2011年5月8日日曜日

Gang Gang Dance/Eye Contact



Gang Gang Dance/ Eye Contact

8.5


Gang Gang Danceは最初フリー形態のノイズ集団としてはじまった。メインストリームに傾く事無くこの何年かで彼らのサウンドは、緩やかで成熟したものに成長した。死体との会話についての歌詞とクラブビートを使って多文化的な体で感じる音楽の仕立て役に進化して行った。彼ら以前に登場したArthur Russelのように、彼らは魂と性感に同じ踊る空間を与える事ができるのだ。このような変わった音楽性をして、バンドの最新作、Eye ContactはGang Gang Dance史上、最高に洗練されていて、変で、聞き手を高揚させる作品になった。


Eye Contactは11分の長さの曲"Glass Jar"を通してゆっくり始まっていく。キラキラしたシンセとピアノのアルペジオがジャズ風のパーカッションを通してステレオ上で駆け巡り、どんどん推進的な東洋のグルーブへ落ち着いてゆく。これは輪廻についての歌である。まるで The BoredomsとAlice Coltraneが至福の音の爆発を表現したようであり、"Darkstar"のようでもある。彼らはシングル向けのバンドではないけれども。

Gang Gang Danceの音楽的ビジョンはもっと大きく、アルバムの長さのキャンバスを必要とする傾向にあるようだ。2005年発表のGod's Money以来、バンドのすべてのレコードは一枚の曲として再生されてきた。一曲一曲が次の曲につながっていて、DJセットやコンサートパフォーマンスの感じを映し出しながら、恍惚としたクライマックスに向けて盛り上がっていく。Eye Contactはそういったバンドの理想型を保ちつつ、7つの曲が一つの作品として抽象的にまとめられている。またこの方法論は以前に増して進化した。Eye Contactでは、Gang Gangは雰囲気よりも歌の出来を先に重視している。バンドの前のレコード、Saint Dymphnaでは、かわいらしい未来系ポップが提示されていた。汚れっぽくどたばたしていて、テクノ、現代R&Bの要素をサイケデリックにすべてコラージュさせた作品であった。しかし、時にそれは「やりすぎ」だった。Kate Bushのオマージュの"House Jam"を除いて、Gang Gangのが目指した正統派ポップは多くの場合堅かったし、考え過ぎだったし、楽器はごちゃごちゃした高速プレイとともにバランス悪くはじけていた。"Eye Contact"は前に比べずいぶんリラックスした滑らかでムーディーな作品である。それぞれの構成されたパーツは前より耳に残りやすい。インタルードも、まあ前よりは短くなっている。


前のレコード以降、オリジナルメンバーのドラマーTim Dewitがバンドを去った。彼の特徴的なせかせかしたリズムはここでは聞く事が出来ないが、新メンバーのJesse Leeは彼よりもまとまったしっかりした力強いプレイを聞かせてくれる。メロディックでふわふわした"Chinese High"ではAriel PinkのベーシストTom Kohが静かな嵐のようなベースを加え、“Romance Layers"ではHot Chipのフロントマン Alexis Taylorがマイクを持ってジャック時代のソウルを小さい声で口ずさんでいる。...にもかかわらず、これはポップアルバムと呼べるものではない。しかしポップレコードを作る職人が集められ、ひとつに混ぜられ、Jack Pollockのような気質をキャンバスに描き出したのだ。歌い手のLizzzi Bougatsosはインディアンポップのメロディーを流用し、Brian DegrawはUKのアングラからベースラインを参考にし、ギタリストのJohn Diamondは北アフリカのリフを盗み出した。だからといってGang Gangがただ自慢したくてこのようなエキゾティックな技を集めている訳ではない。バンドはどうも音楽がまだはっきりと精神性につながっている地域の文化やジャンルに意識的にと引き寄せられているようだ。それはたぶん友達が恋しいからなのだろう。

Eye Contactはゴーストにつきまとわれているアルバムである。二曲はくたびれたアート仲間のために捧げられている。"Glass Jar"は2002年に落雷で死んでしまった以前のバンドメンバー、Nathan Maddoxへのオマージュで、"Sacer"はドラッグ過剰摂取で死んだアーティストDash Snowへ歌われている。

Eye Contactではバンドの特徴であった音のかすみは抑えられている。このアルバムはもっとタイトにまとめられていて、バンドのノイズによる修飾やサイキックな輝きを引き出すキャッチーなフックや決まったリズムなど、バンドの得意技が削ぎ落とされている。

「過去には、僕たちの音楽は目をつむって現実逃避できるようなものだと思っていたんだ。」最近のインタビューでDeGrawはこう説明した。「今回のアルバムはもっと僕たちがリスナーを睨んでるみたいに目を大きく開いてるみたいな感じだよ。」

バンドがもっと外の世界に対して心地よく感じてるかはよく分からない。「精神外科医を呼んだ方がいいんじゃない?」とBougatsosはアルバムの最終曲"Thru and Thru"で歌う。「私たちの夢見る場所においでなさい。」

原文:http://pitchfork.com/reviews/albums/15403-eye-contact/




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