2012年6月7日木曜日

Fiona Apple (Part I)


Fiona Apple Interview
By Carrie Battan
June 4, 2012
Photo by Dan Monick

今回はマンハッタンのSOHOグランドホテルで行われたピッチフォークのFiona Appleのインタビューの翻訳です。かなり長いので何回かに分けて公開します。

Pitchfork: 最新作では子供時代に対するさりげない言及が多く登場しますね。あなたは「8歳の私たちはホッケーをしている」とか「お目付役が必要だわ」と歌っています。そこを探ることは、あなたにとって優しいものだったのでしょうか。

Fiona Apple:子供時代に戻りたいっていう特別な気持ちがあったの。このアルバムをつくる前は、子供時代のことを考えると憂鬱な気持ちになったのだけれど。子供の頃はものづくりが大好きでね、誰も私を夕食に引っ張りだすことなんて出来なかったわ。いつもお話なんかを書いていたりしたから。

子供は欲しくないといつも言ってきた。でも今ホテルにいるけれど、私が持ってる本って子供のしつけの本なのよね。顔の表情とそれが赤ん坊に与える影響についての本を持っていて、それは(元カレの)David Blaineの奥さんAlizeeにあげたんだけど。私が持ってきた本は「Raising Happiness (幸せを向上)」っていう名前でね。子供は全く欲しくないけど、逆行分析みたいなのは好きよ。自分自身をコントロールし、しつけるの。

PF: こういう本を読むことで、ご自身の子供時代の新しい部分が明らかになりましたか?

FA: そうね。クレイジーに聞こえるかもしれないけど、何年か前に母が私にこう言ったの。「あんたが生まれた時、私たち死にかけたのよ。二人ともね。」出産予定日の二週間前に、父と母は電話で口論したの。彼はその時ボストンにいて、二人とも結婚生活に満足していなかった。彼女は言ったわ、「私は家具の置き場をアレンジし直していて、彼にはその場でソファを動かすのを手伝ってほしかったの。本当に頭にきて、自分でソファーを押したら、何か変なものを感じてね。次の二週間ほど痛みに苦しんだわ。」母の腹膜--全ての細胞を抱える膜のことだけど--それが破れていたの。ちょっとだけね。

帝王切開だった。出産を担当した医師が後から私にこう教えてくれた。「君のお母さんを開いたら、すぐそこに君がいたんだよ。びっくりしちゃったね、だって全てめちゃくちゃになっていたんだから。」

このことについてよく考えるの---これが「私は家に一人でいる時だけ幸せ」という事実に関係しているのかなって。多分生まれる二週間前から、不安な気持ちを感じてビックリしていただけかもしれない。昔は風船を持つ自分のことを考えて恐怖でゾッとしていたわ。そのまま飛んでいってしまうかもしれないって恐れていたの。バカバカしい話かも知れない、でもしつけの本を読んで私はこういうことを考えていたの

子供についてもうちょっと。何年か前に、子供が欲しいかどうか真剣に考えたことがあって。本当に欲しくないのかしら、それともただ自分の問題を後にして、彼らの問題を先に対処することが出来なかったらどうしようって心配なだけかしらって。だから、OCDや自閉症や精神障害をもった子供たちが多く通うUCLAの作業医療科にボランティアしたの。そうしたら私の心を傷つけるような言葉を言ってくるような子供たちにたくさん囲まれることが出来ると思ったのよ。それで私が何でもくじけたり、泣いたりするような人間じゃないと自分に証明したかった。自分のことだけじゃなくて他の人も助けることが出来るのよって。

私がよく覚えているのは、子供たちをキャンパスの周りに散歩に連れて行った時。彼らはエレベーターで待っている時に一番ビクビクするの。エレベーターにいた男の人が自分に対して言った独り言を覚えてる。「トランジション(階下の移動・移り変わり)が一番つらい。」私も自分に言い聞かせた。「トランジションがいつだって一番つらい。」

PF: Extra Ordinary Machineを七年前に発売した後は特に人から離れていたのですか?

FA: この34年間はずっと引きこもりがちって言えるわね。子供のときはそれが大切なことで、学校から離れて家にこもっていた。自分がずっと心因的に病気がちであるようにトレーニングしてきたから。今だって、私にとってとても居心地のいい(L.A.のクラブ)Largoで演奏するときは、お兄ちゃんに「ショーの前でお腹痛くなってきた」って言うのよ。インフルエンザみたいな感じになるの。外に出かけるときはいつだって、この問題をどうにかしなくちゃならなくてね。スーパーに買い物に行くときだってそうなのよ。一つの場所から別の心地悪い場所に移らなくちゃならないことがあったら、普通は行かないことにする。

PF: どこにも行かないのですか?

FA: まだ車の運転の仕方を知らないの。普通はLargo以外どこにも行かないな。ほんとに。お兄ちゃんが運転してくれるから。近所を歩き回ったりはするけど、どこにも行かない。行きたくもないし。イースト・コーストに戻りたいけど。ヴェニスは良い場所ね、でもL.A.は汚いわ。毎日窓からL.A.の景色を見ることになったら死にたくなるわね。



PF: なにがあなたを長い間そこに留まらせているのですか?

FA: 私のワンちゃん、ジャネットのせいなの。13歳になるわ。ひどく病んでいて、もうすぐ死んでしまう。アジソン病にかかってしまって、危険だから彼女を動かしたくなくてね。ロス・アンジェラスではどこにも裏庭と犬用のドアがあって、おしっこする場所を聞かなくてもいいし。 病的に聞こえるかもしれないけど、ジャネットがそばにいないときは、彼女がもう死んだものと思うようにしているの。ツアーにはつれていけないし、これはかなり寂しく思ってる。彼女が死んだふりをするっていうアイディアは気に入っていて、そうすれば実際に死んでしまったときに彼女はまだ別の部屋にいるって思い込むことができるから。(生と死の)ラインをボヤカすのね。彼女が死ぬのを待っているとも言えるかな。

周りに誰もいなくて、誰も話す相手がいないって言うのは変な気分よ。今私のホテルルームには金魚が二匹いる。スタッフが「もし付き添いが必要だったら、金魚を連れてきますよ。」と言ったの。だから私は「金魚持ってきて!」って。今二匹いるのは、水を換えなければならないときにスタッフが違う鉢を持ってきたから。私はもう「デスモンドを連れて行かないで!」って。

PF: デスモンドって名前をつけたの?

FA: なぜだかわからない。新しい子はまだ名前がない、でもデスモンドはどこにも行かなかった。それでいまは二匹いる。最高のやつらよ。私が顔を近づけると鉢の端にやってくる。まるでキスしにきたみたいに。

Part II
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