2011年5月28日土曜日

Friendly Fires/ Pala























Friendly Fires/Pala


7.4


2008年に発表されたFriendly Firesのセルフタイトルのアルバムに"Jump in the Pool"という歌がある。歌詞の題材はかなり直球(ヒント:プールに飛び込む)だったが、このナンバーがアルバムの目玉曲になった理由はコーラス部分で歌の名前を繰り返し、サビに突っ走って行く所である。活気に溢れたポリリズムから、ただの数秒で速く勢いよいサビに展開していく。印象的な演奏と旋律の変化はおなじぐらい思い切ったものであった。しかしそれがポイントでもあるのだ。Friendly Firesが一番輝いていたのはロマンティックなエレクトロの感触("Skeleton Boy")、と大げさなジェスチャー("Paris")を表現していた時であった。彼らは抑圧が効かない状態で優れている官能主義者達なのである。


賢明にも、バンドの二枚目の作品Palaでは時間をかけず、すぐに世界観に染まっていく。様々な色をもつネオンポップのアルバムの最初の曲、"Live Those Days Tonight"ではアルバムの音に対する野心を聞く事ができる。今回Paul Epworth(注:Adele, Maximo Park, Cee-Loなどを手がけるプロデューサー)が大きく製作に協力し、さらに楽曲にカラフルな音の装飾を加えた。デビューアルバムから3年、この期間バンドは注意深く正確にディテールの細部を飾り立てるための時間にうまく利用していたようだ(B級映画みたいな安っぽい"Blue Cassette"の盛り上がり、"Helpless"のバックで聞こえるおしゃべりとBoards Of Canadaのようなキーボード使いとか)。


加えて、Palaは彼らの名前を「ダンスが好きなロック主義者※」のリストから外す結果となった。"Chimes"のUK風の飛び跳ねるファンキーなリズムから”Hurting"における信号音が特徴的なファンクまで、あらゆるスタイルが試されていて、多くの場合それらをうまく身につけている。バンドの音楽の趣味と最大値まで引き出そうという冒険好きな性質が功を征した。



しかし、世界にあるどのような言葉で説明しようとしても、Friendly Firesがまずロックバンドであるという事実は変えられない。しかもとくに感情的に特徴づけられている。バンドの三人のメンバーは10代の時に誰も知らないボーカル無しの"ポストハードコア風(つまりエモってことだけど)"のスタイルでFirst Day Backを結成した。いちど彼らの音楽を一度でも味わった事がある人は、それが一度聞いたら、ずっと耳に残ってしまうという傾向にあるということが分かっているはずだ。そして、Palaの高いリスクの作品構成がそれを反映している。このアルバムではエモーショナルな部分が規則的に出てくる。情熱的な嘆き"Show Me Lights"や“Pull Me Back to Earth"は君が期待するのと同じくらい大ざっぱな出来だ。バンドが大げさな、陰鬱に色付けされた劇的演出(出足が遅いタイトルトラックや、"Chimes"の勇敢な感じに見せようとしているバカっぽいファルセット)に縛られすぎている時、この作品、Palaの深海に飛び込む感覚が溺れる感覚と似たようなものに変わってしまう。


でも心配はいらない。彼らには"Hawaiian Air"で聞く事が出来るように、ユーモアも持っているのだ。タイトルが示すように、フロントマンEd Macfarlaneの歌詞の焦点は、そう、ハワイ旅行だ。ただ、彼は曲全部使って飛行機でそこへ行くまでの経過を説明してみせ、(「喋る犬が出てる映画を見てる」「食事を抜いてG&T(ジントニック)を飲む」)。ほとんど南国の空気を吸う事が出来ていない。このアルバムはシンプルな快楽がクローズアップされたものである。弁解と誠実さの中に、こそこそした感情的な微笑みが作品の甘く色付けされた流れに隠されている。だってこういうのは楽しくなくちゃいけないだろ?

ーLarry Fitzmaurice



※「ダンスが好きなロック主義者」は原文ではRockist dance-dilettanteとなっています。ロック主義というのは80年代のPeter Wylieという音楽家が提唱した、ロックをポピュラーミュージックとして規範的に定義しようというUKの音楽雑誌なので特に用いられた思想です。確かに80年代はDuran Duranとかロックバンド風のポップが流行しました。Dilettante(ディレッタンテ)という言葉は芸術、音楽の愛好家という意味もありますが、知ったかぶりの素人というネガティブな意味も含みます。


原文:Friendly Fires/ Pala







Pala

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