2011年5月20日金曜日

Kate Bushインタビュー Part III (完結)

Deeper Understanding (2011)




Pitchfork(以下PF):"Deeper Understanding"のビデオで主演する必要がなくて安心しました?

K
ate Bush(以下KB):ええ、素晴らしかったわ。すごい楽しい時間を過ごしたの。ビデオにあんまり出なくていいと、監督業にもっと力を入れる事ができるのよね。監督しながら出演するのってとても難しい事だもの。今回私は画面の外から一足おく事が出来て、また素晴らしい俳優達を起用することができたわ。彼らが出演してくれてほんとうに嬉しい。Robbie Coltraneの演技には本当にぶっ飛ばされたわ。

PF:あの曲とビデオはテクノロジーの曖昧さが題材になっています。映像では、コンピュータープログラムについてあまりポジティブに描かれていないようですが。しかし、同時に、あなたが12歳の息子の声をプログラムに使う事に決めたのには理由があるように感じました。

KB:アイディアでは、このコンピュータープログラムは非常にポジティブなもので、不幸せな人生を送っているキャラクターに情けと理解を与えてくれるものという設定だったの。彼がプラグと回線をちゃんと繋がなくて感電してしまったとき、瀕死を経験して、最初はみんな彼に優しく接していて、彼はみんなに理解されていると感じたの。でも、突然彼らはそれをやめてしまう。(この作品は)コンピューターとの関係を描いている訳ではなくて、もう美しくは無い美しい夢を描いている。コンピューターがやってきて主人公に命を吹き返すの。コンピューターはとても優しい存在として描かれているのよ。

PF:でも、最終的にはコンピューターが主人公を誰かを殺すように導きますよね。

KB:えーと、コンピューターのせいかしら?それとも彼のせいかしら?これは彼の人間としての問題なの。嫉妬心に燃えていたでしょう。彼はプログラムを取り戻しに行きたかった。このように彼らは最終的に再び出会あった。だからきっと少し邪悪な感じが取られるんでしょうね(笑)。

PF:ピエロがビデオの最中にいきなり飛び出てくる所はとくに気持ち悪かったです。

KB:ピエロはいつも気持ち悪いわよね!

PB:80年代の"Deeper Understanding"のオリジナルのアイディアは何だったんですか?

KB:その時代も、コンピューターは私たちの生活の一部として根付き始めていることは明確だった。何か劇的なことが起こらない限りこれは続くだろうって分かっていたの。最初にあの曲を書いた時、スタジオにあるたくさんのコンピュータテクノロジーの中にいた。フェアライトを使って、始めてのサンプリングマシーンですごいヤツなんだけど、曲を書いていた。表面的な部分でしかあまり使わなかったんだけどね。だから多くのテクノロジーに囲まれていた。これはコンピューターが、実際知っている現実世界の人々たちよりも、人間に愛と慈愛をあたえる事が出来るというテクノロジーの矛盾についての曲なの。多分今の時代誰もが家にコンピューターを所有して時間を奪われているから、もっと分かってもらえるんじゃないかしら。

「私たちは、(テクノロジーが)もっと時間をくれるっていうちょっと馬鹿らしい考えを持っていたんだけど、実際そんなことないの。」

PF:あなたが使っている、“Deeper Understanding"みたいに暖かいエフェクトを加えるコンピュータープログラムは他に何か例がありますか?

KB:うーん、ない(笑)。あの曲で使っているようなプログラムがあるといいんだけど。コンピューターは素晴らしい道具だと思うわ。簡単にコミュニケーションができるしね。指で感じる何かとてもポジティブなことがあると思うの。例えば、緊急の時に使える物があるし、釣りに行きながらまだオフィスの人と話すことが出来たりね(笑)。でもコンピューターに時間を奪われ過ぎだと思うの。私も一緒、みんな忙しい。最初は携帯電話だった。突然人々がいつも誰かと連絡が取れる事を期待し始めたの。それまでは自分だけの許された時間があった。私たちは、(テクノロジーが)もっと時間をくれるっていうちょっと馬鹿らしい考えを持っていたんだけど、実際そんな事無いわ。

This Woman's Work (1987)



PF:あなたはデジタル録音よりアナログ録音を好んでいる、とおっしゃいましたが、"Deeper Understanding"ではモダンなサウンドエフェクトがコーラス部分に施されています。プロデューサーとして、ツールや機材の進化にはいつも動向をおさえていますか?

KB:努力しているわ。私のスタジオはバランスよく新古の機器が使われていて、これがいつも私の理想の形なの。でも今、新しい物はどんどん新しくなっていくし、古い物はそのまま古いでしょ。私はアナログとPro Tools両方を駆使して仕事がしたいの。アナログのテープの音が大好きなんだけど、アナログだと驚くほど手間と時間がかかる作業も、Pro Toolsを使って(簡単に)出来る事はたくさんある。
オリジナルの“Deeper Understanding"を録音した時、コンピュータープログラムで声を使って単一の存在を浮き上がらせたかったんだけど、そのときはかなり基本的なヴォコーダーしか持ってなくて、バックコーラスを使って何を言っているかわかるようにしなければいけなかった。このアルバムを全部アナログで録音する事も出来たんだけど、本当に難しい作業になったでしょうね。

PF:ユリシーズについてお話ししましたけれど、ジョイスがすごく濃密な作品を、私たちがいま軽く見ているテクノロジーを使わずに作り上げたことはすごいことですよね。超人的ですよ。

KB:多分私たちはこのような偉人がどれだけ巧妙で優れているか気づかないんでしょうね。多分そこに実現の要素があったのかもしれない。芸術の分野で活躍する、自分一人で全部やってしまう超人も何人かいるし。モーツァルトもPro Tools持ってなかったけど、かなりいい仕事したわ。(完)

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