"The Way You See It"で

「車のバックシートで酔っ払って粉々に体は飛び散った」

そしてほとんど意気消沈しながら

「はっきりいうけどさ、純粋な時代なんてないんだよ」

と認める。彼は6つのカラスの軍隊を見て、それをすぐに自分の姿を反映したものだと考える。そして一般的な苦痛を何かビジョンとして作り上げるのだ。
Adam Faucett Official Site

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Morphine(More Like A Temple収録)
  3. Song to the Siren(未発表)
  4. The Way You See It(More Like A Temple収録)
  5. Crows(未発表)
  6. Sparkman(未発表)

2011年10月23日日曜日

Robert Ellis


Keep The Damn Hopes Alive

Oct 21, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered and mastered by Matt Oliver
Translated by Teshi




Robert Ellisの新作"Photographs"の最後まで聴くと、彼が僕達が一番信じたくなかったことを確信させてしまったことに気付く。それは僕らが今経験している愛--うまくいっていて、絶対に崩壊しなさそうな恋愛関係が、悲しくて残念な年寄りに感じるものと同じだということ。だからこの先どうなるかは実際に起こってみないと分からない。New West Recordsからデビューアルバムをリリースしたばかりの若いHoustonのソングライターEllisは、愛が消えて行くタフな確立と予測のつかない展開についてかなり理解しているようだ。真の毒物は、愛情が時間と邂逅してしまうことだ。最初は全てが新鮮だった愛も必ず毛糸のようにほどけて、朽ちていくものなのだ。愛は自由を求めて、道路を横切る時両サイドを確認するのを止める。あるいは2倍以上、あらゆる方向に注意を払うようになるかもしれない。Ellisは多くの時間を絶対に古くなることの無い考えを追求することに使う。それは愛する人の元へ帰ること。そこへ辿り着くまでに数々の道を乗り越え、決まった交差点とジャンクションを通る時の気持ちを歌にする。彼は、何ガロンもコーヒーを摂取して、タバコも大量に吸って、時には自分の頬を打って、自分の帰る道を何度も歩いてゆく。たとえ辛くても、全部愛する人のお帰りのキスのため。再び腕の中に初めて彼女を抱くために。




彼は関わらないでおこうと距離を置いていて、このような今まで考えたくも無かったことを現在追求している。しかし長い時間席を空けていたし、彼の心の一部ではもし不在の間彼女が落ちつきが無くなって、その時一緒にいて彼女を見守ってくれた誰か違う人に興味を抱いたりしても彼女を責められないと思っている。その考えに彼は頭が狂ってしまいそうになる。精神的に自分の目玉を引っこ抜いて、小さな足で踏み潰してやろうと考え始めてしまう。彼は"No Fun"という曲でこう歌う

「それで僕が優しいから意地悪になれないとか思ってくれるなよ/これだけははっきりさせておきたい/もし君が浮気なんかしたら、すぐここから出て行ってもらうからな/僕が家にずっといる間に外で踊りにでかけるなよ/誰かといちゃいちゃロマンスに走ったりするなよ/というか、僕がいない時は楽しいこと一切するんじゃないよ/誰ともな/誰とも面白いことなんかするな」


吟遊詩人の様に街から街を旅し、歩道をのしのし歩く彼はこの偏執狂的な考えに圧倒されてしまった。彼はきっとかなりの数誘われているだろうが、家に一人ぼっちで残る彼女がなにか怪しいことに身を乗り出しているべきではない、という猜疑心に脅されている。でも僕らはこの彼女のことを信じている。彼女はきっとそんなことしない気がするし、彼の曲に登場する男達もそれを信じたがっている。彼らは素晴らしい女性を見つけたのだ。一緒に部屋の模様替えをするのはきっと彼女だ。一緒に将来を作り上げるのも彼女だ。...でも実際にどうなるかはわからない。そこにはささいな疑問とためらいがある。するとこの先10年後、何が起こるのだろうというアイディアが沸いてくる。Ellisはまた「年をとってもいいことはなにもない」と主張する。じゃあ不可能に抵抗することを考える時、僕らはどうすればいいんだ?絶対に崩れない愛を探せって?彼は歌う

「多分僕達は乗り越えられるだろう/君の手料理も好きだし、ルックスも素敵だしね/僕は君と一緒に年老いていくところが想像できるよ

そして君は彼のナイーブな言葉に身を包みたくなる。どんな恐怖もそういう風に簡単に洗い流せればいいなと思う。Ellisは良き愛が行き渡り、老いていくことがそんなに酷くならなければいいなと願っている。クソ、間違いなくこの二つの願いは両方とも叶うチャンスは間違いなく低いじゃないか。何故彼がカントリーソングを書き、何故それが素晴らしいのかこれで分かった。
Robert Ellis Debut Daytrotter Session
Robert Ellis Official Site


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セットリスト

  1. Welcome to Daytrotter
  2. Friends Like Those(Photographs収録)
  3. What's In It For Me(Photographs収録)
  4. No Fun(Photographs収録)
  5. Ruby(未収録)



Yellowbirds


Safe From The Tension

Oct 21, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi




嬉しくなるほど誰からも必要とされていないと感じられる場所まで逃げるために必要なスペース...その距離感は一人一人違うものだけれど...。それは魅力的なもので、何か目を閉じて夢に思うようなものだ。結構な人はそれをよく想像するはず。僕はそうだよ。彼らはただこの静止状態から逃げ出したくてたまらない。まるでコロナビールの広告キャンペーンがテレビで流れているみたいだ。それはマンハッタンでビジネススーツに身をまとった人たちがバーの外にあるベランダでライム入りのコロナを飲むだけで現実から逃れられるというCMだ。彼らは特に会話もせずに真っ直ぐ前を見て、自分たちが水着姿で海を見つめながら、周りは砂に囲まれ、気持ちよい太陽に包まれている。時にはそういう気持ちになることも必要だけど、最近はもっと必要な気がしている。

Yellowbirdsのリードシンガー、Sam Cohenは出来るだけ自分の手で僕らを遠くまで連れて行き、大陸の先端まで、野生の海が始まるところまで僕らを導く。小波がふくらはぎを打ち、海の中に歩いて入っていく間、自分の本能を叶えることが出来ないという不思議な緊張の中、ためらいを感じている。それでも視覚と聴覚が研ぎ澄まされる水と自由の中を泳ぎまわる事に恩恵を受けている。それはほとんど全てを捨て去るという事だ。水の膨らみと波に飲み込まれて、それでもいつも水のてっぺんを見つけることが出来る。そこから飛び出した時に、自然の力に支配されながらも、不完全で思いやりがある動物としてまだ生きていることに強い恍惚を感じている。

バンドの最新作"The Color"に収録された"The Color II"の始まりでアライグマがおしゃべりし、山に住む鳥達が歌っているのが聴こえる。動物達は完璧に目覚めていて、僕らの頭の中には森の中の葉の天蓋から差し込む太陽が思い浮かぶ。その森はずっと忘れ去られ、静かで、彫像の様に威厳があり、一生自分の目では掴むことが出来ないくらい1スクエア毎にたくさんの命で溢れている。Cohenは

「僕らは夢を見るために生まれたんだ」

と歌い、その言葉を基に"The Color"を色づけた。ここに収録された楽曲は僕らの手中にあるものや、手に入れたいものの間にあるトゲトゲしい部分をぼやけさせているようだ。Yellowbirdsの音楽はどこか雲の中からぼんやりしたハーモニーとメロディーがある場所へ逃げ出さなければならないと思わせる。それが戻らなくてはならない所へ戻りたくないと思う全ての瞬間を捉え、その瞬間が僕らの目を大きく開かせ、そこにあるものに感情的になる。そして手が届かないものに対し感情的になり、そのせいで静かにいじめられている気分になるのだ。
Yellowbirds Official Site


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セットリスト

  1. Welcome to Daytrotter
  2. Come On Let's Go(未発表)
  3. The Rest Of My Life(The Color収録)
  4. Our Good Days Are Gone(The Color収録)
  5. Pulaski Bridge(The Color収録)
  6. In Our World(The Color収録)
  7. The Honest Ocean(The Color収録)




Vetiver


For The Cider, The Cocoa And The Nip

Oct 20, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Julian Dreyer
Translated by Teshi




僕は西海岸で起こる季節の変わり目がどんなものか良く分からない。特にカリフォルニアはね。でも、なんとなくVetiverのAndy Cabicは幼い頃にNorth Carolinaで過ごしたせいか、西海岸の季節感を理解しているようだ。歩道は寒くて剥き出しの 冬に備えて木から舞い降りた黄色く紅葉した葉っぱで華々しく輝いている。まだ少し息が続いている(ほとんど死んでいる)葉っぱの毛布はそこに横たわり、元気一杯の子供達の駆け足で乾き、宙に舞い上がるのを待っている。僕らは行く先にある葉っぱをホップしながら蹴り上げて、四つある周期的な、はっきりとした季節の違いを笑顔で噛み締める。

Cabicは毎年秋を楽しみに生きているのだな、と感じ始めた時、僕らは彼の気持ちが何となく分かるようになる。彼は手袋をした手でしっかり発泡スチロールのカップに入ったホットチョコレートを包みこみ、そこから吹き上がる香りを吸いこむ。目を閉じて甘い香りと暖かさを味わい、もう一年ほどクローゼットの奥にしまいこんだセーターを引っ張り上げて、いつもより上から服を重ねられる日を楽しみにしている。それを着ていると本当に心地良いし、それが待ち遠しくてたまらない。Vetiverの音楽は冬の季節に登場する甘い林檎酒のようにスムーズで心を和やかにし、一口飲んだだけで体は芯まで温まる。それが喉を震わせ、いつの間にか僕らは溌剌と元気になるのだ。鼻と耳を刺す寒さは何とか耐えられる。

彼は音楽を焼きあがった色--完熟した林檎の燃え上がるような赤、ブラッドオレンジの月明かりのようなオレンジ色と深い黄色--で染め上げる。まるで夜が長くなり、白い息が出るような寒さが僕らを屋内まで追い込む時の音が蘇ってくるようだ。白い息は頭や口の周りを飛び交って僕らに話しかけているみたい。まるで彼は焚き火やそれを囲む仲間たちのことを考えながら曲を書いているようだ。(焚き火は)特に急いでどこにも行く場所が無い時、仲間と恋人達が集まるには最適だ。そこで笑顔やハグが交わされる。君の事を大事に思って、絶対に君を離したくない人たちからの真実の愛情表現だ。この笑顔とハグを時には空っぽの目を輝かせながら思い起こす。そして君は頭の中のモヤモヤと記憶を振り払い、君が作った炎は小さいくすぶりになるまで燃え尽き、寒さでつま先が感じられなくなっているのに気づく。だから君は中に入って、まだホットチョコレートとあったかい林檎酒が残っていないか確かめに行く。
Vetiver Official Site
Sub Pop Records


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セットリスト
  1. Here Tonight(未発表)
  2. Worse For Wear(The Errand Charm収録)
  3. Wonder Why(The Errand Charm収録)
  4. Wishing Well(未発表)


2011年10月20日木曜日

Summer Camp


The Pull, The Chase And The Collateral Damage Of The Love Bug

Oct 19, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Will Kreinke
Mastered by Sam Patlove
Translated by Teshi





だいぶ長い一緒に過ごすと、誰が誰を最初に見つけたとか、最初にアタックしたのはどっちとか関係なくなってくる。結局はどれも短命なもので、それにこだわる必要などあまりない。そういう非常に小さい詳細は結局他の広大な海の中で忘れ去られるものだしさ。もし二人の人間が付き合っていて、また、その二人が長い間つきあっている様に見えたら、出会いの事実--その時何を着ていたかとか、何月何日だったとか、後日談とかデート期間とか--はいずれすべてどうでもよくなる。二人は今も一緒で、出会いは昔の話。その時誰が積極的だったとか、運悪く予定がうまく建てられなかったのはどっちだったとか今となってはあまり意味が無い。

このロンドンのデュオSummer Campの音楽から聞こえてくる物語は両方のサイドから語られる。恋愛関係のコントロールを執る側と、それに喜んで従う側だ。二人が共有するロマンティックな喜びが物語の中で語られ、中には君が「誰か救助が必要かな」と不思議に思う瞬間もある。でもまた、出会いと誰かとの長いお付き合い--愛し、特に愛し続けるためのもの--は結構過激なスポーツで、長い爪で大声で唸ることが出来る側の方がうまくいったりする(比喩的にも、文字通りにも)。そしてそれが結構重要だったりするのだ。

実生活でカップルのJeremy WarmsleyとElizabeth Sankeyは驚くほど魅力的な(恋愛の)動物的ニーズと本能の雰囲気--追いかけっこや、作戦に載っている次のプラン--を作りあげる。このムードは彼らの個人的な好みや性格にフィットしていないようだけれど、彼らのデビューアルバム"Young"に収録された曲のトーンを成立させるには上記のような好みや性格の方がうまく表現できるみたいだ。大体は超元気なバージョンの淡く幼い恋が出来上がるのだが、中には全く違うものもある。それは二人の関係が一番面白い時に現れるのだ。Sankeyはたまにに可愛い声と振る舞いで恋愛の主権を執り、それがキャラクターに人が悪くダークな性格を与えているなんて誰も思ってもみないだろう。かわいそうなWarmsley(あるいは彼が演じるキャラクター)に同情せざるをえない。何故って、もし彼女が自分が欲しいものを手に入れられなかったり、すぐに手に入れられなかったりしたら、時より体を痛めつけようと甘い声で脅迫してくるんだから。ああ、でもそんな時でさえ彼女は本当に愛らしいんだよ。たとえそれが少し歪んでいたり、伝統的なものでは無くても、そこには忠誠、情熱、純愛によって出来上がった二人の繋がりがある。彼らの曲の中には一貫して甘い言葉が交わされ、何が起きても解決策がある。それは違うフォームを必要とするが、二人の間には危険なエッジが含まれていて、僕らは次に何が起こるか気になってしょうがない。誰かの骨が折れたり、壁に皿がぶつけられたりするかもね。もしかしたら、公園の中で彼らの子供が遊んでいるのを目撃するかも。え?そんな事全部が全部起こるはずがないって?今の時代に何言ってるの?
Summer Camp Official Site

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セットリスト
  1. Whole Wide World
  2. Ghost Train
  3. Round The Moon
  4. I Want You



Lydia Loveless


New Outlaw Of An Old Nashville Lost

Oct 18, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi


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まずLydia Lovelessが1000%悪いやつだって考えたくなるだろう。つまり彼女があらゆる種類の問題を抱えていたり、自ら問題だらけの男達の輪に入っていくと信じるということだ--彼女をこんな不良に変えてしまった男達の中に。彼らは少しの間彼女をいい加減に扱い、彼女はそれに我慢しただろうけど、結局は打ちのめされてしまった。それから彼女は蘇り、もうそんな悪態を許すことはしなくなった。彼女は立ち上がり、ブーツの裏には蹴爪が装備してある。彼女の舌と目の横にも針がついている。彼女が歩くと、まるでジングルベルと二つナイフが研がれているような音を組み合わせたような音を立てる。地面の埃を立てながらドスドスと歩き、彼女に酒を挑んだら絶対に負けるような気がするだろう。まあ彼女はただのクールな21歳なんだけど。

彼女は昔から飲んでいただろうな..ずっと長い間鍛え上げられてきたはずだ。多分彼女が育ったオハイオ州の小さい街にある父親のカントリーウェスタンのホンキートンク※で。きっと若い頃からこっそり一杯やったり、すすったりしてたんだろう。その酒場で聞いた音楽の中に溢れる悲しみと一緒に飲み干していたはずだ。彼女は

「良い子でいると、心の中から腐っていくわ。」

と歌い、彼女が内側から殺されていくことに耐えられないのが分かる。だから変えようと思ったのだろう。彼女はトランプの束をシャッフルし、自分が勝てる以上のもの、耐えられるもの以上に負けないことを確認する。若くして、Lovelssはすでに女性として、ソングライターとして粋でセクシーで、尖ったパーソナリティを磨き上げた。彼女は辛辣で、もったいぶらずにあからさまにし、絶対に手加減しない。でもしっかりと正確な方法と手段でそれを歌い上げる。

彼女の残念な物語は何度も何度も彼女に起こったアホらしい事で、何かそれに文句を巻きつけないとやっていられない。それを彼女は女性らしく、礼儀正しい作法で、瞬間的に堕落を入れ込む。その物語は省略したりせずに、あらゆる擦り傷や汚れ、印や黒あざを伴わなければならない。黒あざは今に起こることかもしれないけど。"The Only Man"や"Indestructible Machine"に収録された幾つかの曲には頬に全力でビンタをされた跡が残っている。タマに蹴りも入れられている。彼女は男と女の関係をリアルに描き出す--ほとんどは全くロマンティックじゃない。彼女はこういう別れの瞬間を歌い、実際に僕らが経験しないと見られないような刺激的なインタルードを曲に与える。それらは切れ味は悪いが、ずばっと要点を述べる。こういう物語を男性ソングライターはファンシーに描いたりするが、Lovelessはまず「絶対にそんな弱虫にはならない」と君に言うだろう。彼女はストレートにそれを僕らにぶつけ、甘い痛みを僕らに残す。まるで昔Nashvilleで書かれ、演奏されていた曲と同じような感覚で。
Lydia Loveless Official Site

※Honkytonkとは安い酒場のこと。ラグタイムによるピアノ演奏という意味もある。

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Paid(The Only Man収録)
  3. Things I Do(The Only Man収録)
  4. Back On The Bottle(The Only Man収録)
  5. More Like Them(Indestructible Maschine収録) 
  6. Always Lose(The Only Man収録)


2011年10月19日水曜日

Richard Buckner



So Much Of The Sweet Pain

Oct 17, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi



この二日間、僕にRichard Bucknerと同じように物事を考えようと思わせた人はほとんどいなかった。また、彼と同じような感受性で物事を感じようと思わせた人もいなかった。何故かは簡単には説明できない。彼は別れのキスと同じように僕らを痛めつける--これっきりで最後だと自分でも察してしまうキス。それは僕らが『最期の痛み』と関連付けることができるものだ。しかしその中にはあらゆる『生』が存在している。たとえ最期だとしても、そこには何かエネルギーに満ちたものがあり、その苦しみから芽を出そうとしている。まるで不信感が掻き立てられ、この瞬間「いつか再び君達を笑顔にして見せよう」という予感があるようだ。それは暫しの休息の後、唇が乾いたところで僕らの目の前でピシャっと終わったりはしない。終わりは僕らが全く予期していないときに突然やってくる。僕らが昔手にした何か素晴らしいものに着飾りながらやってくる。それは元々抱いていたイメージと全く違うものだった。昔の方がもっと良かったよ。

Bucknerが物事を観察し作曲する方法は孤独な旅人や放浪者がするのと同じ方法だ。ブンブン唸りをあげて、動き回りながら、独房監禁の先送りされた不快さに同情し、それに応えることが出来る。。肌を震え上がらせる恐怖は決して消えることがない。君の側にある誰かの肌の温かみを感じる合間に堕落へ導く横穴が尽きることなく並んでいる。腰を据えて聴いてみると、Bucknerの曲は怖ろしい。その怖れは、彼が僕らが自分でも気付かなかったような心配や不安に目の前で直面させるからだ。あるいは心の奥の柔らかい部分、自分の一番脆い部分に常に隠れていると思っていた感情と対峙させる。手に届くものだけを口にして、大きい力に征服されないように最善を尽くしてきた。けれど、Bucknerはその大きい力を粒子の様に小さいものとして差出し、僕らが一番参っているときや凹んでいるときにやってくる。彼は最悪な気分のときに、最悪な瞬間を僕らに思い出させるのだ--寂しそうな鳥の鳴き声、黒焦げになった残りの物の美しさ、そして炎。

彼はカウンセラーのようだ。まるでかなりつらいことを経験した友達のように聞こえる。もし誰かが僕らを導いてくれるとしたら、彼しかいない。彼は冬の毛布。彼は冬の厚めのコート。突き刺さるような風から僕らを守ってくれる。彼は

「一番寒い時間に体は震え、まだ気にしないようにしている」

と素晴らしい最新作、"Our Blood"に収録された"Gang"という曲で歌う。まるで心の一部を切り取ったみたいだ。ほとんど口にしないけど、これはいつも頭の隅で考えていることだ。彼はよくこの手法を用いる。部分的に心を打ち明けて、彼の魂に刻まれた言葉を前に押し出すのだ。彼のベストソングの一つ"Willow"にて彼は昔を振り返り、完璧な葛藤で曲を終える。反対の方向で誰かにそれを思い出せるか尋ねている。彼は歌う。

「まだはっきり覚えている/部屋の窓が思い出させてくれる/君が部屋の光がどこからはいってくるのかしらと考えているところを見たんだ/ドライブにでも行こうよ/秋はもうすぐだよ/でもいつもとおなじ/柳が月にお辞儀している・・・/僕はここにいたらいけないんだ/でもどうしたらいい?/君は思い出せるかい?/君は思い出せるかい?/君は思い出せるかい?」

最後のラインを三回繰り返し、Bucknerは毎回抑揚を変えて歌う。特に最後の一言を一番大きな声で...そしてこの録音ではため息をつき、もうどうしようもならない消滅した希望、脆弱な希望をあからさまに表現する。何を思い出すべきかわからなくなる時がある。しかしBucknerはそれがどれだけ大変だろうと僕らが全部思い出すことを願っているようだ。普段受け入れることができるよりも、もっと優しい痛みに僕らをもっと導くことだろう。じゃあそれでいいよ。
Richard Buckner Debut Daytrotter Session
Richard Buckner Official Site

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Gang(Our Blood収録)
  3. Willow(Our Blood収録)
  4. Thief(Our Blood収録)


2011年10月17日月曜日

Into It. Over It.


The Very Moments When They Strike

Oct 16, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi



もしEvan Weissにグラスになみなみ注がれたビールをあげたら、彼はきっとグラスの縁をじっとみつめて、その部分が液体の表面とどれだけ近いかメモをとるだろう。そして、そのグラスは悼まれるべき存在なのだと推論することだろう。もしビールが容器のギリギリのところまで上がってこなかったら、彼はきっとその飲み物をほとんど死んだものとして扱うだろう。彼にとってはそれも「フルに注がれた飲み物」なんかではなく、わざわざちょっかいをかける価値もないものだ。彼が作り上げ、指揮を執るInto It. Over It.で音楽家としての彼の一般的な哲学を極端に説明するとこういう事になる。

この男の中には数々の憂鬱があふれ出している。あるものは人を衰弱させるようなものだし、あるものはどちらかというと普通に見える。彼は恐怖や、悲痛でブルーな気分にさせる感情に悩まされている。それは人が生まれながら備えているような感情だ。彼は出来るだけ寒々しく物事を見つめる傾向にある。それは別に間違ったことじゃない。そうやって素晴らしい歌が生まれるんだし。でもっとその気持ちを心に置いたまま過ごすのは全く健康的じゃないよね。きっと君をすごく苦しめるに違いない。まるで冬の季節、路面の塩分が車の下部にひっついて機体を消耗させるように。それはプラーク(歯垢)だ。健康を守る保護面が粉々になるまで、そして君を安全から隔離するまで居座って君を蝕み続ける。君はそれで何日も無駄にして、夜の楽しみも削られる。そして君は鏡の中に映る自分のくたびれた姿に気付かされる。でも鏡の中の人物は君を震え上がらすことは出来ない。君は「まぁどうしようもない」と言って、歯磨きを終わらせる。

Weissは僕らを溝の底、忘れ去られたゴミが溜まっている場所--ひき逃げにあった生き物が適当に捨てられ、腐敗し腐食性動物(ハイエナなど)の餌になる場所--へ僕らを導くことにかけて、大変優れた作家だ。彼が向かうのは「何か重要な変化が起こるような気がする」と僕らに感じさせる場所だ。彼が振り返る暗い時代の最底辺は、「もし朝までに何も改善されなかったら、どうにもならないよ」というセンセーショナルな輝きを放っている。彼は"Bustin'"という曲で

「何かフォーカスがそこにあるんだ/眠らないための特別な方法があるんだ/そんな無茶苦茶な事をするのは特別な人間だけだろうな/でもそれはただの始まりなんだよ/ただの小さい部分/僕らを作り上げる小さな部分/やりたいことははっきりさせる/気をつけて言葉を選ぶ/耳に入るものは何も信じない/まだ声を張り上げなきゃいけないことがあるから。」

と歌う。彼はろれつが回らない酔っ払いのがするようにただ口から出てくるに言葉について歌い、すぐそこに、今この瞬間に顕現(気づき)がやってくるのだ。 衝動とともにやってくる。前もって予報なんかされないし、だからみんなはそれを追いかけ、信じようとする。Weissはこういう酷い状況はいつやってきてもおかしくないと信じている。だから彼は(寝ずに)目を開いてペンを動かし続ける。

Into It. Over It. Official Site


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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Nashville, TN(Twelve Towns収録)
  3. Pinky Swear(52 Weeks収録)
  4. Bustin'(未発表)
  5. Anchor(52 Weeks収録)
  6. Raw Bar(未発表)



2011年10月16日日曜日

Sharks


The Days Of The Malaise, And The Fights

Oct 15, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi



Sharksのお陰で今夜、そう今この瞬間起こっていることは--まるであらゆる種類の夜がそうであるように--両端から燃やされている気がする。まるで炎が深夜の油さしによって燃え上がり、その部屋はオイルの臭いで充満し、「絶対に消えないぞ」とやる気になっているようだ※。目がやられて、足がくたくたになるまで、燃えて燃えて燃え続ける。それか、話にろれつが回らなくなったり、太陽が顔を出すその時まで燃え続ける。リードシンガーのJames Mattockの口から出る物語やシチュエーションは、ほとんどの人が安らかに眠っているときに外に出て、朝重要な用事があるときは夕方をずっと寝て過ごすようなものだ。こういう時間にまだ寝ないで、イライラして徘徊している人たちは何とかして全てを結び付けようとしている。ラストオーダーがかかる時間に、家へ帰る前に何か最悪なことが起こってストリートをふらつかないで済むように。

この時間帯は悪魔が一番忙しい時で、まるで彼らもそれを知っているかのようだ。彼らは爪の先からぶらさがって、目に見えない多くの敵や彼らが必要以上にジャブを浴びさせる奴らと戦っている。彼らはほとんど全ての成り行きに不満を感じている。みんなの彼らの扱い方とか全てに。これは決して終わらない、決して型から抜け出せられない物語。その物語はまるでまだ時計に時間が残っているみたいに感じられる。まるでそこには楽観的な考え方があるみたいだ--もし、ちゃんと慎重に行動して、灯りの下で歩き続ければね。その灯りは空の色と矛盾してどんどん琥珀色に、どんよりと変わっていく。まるで悪魔の上に勝利が輝いているように。こういう夜は終わりが見えないものかもしれないし、たった一度だけ悪魔がヒーローになれる夜かもしれない。ヒーローが彼らにとってどういう意味になるのかわからないけど。彼らはただどこかにあるわずかな希望の光を探しているだけで、Sharksは今年リリースした"The Joys of Living 2008-2010"のほとんど全ての楽曲ででそのぼんやりとした光を求めている。このレコードはHold Steadyの"Boys and Girls In America"と同じような感情を題材にしていて、そこにも生々しい不満が充満していて、何か良い事が起こることを必要としている。

UKのRoyal Leamington Spaからきたグループは人間の精神の数え切れないほどの種類や、それらが煙の中でどのように見えるべきかを教えてくれる。いや、代わりに魂はアンセムをシャウトしているのか。魂はゴミ捨て場から這い上がろうとしている。魂は、もう充分すぎるほど目にしてきた同じような日々から抜け出すために必要とするのと同じくらいの最後の力を奮い起こしている。

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セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. It All Relates(The Joys Of Living 2008-2010収録)
  3. Blood Buzz(未発表)
  4. Glove In Hand(未発表)
  5. Fallen On Deaf Ears(The Joys Of Living 2008-2010収録)


2011年10月15日土曜日

Hands


Running On Sun And Magic Fingers

Oct 14, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi






このロスアンジェルスのバンドはこのセッションが録音されるまで大分長い一日をすごした。ロスからシカゴまで(眠れず)目が赤くなるような飛行機に乗り、そこから車でアイオワ州のMaquoketaまでBarnstormer 4(Daytrotter主催の移動型フェス)の最終日に参加するためドライブしてきた。何日か多くショーに参加できるはずだったんだけど、その前の日はメンバーの一人が大学院の最後の出席日だったのだ。彼は最終試験を受けて空港に向かった。彼は試験勉強のために寝ない夜を過ごし、テストの時間が彼の睡眠時間をさらに削ってしまっていた。深夜の飛行機旅行があって、夜にはショーがあった。その次にお疲れ会が明け方まで続き、次の日の昼過ぎにはこのセッションの録音。そしてシカゴまでドライブして、ロスまで飛行機。運任せの旅だった。この日四人組は体をどんどん駆使していたけれど、Handsは僕らが自殺行為的な旅を無理強いしてまでセッションを頼み込んだ理由を全て表現してくれた。



今考えても「イエス」と承諾してくれたのは驚きだし、(このセッションを聞くと)その努力もかなり報われたと言えるだろう。このバンドのことはSXSWのパフォーマンスやシカゴの友達、そしてSolid Goldの仲が良いメンバーがビッグオレンジスタジオから何ブロックか離れた駐車場で晴れた暖かい3月の夕方、デイショーに参加していたときにきまぐれでみかけなかったら知らなかっただろう。ちょうどOdd Futureが僕のライブショーに対する概念と人々が彼らのショーに入場する所を覆すのを目撃する前に、僕らは何ブロックかSolid Gold、JBMのJesse Marchantやミネポリスの仲間達と一緒にストリートを下っていった。メキシカンフードの屋台やタトゥーパーラー、裏庭で鶏を飼っている家なんかを幾つか通り過ぎた。会場を発見したので、僕らはそこに入り、無料のメキシカンビール(Tacote)をゲットしたとき、ちょうどHandsがステージ上に立っていた。

すでに日が差して暖かかったのでどうしてもサングラスが必要だったけれど、バンドがさらに僕らを心地よい気分にさせた。その時充分ビールを体に注入していたけれど、彼らはさらにビールを飲みたくさせた。すでにかなり最高の気分になっていた。あの場にいられて最高だったよ。僕達は毎日の日課を避けて、イライラさせる事や仕事を(ある意味)避けていたのに、Handsはまるで僕らがボーナスを獲得しているような気分にさせたのだ。ストレスなんか忘れて、気楽になった。なにがそうさせたのか良くは分かっていなかったけど。彼らを気に入ると、なぜそうなるか説明できないことが出てくるのだ。ただ察知する。とにかく好きになる。Handsが僕らにそうさせるのだと気付いた。きっと君にも同じ魔法をかけるだろう。君にまるで「太陽の光を浴びすぎている」と感じさせるはずだ。"Magic Fingers"のベースが入ってくるとき、君の背中は日に焼け始める。そしてエコーがかかった"Hey"が壁に反射するときも同じだ。なんで日焼け止めぬらなかったんだろう、と君は後悔し始めるけれど、いつのまにかそんなことも気にしないようになっている。後悔なんて年寄りがするもんだ、自分はそんな年に達していないと知る。君はすこし現実から離れてもいいじゃないかと自分を許す。このバンドがしていることをいまだに、時より実行する。風の中に心配事を放り投げて、何日か寝ずに過ごし、ただそこにあるものを感じる。たとえそれが体に悪いことであっても、太陽を頭の上に輝かせる。田舎の真ん中にナイトパーティーがあれば、構わずそこに行くだけなのだ。
Hands Official Site

試聴・ダウンロード

セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Come To Know(未発表)
  3. Magic Fingers(未発表)
  4. Brave Motion(未発表)

Maritime


Warriors In The Moonlight

Oct 13, 2011

Words by Sean Moeller
Illustration by Johnnie Cluney
Recording engineered by Mike Gentry
Translated by Teshi




年をとるたびに、いま自分が手にしている物、あるいは自分の居場所の良さをもっと見出すようになる。まあ、全てが全てそうなるわけではないけれど、そうなる場合の方が多いよね。時間がたてば、うまくいかなかったことも許すようになる。過去を振り返ってみても、一体どのように事態が変わっていたか想像も出来ない。今はずっと頭の中で思い描いていた様な子供を育てている。子供達は尽きることなく僕らを驚かせ、楽しませてくれるけれどね。今住んでいる場所も思い描いていた所だし、結婚した人も同じようにずっと一緒になる(あるいはずっと繋がっている)と想像していた人とほとんどマッチしているし、趣味や熱中することは以前とずっと変わらない。もし僕らが10代の頃に新聞に掲載されている野球の成績のデータやジョークのページを(全く面白くなくても)穴が空くまで熟読してたら、まだこの年になっても同じ事をやっていると気付くだろう。同じようにもしその頃ギターをかき鳴らして曲を書いてたら、今も同じように熱中しているだろうし、そこから離れることは難しい。あの頃のようにいまだに言いたくなることや、言わなきゃいけない事もたくさんある。僕らは頭で思い描いていたのと同じように年をとった(あるいはその最中だ)。僕らは数値を計算する。僕らは唇まで垂れた子供の鼻水をぬぐい、何も考えずにそのままバックポケットにそれを詰め込む。

今僕らは外に出て喧騒から離れた静かなバーを探している。欲しいのはビールと、最高でも二人の友達だけだ。ドラマチックな出来事なんかいらないし、トラブルもごめんだ。特にアメリカ中西部に住んでいると、どこか比較的に交通渋滞の心配が無いところに住みたいと思う。僕達は--確実に妻も--ヒゲを伸ばしたままに出来るのが気に入っている。裏庭ではウィッフル・ボール※を楽しんだりする。続けるとかなり長いリストができるだろう。でも全てが嫌味なく、心配もなく、さらには心地よく思える人生のピリオドに達するまでにはかなり時間を要するのだ。



ミルワーキーのバンドMaritimeはこの種類だ。バンドメンバーは全て父親になり、一緒に年を重ね、インディーロックがクラブでもてはやされはじめた期間に、そこをあえて横断し、自分たちが心地よく思える場所へ責任と献身を持って抜け出したのだ。彼らは観客がショーに来てくれるのは嬉しいけれど、それ以外ではあまり関わりたくないと思っている。Dangerbirdから初のリリースとなるバンドの最新作"Human Hearts"の楽曲は、消え行く時間やトレードされる時間が形成されている様な印象を受ける。そこには過去の振り返りがあり、それ以上に毎日僕達が耐えなければいけない馬鹿馬鹿しい苦難に対する意味が築き上げられている。でもいずれ時間がたてばそういう事も問題視せずに、「楽しいこと」に思えるようになるのだ。Davey Von Bohlenの歌詞はノロノロとかなり遅い速度で変わっていく人々に対する時間の変移を承認しているようだ。ただ何かが引き継がれているだけ。

"It's Casual"という曲で彼はこう歌う。

「脅し、脅される人々の間では嫉妬が芝生を青々と成長させる/僕らは嫉妬心を振り払う。そうすれば一晩中踊っていられるから/僕らは月の下では戦士だった/そうだろ?/間違ってた?/僕らはまだまだ戦い続けるのか?」

戦士だったらきっと死んだ兵士のような鎧を着ているだろう。アルバムカバーのように虹の下に横たわりながら。それか男達が違う戦いに挑んでいるだけかもしれない--ただビール腹を取り除こうとしてるだけなのだ。そう考えると楽しい戦いになるね。それなら許すよ。
Maritime Debut Daytrotter Session

Maritime Second Daytrotter Session
Maritime Official Site

※ウィッフル・ボール(Wiffle Ball)とは空洞で穴の開いたプラスチックボールを使った野球のこと。

セットリスト
  1. Welcome to Daytrotter
  2. Paraphernalia(Human Hearts収録)
  3. It's Casual(Human Hearts収録)
  4. Peopling Of London(Human Hearts収録)
  5. Open Roads(未発表)



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