2011年12月18日日曜日

The Jon Spencer Blues Explosion


Skuzzy, Dirty, Perfect Irrelevant Relevance

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Matt Oliver, Mastered by Sam Patlove, Translated by Teshi




























Black Keysを嫌いになる理由なんてある?僕らは色んな良い理由で、彼らにクレイジーになっているんだ。彼ダーティーだし、オハイオ出身にしては結構セクシーだし、超やんちゃでクール。でも彼らのことはそこで置いといて、彼らの前に現れた、昔からのいやらしくてダーティーでエロいバンドのことを紹介しようじゃないか。Black Keysよりも、Jon SpencerとBlues Explosionを愛さない理由なんて見つからない。このミュージシャンたちは偽りの無い「金欠バンド」の音を匂わせ、ウィスキーとビールを活力にして、一般的な社会からは希望も無く疎外されている。そんなの何も気にならないよ。だから何だって言うの。

Spencerは何十年間も曲と毎日を燃やし、溶かし続け、決して完結しない歌を書いてきた。それらは歌のスケッチで、何度も変わることがある。演奏するたびに新たな火種と爆発を生み出すことが予測されているからだ。君を部屋の後ろで壁に磔にし、君に傷跡をつけ、髪の毛を全て燃やしてしまうだろう。でも君はそれを期待している。近くにある生ビールが入ったプラスチックのコップを手にして、(燃える)自分の頭に全てぶちまけるのだ。君は天上を見上げて、換気扇を探しだす。君は換気扇に近づくための椅子を見つけ出して、羽根に向かってジャンプ。回って頭がくらくらして、グリズリーベアか誰か、夜の九時以前は何が起こってるか知らない様な人の背中に飛び乗るまで羽根に捕まり続ける。でもそんな人いらないだろう?

Jon Spencerはヒーローの存在を信じなかったり、従来型のヒーローをほとんど必要としない人々全員のヒーローなのだ。そう、君の才能が開花して、よい父親になり幸せになる所を見たい人々の。彼は君にもっとコミックブックに触れて欲しい、何日間もシャワーを浴びることを忘れていて欲しいと思っている。頭に思い浮かんだ最初のことを口に出すんだ。それが意味を成そうと成さなかろうと。でも出来たら、彼らはクソクレイジーな連中だって願っていようじゃないか。ワニがビーフジャーキーを食べている所を話題にしたり、僕らが狼狽して、ばかばかしくなれる方法を探し出したりして、お説教をかましてやろうじゃないか。

Spencerはマニアックだ。彼はまるで、今にもボトルやビリヤードのキューを取り出し、頭の上にぶつけて、それが映画みたいに綺麗に勝ち割れるみたいに聴こえる。そしてそれは良い感じの夜なのだ。いや、最高の夜だね。そんなことが起こってから、彼らは夜のフットノートになる。何故かと言うと、その大混雑に巻き込まれた人々はナイトキャップを忘れないからだ。一つ先のブロックにある違うバーで、腕を友達の肩に回しながらクィっと一杯。違いなんて関係ない。Blues Explosionの楽曲は君に心をセカセカさせて、強制的で、ほとんど活発にむらがない。彼らの音はもっと若い人たちの肺から絞り出される様な音に聴こえる。まだ疲れきっていなかったり、年をとって精神や身体が衰え、生き方が変わることを断固拒否する様な男たちの様に。まだまだ酒場でたむろするためだけの時間が必要。自分の尻尾を追いかけて、酒をがぶ飲みして、友達と涙を浮かべたりする時間がね。ダーティーなファンが絶対に終わらないことを願っている。

The Jon Spencer Blues Explosion Official Site

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セットリスト

Welcome to Daytrotter
Get Your Pants On
Shirt Jac
My War
No Reservations
Texas Blues

2011年12月15日木曜日

Matt Bauer


Sparseness In The Gloaming

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi

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このエッセイを書き始める3日前にMatt Bauerが自身のウェブサイトに写真を載せていて、それは彼の作る音楽を一言たりとも説明できるようなものではなかった。それは写真の中の写真だった。掲げられている写真は何十年も前の白黒のポートレイト写真だった。そこには過ぎ去った日々の感傷と感動がフルに詰め込まれていた。写真の中の息を呑むほど美しい若い女性は彼の母親で、家宝として受け継がれていくような大切な写真だ。そういうものは最も純粋な時間の一部を凍結している。一度撮られてから何年後も後に見返して、「そこにいる人はその時は何も考えてなかったんだから」なんていうコメントがされるのだ。それが暗示するのは、その人物が撮影日にレンズの奥を見つめていた時ほど、物事は当初考えていたよりも上手くいかなかったってことだ。ひとつなぎに並んだ馬の集団よりも力強く、何千もの抱擁よりも温かい微笑みを見せていた時ほど。

彼の母親は太陽に目を向けていて、そのせいで彼女の目は少し閉じてしまっている。でも見てわかるように、彼女の顔は幸せそうだ。まさにその瞬間、彼女は幸せで幸せで仕方なかった。人生は最高で、その幸せを揺るすような理由も疑いもどこにも見つからなかった。Bauerはその写真を手に持っていて、角っこに彼の親指が覗かせている。おなじページに、机の上に乗っている死んだ青いカケスと彼の裸足のつま先が載った写真を見ることができる。彼が自身のサイトに選んで載せた写真は、言葉が出来る以上に思い出の欠片を説明しているように思える。その思い出たちが実際にスクリーンの中から息をして、つやの消えたボロボロの紙を吹き飛ばしているのだ。彼の母親は伝えたいことがたくさんある。言葉など必要ない。僕らは彼女があの写真撮影の日から幸せな人生を過ごしたのか、気になっている。彼女の望んだように行ったのだろうか?彼女が才能に溢れた息子を授かったのは僕らも知っているし、多くの人にとってそれ以上に気にかけるものはないのだ。

多分それが彼女をその先も美しく、幸せにしたのだろう。Bauerは作家としてそういう「消滅することを許さない」瞬間に焦点を置いている。そういう瞬間は続いてゆき、君を自分が認めたくなくなるほど長い間心配させることになる。君はそんな物語をもっと聴きたい。もっと他の話も...彼らのまばらな、黄昏の中でのダンスも魅力的だからだ。彼はそんな人々や、場所、夜の中に消えて行く物事について歌う。彼の興味あることはほとんど夜の帳の中で巻き起こっているように感じる。闇の中で僕らは一人じゃないと感じているけれど、核心はもてない。僕らはそこに何がいるか知りたい。もっと。何が見えない闇の中を切り裂いて、僕らの肌を擦っているのか知りたい。どうもそれは僕らの一部みたいだ。だから僕らは懇願する。彼も同じように懇願する。

Matt Bauer Official Site

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セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Morning Stars
  3. Tics 1979
  4. Poplar Trees
  5. Blacklight Horses
  6. Waiting For Your Shadow

TICS 1979 by Matt Bauer from matt bauer on Vimeo.

2011年12月12日月曜日

Ocote Soul Sounds


Feeling The Effects Of The Impulses

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered and mastered by Matt Oliver, Translated by Teshi


























ボンドガールを手に入れる方法って言ったら--中でも良い感じのヤツで、超セクシーな日焼け跡が完璧な場所に残っていて、スキー帽被っても、何を装着しても、何してもナチュラルなタイプ--Ocote Soul Soundsを再生することだ。Antibalasの創立者で、OcoteのリーダーMartin Pernaの誘惑レベルを最高潮にしてやれば、君も同じように誰かを誘惑するレベルが絶頂に達するはずだ。"Aqua Sentz", "Pathways"、そして"Pirata"という曲をかければ、君はまるで自分がトロピカルアイランドにテレポーテーションしたような気分になる。目の前の最も豪華な食べ物と飲み物は全部君のもの。食べてもいいよ。だから君はガツガツ食べる。目の前に突然現れたベッドシーツには縫い目がしっかりついていて、文句なしの代物。だから君はそれにくるまることにする。君の周りの女性達はみんなエキゾチックで挑発的な目とスラッとした脚をしている。みんなまるで君のことをターゲットにしているみたいに、君をじっと見つめている。多分君のベッドシーツが自慢してる綺麗な縫い目のことを耳にしたのかもしれないな。君と一緒に寝転がるのも嫌じゃないみたいだし。それで君の手腕を自分で確かめたいんだろうね。

Ocote Soul Soundsをほんのちょっとだけ聴けば、「遅くなる前に外に"DO NOT DISTURB(入室禁止)”のサインをかけとかなきゃ」と考えるはずだ。サックスソロのメロディーは絶頂の時に聞こえてくる様なソロだし。そのサウンドはゼーゼー言いながら悶えている。ちょっと君みたいにね。そう、彼らの曲は肉欲が胸打つ歌なのだ。衝動の効果を感じながら、自分の体が欲望に任せて動けるようにに解放させてあげる。それがなんであろうと、好きなだけずっと。そう、彼らの曲は体に挑発的なダンスを踊らせる部位からの情熱的なコールなのだ。身体に身体が出来る事をさせてあげる。でもばっちりのそのタイミングが来るまではじっと待つ。彼らの曲は抑制が解放され、もはや自制心が無くなったときの、欲望のあるままの姿なのだ。君はとにかくラムで出来たパンチを飲んで今が何時かも忘れる事にする--いまどこにいるんだろ--ここは君が望んだ時にだけ太陽が沈む場所だよ。

Octe Soul Sounds Official Site

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セットリスト



  1. Welcome to Daytrotter
  2. Pirata
  3. Pathways
  4. Agua Santa
  5. Primavera



Liturgy


Here For The End Blast

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Patrick Stolley, Translated by Teshi

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太陽はおそらく地球から93,000,000マイルほど離れていて、僕らも太陽とはそれくらい遠い距離でいたいと思っている。太陽は常に軌道やなんやらに乗って回っているけれど、重要なのは充分な距離を保つってことなんだ。93,000,000マイルは完璧な距離に思えてきた。92,000,000マイルの遠さでも、まあ結構な距離だけど、丸々1,000,000分は近づいているってことだから、僕らの安心レベルにはかなりの衝撃を与えるわけだ。いや、それは僕が勝手にそう考えているだけかもしれない。それが起こるって可能性にビクビクしちゃってさ。どっちにしろ言いたいのは、人類のために太陽を今ある場所に留めておこうぜ、って事。Liturgyの最新作"Aesthethica"を聴き始めると、何かが心の安心レベルを脅かしている気分になる。今までに一度もそんな風に脅かされた事が無かったみたいに。何分か前に太陽は、自らの存在場所に腰を据えていて、僕らの体は充分暑くなった。それか、成長に最適な気温を保っていたのだ。氷を溶かすような暑さでもなく、凍死するほどの寒さでもない。突然、最初のGreg Foxのドラムがカタカタと突き進み、熱気を出すブラックメタルギターのサウンドの波で洗い流された時、僕らは太陽が僕らに突進してくる所を目撃し、体は固まってしまった。どんどん太陽はその巨大な姿を現し始め、熱は増すばかり。僕らはみんなやられてしまう。それは太陽がゴムの先から、僕らの前から去って行ってしまうのを目撃するのと同じくらい恐ろしい景色だろう。ついに太陽の弾力せいも終わりを迎えたのだ。次に帰ってくるときは、加速した力を持っていて、僕らはただただアヒルの様に座っているしかなかない。

Liturgyは僕らに切迫した感覚を憶えさせる。たとえ全ての生き物を抹消するものが差し迫ってきていても、このブルックリンのバンドは僕らの心の中のパンデモニウムのようなものを呼び起こしたりせずに、僕らは「長い長い終末が短いスパンでやってくる」事を前から知っていたような気分を期待することになる。このバンドと彼らの音楽は懲罰なのだ。でもそんなにひどくは無い。Hunter Hunt-Hendrixはバンドの『ボーカリスト』と呼ばれているけれど、それ以外に演奏中彼がやっている事を説明できないからなのだ。彼のサウンドはいきなりつねられた時に飛び出る音。(驚きで)3、4秒間は口から出てこないような、そういう音だ。それは犬が尻尾の先っちょを踏まれた時の音だ。驚きのキャンっていう声。それは純粋なボルテージ。少しずつ流れ出るわけではなく、重圧や消防ホースから勢い良く飛び出るものなのだ。

ギタリストのBernard GannとベーシストのTyler Dusenburyによって完成されるこのバンドは君に、一番近いお隣の州にロードとリップに出ようと思わせる。そこで自分の街では違法なカラフルな爆発物をたくさん購入し、どでかいグランドフィナーレにむけて打ち上げるのだ。君はそれを全て高速に進む太陽に向けて直に発射したくなる。多分導火線を地面に置いておくだけで、僕らに降りかかる迫り来る太陽の熱気で自ら爆発するだろう。ロケットがでたらめに飛び回って、人々の指や耳、顔まで吹き飛ばすんだろう。僕らはそこにいてその景色を見ていたいのだ。うん、多分もうその準備は出来てるから。

Thrill Jockey Records

試聴・ダウンロード(月々$2のメンバー登録が必要です)

セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Glory Bronze
  3. Sun of Light
  4. Generation
  5. High Gold




2011年12月9日金曜日

Big Troubles


All Our Own, At Our Discretion

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi































Big Troublesのアルバム"Romantic Comedy"で語られる恋愛関係は、僕らが過去に置いて来たような物語集だ。僕らはその物語を自分達が今現在経験している恋愛と照らし合わせて考えることなんかできない。結構年もとったし、「簡単に捨てられる」って思われるような存在にもなってしまったし。もう違った領域の物語にも思えてきた。僕らがもうとっくに忘れてしまっていて、すぐにでも消し去りたいって思ってたことだから。いや、そういう過去の恋愛がまだ僕らを腹立たせて、失望、そして悲しみを感じさせるってわけじゃないんだ。それでも僕らの最も拙い、あっという間に効果が切れるクスリとなるのだ。僕らはそういう感情が作用していく所を、特に目立たないダイナーやレストランで見かける。誰も知らないような街で、あるいは誰もが訪れるような街で。隣には世間的には美しいって言われてるけど、すぐに忘れられそうな顔のアイツがいる。

僕らの恋愛は終わって、彼女は立ち上がって出て行った。マイルドに傷つきながら。でも彼女はそんなに感傷には浸らない。その間に僕は彼女が残したフライドポテトを、ケチャップをすこし皿に載せてからつまむことにした。とりあえず残り物は出さない様にする。僕の心はほとんど乱れなかった。ほんのちょっぴりだけだ。他の奴らは(多分このニュージャージー出身のバンドメンバーは)素っ気となくお会計を済まして、「とっとと家へ帰るぞ」と口笛を吹くだろう。そしてマリファナをやりながら、何百回も見た映画をまた繰り返し再生するのだ。きっとちょっと不機嫌で、考え込むだろうけど、朝には全てクリアになって、「まあ仕方なかったんだ」と理解するのだろう。「長い人生のたったの一ページなんだし、大丈夫だろう」って。きっとこれから新しいことがどんどん起こって、また落書きするための白いページが現われるはずだ。また新たな愛を埋め込むためのページが。人が人に接する時の時に不合理な態度に対する評価なのかもしれない。情け無い嫉妬心と変に固執的になる傾向。それがどんな希望的な恋愛の中にも沈み込むのだから。

Big Troublesの二人のシンガー、Alex CraigとIan Drennanはこういうとても霞がかかったような愛の歌を頭に思い浮かべる。それと対処するには生まれたままの傍観者にならなきゃだめだな、って思わせるような愛。たとえ彼らがこのセッションでGo-Betweenersのカバー"Cachelor Kisses"を披露していても、「きっと男は独りで生きて行くしかないんだよ。キスとセックスを掴み取り、目の前に降りてきたその場しのぎの交際をしたりさ。」と言っているようだ。月の灯りがしっかり照らしていればいいのだ。もしその方法で良いんだったら、多分そうしたほうが安全で、心の痛みもあまりないかも。CraigとDrennanはそういう(多分女の子たちの事だと思う)手に鉤をつけた奴らのことを歌い、事態は速いスピードでとんでもなくグッチャグチャになっていく。

「ペテン師とつるんだら、傷つくさ」

と彼らは注意するけど、そんなこと言われたら試してみたくなるじゃないか。ロマンスにつきものの喜劇っぽいビートを感じたくなるじゃないか。センチメンタルなことよりもさ。「アーケイドの灯りがぶら下がって」いて、そこに勝者はほとんどいない。引き分け試合だけだ。そして僕らは自分達が男なのか、おはじきなのか不思議に思い始める。とりあえず次の障害物に突き当たるまで坂を転がり続けて、底に辿り着くまでレースするのだ。
Big Troubles Official Site

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セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Bachelor Kisses
  3. Somebody's Baby
  4. Misery
  5. Motorcycle





2011年12月8日木曜日

Mayer Hawthorne


Could Be A Doctor In The House

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Jon Ashley, Translated by Teshi

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ねえ、顔色が悪いけど大丈夫?まるでゴミ溜めに落とされたみたいに浮かない顔してるじゃないか。何か僕らにできることはない?遠慮なく何でも言ってくれよ。できれば助けになりたいんだ。え?どうすることもできないって?そんなはずないだろ?言わせてもらうけどさ、それが間違いだって証明できるんだ。僕らは今この手の中に、誰も見たこと無い量の膨大な太陽の光よりも強大でパワフルなモノを手に入れたんだから。こいつは君にばっちり効果があるよ。保障する。そんな騙されたような顔しないでよ。いいからやってごらん。ほら、もうさっきよりも顔色良くなった。気分はどうなの?ああ、そりゃ良かった!彼の名前はMayer Hawthorneって言うんだ。とにかく彼を離さないでいてくれよ。いや、違うよ、彼は医者じゃないよ。でも医者じゃないって考えるほうが難しいよね。彼は効果てきめんで、しかも信用できる奴なんだ。君が手放したりしなければ、彼はずっと君に素敵な気分を味あわせてくれるよ。彼の素晴らしさっていったら、底なしなんだ。君は彼に依存しちゃうけど、望んだ結果を手に入れられるのだから、それも気にしないようになる。何時も彼の最新作"How Do You Do?"を聴かなきゃいけなくなる。まさかまた落ち込んでしまった時に備えて、ね。

ミシガン州のデトロイトで生まれ育ったモータウンを愛してやまないソウルシンガー(最近Detroit Lion(アメフトチーム)主催、サンクスギビング記念試合のハーフタイムショーをニッケルバックに代わって執り行って、それがRolline Stonesのウェブサイトで放映された※)はBerry GordyとSmokey Robinsonが町を仕切っていた時に築かれた、モーターシティの音楽的伝統を完璧に受け継いでいた。彼は自身がレトロ寄りなことを隠そうとせず、そのため全ての楽曲がクラシックのように聞こえる。どこかで昔のヒット曲を抜き出してきて、埃を払って、また新しくパフォーマンスするのだ。スイートなタイミングで鳴り響くホーンと厚く張られたハーモニーは、これ以上望むことは出来ないほど完璧な仕上がりだ。彼はクソキャッチーなフックを書き、恋愛の出会いと別れを僕らに提供する。今までもこれからも、曲の中で様々なタイプの女性を描き、彼女達に恋焦がれている。でも毎回違う方法で挑戦し、違った結果が伴っているのだけれど。

"The Walk"は、豊かな髪と柔らかい唇をした女性について歌っている。でも彼女はHawthorneを騙しているんだ。リッチな髪の毛と柔らかい唇の女達っていつもこんな感じじゃない?彼女は出会った時には思っても見なかった姿を見せはじめた。彼は歌う

「君と会った瞬間に素敵だなって思ったんだ/ほんとに綺麗/でも君のクソムカつく態度が僕の考えを変えてしまったよ/そうさ、ビッチめ/ほらベイビー、その長い足をコツコツさせてさ、僕の人生からいなくなってしまえよ」

この火の中に冷たい水を注ぐような新たな事実が発覚した後でさえ、この曲はまるでなにか祝杯をあげているように聞こえるのだ。これは君に「もやもやが覚めて、また楽しんでいこうじゃないか」と思わせる曲だ。楽しみ、って長く忘れていたことだろう? "How Do You Do"は最初から最後までこのテンションが続き、顔にはえくぼが浮かび、口の中はキャンディの甘さで一杯になる。

※このDetroit LionsのハーフタイムショーはもともとNickelbackが予定されていたけれど、カナダ人に任せていいもんか、と大クレームが発生し、彼に取って代わったそうです。

Mayer Hawthorne Official Website

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セットリスト



  1. A Long Time
  2. Dreaming
  3. No Strings
  4. The Walk



2011年12月6日火曜日

Joan As Police Woman


Encouraging The Shadows And Clouds Of Smoke

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi





























それはまるでJoan As Police WomanのJoan Wasserが彼女の身に降りかかった事態や、彼女が引き起こした事態と反目しあっているようだ。彼女の最新作"The Deep Field"を聴くと、彼女が一つの方向にかなり傾いているようで、今までと違って争いに身を転じてはいないようだ。だからといって何か彼女にとって楽になったわけではないけど。彼女はまだ宇宙レベルでストレスを感じていて、まだ誰も彼女に効く治療薬を見つけてはいない。君はただ口をつむって、探し集めた迷信と欠点を見つめ直すことしかできない。そして、「それはヴードューや、細かく入り組んだクロスハッチパターンの中に運命付けられたもの」だという結論に辿り着く。しかし全ては物事が転がった方向に大きな原因がある。Wasserは目の前に現れた事態、あるいは同時に予期せず起こった事態に多きを重んじる。しかしそんなことを言ったら、彼女は「それ以上のものよ」と口論を始めることだろう。

そこに偶然の出来事などないが、慎重に組み立てられた魔術のような物質が登場する。彼女は人間と夜から生まれる魔術を信じているのだ。彼女は言葉にせずとも、人から人に飛び回る火花や静電気の事を考えている。彼女はそれを見上げて、空を引き裂く眩い光の音に耳を澄ませる。彼女はそのような偶然起こる状況の中にあらゆる意味を見出し、ほとんどの場合、その「意味」っていうのは雲が掛かっていて他の解釈にとられることがある。それでも、そういうアンビバレンスな物は同じように興味深いものなのだ。それは呪われたり人のひんしゅくを買うようなものではないけれど、そのままの露な姿で現れる--何にも携わってないようで、全てに関係しているように見える。一秒ごとに次に乗り移り、すぐに消えてしまうようなアイディアのように煙の中ににさっと去っていく。

彼女は自身の影がもつ蒸気と有害物質に惹かれている。彼女はまるでそれらが彼女の体の奥底に潜んでいて、彼女に語りかけてくるかのように感じている。時にひそひそ声で、時にあたかも死人を起こそうとしているような口調で。彼女はそこに中々簡単に見ることが出来ない荒々しい騒動が巻き起こっていると暗示してみせた。僕らはその騒動に気付いているべきだし、きっとその騒動が僕らにも影響するって事を予期しておかなければならない。可能な限りあらゆる道を辿ってやってくる。いつでもどこでも彼らが好きな時にやってくる。もし彼らがそんな脱出路を通ってくるようであれば、血管も爆発したくなるもんだ。彼女は自身の中に自分だけのリヴァイアサンをがいると信じている。そして、彼女はきっと自身の魂をそのような伝説の存在、あるいはとても聖書的な海の怪物に受け渡してしまったんじゃないか、と僕らは考え始める。問題かどうかは置いておいて、それって地獄みたいなものだよね。それか守り神の一つなのかな。世間には物を触っただけで金に変える人々もいるくらいだから。彼女もそれを考えてる。彼女はそういう魔法をあらゆる場所で探して、何事にも触れようとするのだ。だから彼女は躾がなってないのかもしれない。でも今ここで彼女は魔法を作り出している。まるでその魔法は彼女が親密を保ち続け、また永遠に造詣が深い場所に直接繋がっているようだ。彼女は自身の影がどんどん大きくなるように仕向け、それがどうなるか想像し続ける。他の奴らも彼女みたいに影を扱ったらいいのに。
Joan as Police Woman Official Website

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セットリスト



  1. Welcome to Daytrotter
  2. Flash
  3. The Magic
  4. Chemmie
  5. Nervous



2011年12月4日日曜日

Tallahassee


All The Smoke That Lingers Is Tarnished Gold

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi
































ある朝、みんなでフレンチトーストを作ったんだけど、上手くいった。フレンチトーストで大失敗することなんてあんまりないけど、不注意になってしまうこともあるし。火を強くしすぎて、ホットプレートにある一切れの事を忘れてしまったりする。そうするとひどい勢いで焦げてしまう。それは良く起こることで、僕らは自分達の愚かさを呪うことになる。今朝は、そんな懸念もなく上手くいった。焼き加減もほぼ完璧。両サイド金色に輝いていて、そんなにフニャフニャじゃなくて、硬すぎでもない。ちょうど良いバター加減と、最後にシナモンでフィニッシュ。それでもキッチンも家の中も何かが焦げたような臭いがしてる。朝から晩まで、ドアを開けるたびにその臭いがしていた。まるで誰かが料理を大失敗したみたいに。

僕らが我慢しなくてはならなかったあのひどい臭いは他の煙の臭いを僕に思い起こさせた。特にボストンはマサチューセッツのバンドTallahasseが持ってくるような臭い。彼らがそれに気付いているか知らないけれど、元New England Patriotsの前衛※Brian Barthelmesがフロントを仕切るこの四人組は、僕らにある特定の物事が焦げる時の臭いを考えさせる。そのほとんどは予期せず起こるものだ。彼らはその臭いを引き起こそうとは殆ど思っていなかった。それでもBarthelmesが「事態はヒマラヤスギと煙のような臭いがする」と、素晴らしくミニマルな悲しみと喪失の歌("Jealous Hands")を歌うとき、僕らはあらゆる感覚が詰め込まれた、青とグレイの熨し上がるリボンのような排気の中に嫌でも入り込んでしまう。その煙は薪や蝋燭の煙だけではなく、それ以上のものから生まれている。僕らは煙がゆっくりと歓喜の中からうねり出てくるのを想像する。そう、それがほどけて行く時、みんながそれに巻き込まれる時に、僕らは終末の瞬間を感じ始めて、噴きあがる煙を止めるものはほとんど何も無いのだと気付く。



それはきっとBarthelmesが歌っていた燃えるスギの臭いなんだろう。誰も嫌うことが出来ない香り。その香りの中に喜びを感じてしまうからなんだろう。 それはオーバーヒートしたエンジンから出る、面倒くさそうな炎なんかではない。それは僕らが切望する香りなのだ。体の中に吸い込んで、何日も鼻の奥に残る香りを楽しむ。まるで心地の良い染みのように。煙は大体炎が消えてから生まれるものだ。炎が尽きた時に生まれるもので、煙は目の前から消えるまで、限定された時間でしか動き回ることが出来ない。たとえ目に見えなくなっても、僕らに何が起こったか思い起こさせるためにちょっとの間そこに留まるんだけど。

(ギタリストのScott Thompson、ベーシストShawn CarneyとドラマーのMatt Raskpfによって完成する)Tallahasseの殆どの楽曲が伝えようとしているのは、時間の限定性だ。彼らはそれについて特に具体的で、僕らに「誰にとっても時間は友達じゃないんだ」と思い出させてくれる。もしそう思ってるんだったら、僕らってかなり間抜けだよね。これ以上に望むことが出来ない最高の友達がいて、そういう期間限定の友達なんか欲しくなかったら、時間の存在も友達だよ。でも時は僕らを裏切り、ボコボコにして去っていく。僕らを切った後、煙だけ残して去っていく。その煙は服の繊維の中に潜み続けてずっと香り続ける。まるで僕らは煙以外に何も羽織っていないかのように。人は目の前から去っていくものだし、僕らもそれは同じ。僕らはほとんど弱まることの無い煙の跡を残し、ついに永遠に消散していく。時にそれはいつの間にかなくなるし、全然なくならないこともある。

※New England PatriotsはNFL(ナショナルフットボールリーグ)のチームの一つ。彼はアメフトの選手だったということです。

Tallahasse Official Site

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プレイリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Winter Trees
  3. Wooden Heart
  4. Time
  5. Jealous Hands


2011年12月2日金曜日

Other Lives


Nothing Like The Hard To Believe Better Days

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Naoko

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ここ最近私たちが吸収している風潮は誰にも貧困など想わせない。そんな素振や気持ちを装う必要はない。目の前にある、何ものっていないお皿がそのものだし、月末や、隔週の金曜日がそうだ。この国が大勢の人にとってうまく動いていた時代がかつてあった。若い物書きが世界大恐慌へのマジカルな思いを馳せ、彼等のキャラクターが、「日々小銭を稼ぐために骨の折れる労働を強いられながらも食い繋ぎ持ち家の権利の失効と戦うこと」を描くことが許されていた時代。そんなに遠くまで飛んでいかずとも全てが困難な場所はそこにある。本当に嫌な時代のその真ん中にいる。疲弊を知るためにキャラクターを創造しなくてもよい、しかし、私たちはそんな余裕もないのに、自ら発売同時にiPhoneを購入し、ケーブルテレビや高価なジーンズ無しではいられない。ここに、そしてオクラホマのスティルウォーターに、Other Livesというバンドのアルバムがある。今年の他の全ての素晴らしいレコードに真っ向勝負できる。芸術的な表現と深みと適時性と、極めて重要な、不朽さがある。"Tamer Animals"は、アルバムの中でも大きな怪物で、社会に置いてかれた不運続きの者達にとっては賛歌に感じるだろう。楽曲はあまり多くを求めない者の視点から来ているようだ。家族が食べていけるだけでいい、住む場所があって、そして雨を凌げる、手足を骨折しても治せて、素敵なクリスマスを過ごせる、そのための少しの余裕。がしかし、そういうことは全部次第に厳しくなってきている。

Jesse Tabishのストーリーの中の人は、運がよければ残り物やクズを頂ける、そしてもう祈ることも諦めている(様に見える)、なぜなら信仰とは、汚い言葉になってしまったからだ。何たるかの確信もないモノのためにここにうめき彷徨うために取り残された。多くのの曲、特にこの二回目のセッションで残してくれた3曲は、ひと気のない緩やかな丘にほっぽり出され、眠る場所もなく、対策を立てる補給所もなく、文字通り望み少ない、そんな風を感じさせる。増大する問題と、沸いてくる不安、そのプレッシャーを逃してくれるような開口バルブはない。ただ組まれてゆく、そこに動き続ける自由はある気がするが、それは人々を抑えるものも支えるものも何もないからだ。Tabishは"spouting hymns"を歌う。呪いか叱咤によって空に投げ出され、そこで見たことのない誰かに挑戦しているようだ、また何か信じられることを与えてくれ、と。一般論では、西に向かい続ければ太陽が当たり土も生活ももっと実のあるものだ。良い事も、良い日々も其処に確かにある、もう少し歩き続ければ、その先にワインや甘いハニーがあり、野菜を植えるガーデンがある。子供が走り回れる裏庭があり、そこで飼ったことのない犬を追いかけている。Tabishが歌う、

"Is there any way to get this weight off my skin/Find another one/Is there anyone get this writing off the wall/Find a new one,"(この重みを肌から剥ぎ取る術はないのか/もうひとつを探せ/この文字を壁から取り去る人はいないのか/新しいのを探せ)

この言葉は、突き抜けることの出来ないレンガの壁ほど硬いこと、逃れられないことに面している、そんな人の言葉だ。
Other Lives Debut Daytrotter Session
Other Lives Official Site
Wirewax

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セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Dust Bowl III
  3. Old Statues
  4. For 12




2011年12月1日木曜日

Dewi Sant


The Guy Who Buys Flowers

Words by Sean Moeller, Illustration by Johnnie Cluney, Recording engineered by Mike Gentry, Translated by Teshi



























Dewi Santはみんなが話題にする人物の様に見える。彼の優しさと良心が彼の評価を先立たせて(それか後押し)しているのだ。彼が捧げる愛とロマンスの行いはしっかり人々の印象に残り、彼が天国の扉に立つ時に彼の行動はしっかり報われる。あたかも旅立ちの前にみんなの前で礼をするチャンスを彼に与えるように。そう、彼にスタンディングオベーションが捧げられるように。きっと誰もが思うことだけど。彼を振った女性達一人一人が、きっと彼と二人で築いたものを台無しにした自分達を懲らしめたいと思ってることだろう。

僕らは彼の良いところをたくさん挙げているけど、彼の書いた曲を聴いたら、「この人は絶対に人の心を砕くことが出来ないだろう」と感じるはずだ。僕らは彼が恋に破れて去っていくのを見て、悲しくなる。まるで自分達の問題の様に彼に同情する。彼の実生活の恋愛を知らずとして、僕らは彼が悪者の立場に立つなんて絶対に想像できないのだ。彼はこんな目にあうべきではなかった...にも関わらずそれは起きてしまったのだ。

彼は特に理由もなく花を良く買う人物。彼は君のためにドアをあけて、席に座る前に椅子を引いてくれる人物。彼は慈悲を求める人物。(君から)もっとソフトで、慈悲深い視線を求めている。彼は愛する人のためであれば何があってもいつでも会いに来てくれる。絶対にだ。彼は星の光の事を考えて、ただその光が美しい顔を横切って流れていくことだけを浮かべている。その光が手を取り合って真夜中に散歩する僕らをどうやって導いてくれるのだろう。"Dance Me To The End Of Love"という曲でSantはこう歌う

「燃えるようなバイオリンの響きと一緒に、君の美しさに合わせて僕を踊らせてくれないか/ダンスをしながら恐怖を乗り越えさせてくれよ/僕が安全に包まれるまで/オリーブの木の枝の様に僕を持ち上げてくれないか/家路を導く鳩になってくれ」

そして彼はこの曲のタイトルを口にする。でも君しっかり聞いていないと"Love"という言葉が"Thou"(古英語の"You")に聞こえてしまう(Dance me to the end of you)。でも、その文脈でも間違いでは無いように感じる。そうするともっとフォーマルな、シェイクスピアの色調の古英語のアピールが出てきて、それは「愛って何なの?」という謎を知る必要を反映するものになるだろう。それは相手がどうやって愛情を表現するか見つけ出すってこと。誰も見たり耳を澄ませたりしていない時、その愛情表現がどんなものなのか知るって事だ。そして同じ量の愛を受け止められる誰かを決めることだ。ミネソタ出身のSantと、彼のワルツ調のフォークソングには意気地の無さはどこにも無いし、彼はそれを変える気もない。


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セットリスト


  1. Welcome to Daytrotter
  2. Forks
  3. Untitled
  4. Lullaby

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