2011年5月30日月曜日

The Strokes/Angles




















The Strokes/Angles

5.9

最後に僕らがThe Strokesを見たのは彼らが死ぬミュージックビデオでだった。2006年の"You Only Live Once"のクリップでこの四人組は白い服を身にまとい、黒い液体が部屋に充満して行く部屋の中で溺れていた。もしそれがこのバンドの最後を本当に表していたとしても、驚く人は少なかっただろう。三枚目のアルバム、First Impressions of Earthで彼らはバンドの特徴的な音を広げようと必死になりすぎて、まるで黒い水の中でもがいているように見えた。この変化はバンドを逆に不自由にさせたのである。しかもThe Strokesは数年に一枚の周期でアルバムを出して、ファンに昔の曲を歌わせるようなバンドになるほどアホでかっこ悪くないだろ?だから彼らはそれぞれの道へ去っていった。はっきりしないサイドプロジェクトをやったり、家族と過ごしたり、the Strokesではない所ならどこへでも。

2009年11月の後半、Julian CasablancasはStrokesの四枚目のアルバム製作の話題には真剣ではなかった。「何年もやろうとして頑張ってるんだけど」と彼は言う。「僕はいつも時間があるし、他のメンバーもそれは知ってるんだけど、集まるのが難しいんだよね。」
ギタリストのNick Valensiはさらに突っ込みをいれる。「今の状態だと、四枚目のアルバムを作る事すら確かではないね。」でも今ここに、Anglesというアルバムがある。必要以上に美化したスピットボールセッション※みたいなもので、猛々しい復帰ではなかったけど。

※Spitballlingとは叶いもしない理想的なアイディアをとりあえずどんどん提案していくこと。ブレインストーミング。

このアルバムではバンドが地からまたやり直そうという試みがなされている。今まではCasablancasがギターソロやベースラインまで殆ど作曲を手がけていたが、Anglesでは一歩下がって、他のバンドメンバーからの曲が加えられている。そしてこの新しい仕様はクレジットをみても明らかだ。([すべての作曲、編曲 The Strokes]と書いてある。)
この新たな方法をCasablancasは「みんな満足作戦」と呼んでいたし、かなり見下した名前である。この民主主義的な動きは寛大に見えるかもしれないが、彼は残りのレコーディングからも身を引き、電子ファイルでボーカルを送ったりして権力を振りまいていた。そしてこのアルバムでは変なコラボレーションによって生まれた、まとまりのない多様性と不安定な分裂が証明されてしまった。

ファーストシングルの"Under Cover of Darkness"の陽気な聞き慣れた感じの高低違う二つのギターサウンドと滝のように重なったコーラスは、結局the Storkesはthe Strokesであるという結論に達したのだと思わせた。他のスタイルと音でふざけてみた後に、自分たちの昔の姿へリバイバルして満足していたように見えた。しかし、良くも(徹底的に)悪くもそうではなかった。このバンドが登場した時は周期的に1970代ロックのパクリだと批判されていたが、多くの人がStrokesの歌をTelevisionやLou Reedと聞き間違える事はほとんどないだろう。だから彼らの物真似がAnglesで不自然に聞こえるのは皮肉なものだ。しかし、今回は安っぽいCBGB風パンクの影響が時々、1980年代の目立ったスネア音に置き換えられている。"Two Kind Of Happiness"では昔のヒューヒューしたU2のフックで曲を盛り上げ、一度一緒にツアーを共にしたTom Pettyのパームミュートとしゃっくりみたいなメロを盗用している。"Games"はまた80年代へのオマージュで、綺麗なシンセと遠くで聞こえるようなハンドクラップを使い、「空っぽの世界で生きる」ことの憂鬱と重い負担を表現しようとしている。始まりの曲、"Machu Pichu"はMen at Workの"Down Under"を思い起こさせる。これらのバンドがStrokesのアルバムに影響させると誰も予期しなかった。

それは構わないし、良い事だとも。もし彼らが他のバンドみたいな魅力や献身でやり通したならばね。全体を通して、ヴァースとコーラスが、歌詞と音楽が、意図と遂行の関係が繋がっていなく、アルバム全体をバランス悪く引きずっている。Casablancasの自分の行動へのアンビバレンスがよく顔を出す。プログレっぽくしようとしてださくなった"Metabolism"で彼は宣言する。「悪いヤツになりたい/でも心では自分がつまんないヤツだって分かってる」ぐちゃぐちゃな最終曲“Life Is Simple in the Moonlight"で彼は告白する。「自分の事以上に人を認めなかったり自分以外を応援したりしない。」Casablancsはthe Strokesで自己嫌悪を最初からずっと歌ってきたが、いつもは音楽の起伏が感情をうまく演出していた。しかし、ドラムのない、悲しそうな"Call me Back"で彼は「みんな忙しいし、誰かいつも遅刻する」とふわふわしたキーボードとギター一本で歌う。この曲をきけば、なんで誰も彼に電話を返さないのか分かるはずだ。

しかしまだ、この五人が集まったのが何故良かったのか思い出させてくれる瞬間がある。ビートが効いた"Gratisfaction"はまるでThin LizzyとBilly Joelを合わせたようなあくせくしない、直球ナンバーで、他のアルバム曲の中で群を抜いてキャッチーだ。さらに良いのは“Taken For A Fool"で、Anglesで唯一今までのThe Strokesのサウンドのまま斬新な音を鳴らしている。この歌のヴァースは隙がなく、David BowieのLodger収録の曲みたいに不思議にファンキーなのだが、シンコペーションを楽器のフックがせっかちな感じで落ち着かせている。2009年に音のこだわりへの到達点について、Casablancasは「本当にチャレンジしてみて、基本に戻って、普通に音が聞こえる事だね。」と言っていた。価値のある目標だし、"Taken For a Fool"では成し遂げられている。

The Strokesの復活についての当てにならないニュースがこの数ヶ月で続いていたのと同時期、同じ時代に活躍した二つのバンドが舞台を去った。The White Stripes---彼らはStrokesに「今一番クールなバンド」選手権で何年か闘いを挑んでいた。彼らは休止期間を経て2月2日、公式に「バンドの美しいもの、特別なものを永遠に保存するため」解散を発表した。NYの仲間LCD Soundsystemは4月2日にマディソンスクエアで活動に有終の美を飾る予定である。偶然にもその一日前にThe Strokesが同じ場所でライブを行い、第二の人生を送ろうとしている。誰もが先進的である内に辞めたいと思う。本当に辞めるバンドもいるのだ。
−Ryan Dombal, March 21, 2011












Angles

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